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眠れない夜、眠らない街

ギラついた夜の街の話をしよう。
女は若さに値段が付き、男は魅力に値段が付くそういう世界の話だ。そこには毎日大金が動いていて、色々な欲望が渦巻いている。
僕は面白いと感じるけど、やっぱりまともに生きられない人間が集まる場所なんだと思う。
【まとも】って言葉は難しい。
だって、結局人は最後に死ぬんだから、他人に危害を加えなければ、人の道は外れない気がするから。
だけど、その街に生きる人々からは、どこかどん詰まりの香りがする。
それが何歳なのかはわからないけど、その人の歩く先に、日の光が差している道は見えない。
だけど、その時しか味わえないものを彼らは知っている。
これを読んでいるあなたは、自分の身長よりも高いシャンパンタワーを見たことがあるだろうか。
若い男がそれを囲んでコールをしている場所にいたことがあるだろうか。
無いなら無くていい。
ひとまず僕の人生にシャンパンタワーはいらない。

悪趣味な感性だと思う。
無駄に役職の名前が多いのも、記号でしか自分を飾れないからだろう。
太陽が沈まないと輝けない月のように、光の中では生きられない影のような人々だ。
影は実体より大きくなれるものだ。
だからこそ、彼らは大きく見せようとする。
自分を大きく見せることが生き方なのだ。
僕はそんな大きく自分を語れない。
輝けなくとも日の光の中を歩きたい。

面白い場所だ。
始発の電車に向かう途中、裸足の女が道路で泣きながら電話してるんだ。
「ごめんなさい。私が悪かったの、嫌だよぉ。」
1月のアスファルトはきっと冷たいだろう。
その冷たさの中に慣れた人間は、きっともう戻れない。
その彼女も朝日が上る頃には、どこかへ消えている。
そうして眠らない街は回っている。

若い女が性を売るのが当たり前の街で、冴えない中年の男が大金を浪費する街で、生きる時間に値段が付く街で、僕は働いた。
とても面白い場所だった。
僕の命も燃えたように思う。
眠らぬ街は今日も続いているのだろう。

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