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桂小五郎には「エンヤ ENYA」の音楽がよく似合う

 桂小五郎について調べ始めたとき、アイルランドのミュージシャン「エンヤ ENYA」の音楽をよく聞きました。
 既存の書籍は「公」になった「業績や記録」を中心にまとめられています。人物を外側から観ている印象ですね。
 では、記録のない時期はどうだったのでしょうか。
 本当に危機的な状況では、本人は記録を残す余裕はありません。さらに、嫌なこと、格好の悪いこと、思い出したくないこと、都合の悪いこと、周りに影響すること、機密事項も、書かない場合が多いでしょう。幼い時期や反抗期の青少年期も、自分で記録するのは無理です。
 これらは、周囲の思い出話のような間接的なものになってしまいます。
 歴史的な人物の記録というものは、本来、偏ってしまうわけです。仕方のない一面があります。
 とはいえ、桂小五郎を内面から観て、さらには内面形成のプロセスをたどってみなければ、「本当の姿」は見えてこないのではないでしょうか。
 この発想のきっかけは、桂小五郎のいくつかの印象的なシーンでした。各書籍にも史実として載っています。
 このシーンをイメージするにあたり、エンヤの音楽を聞いていると、小五郎の心の震えが伝わってくるように思えてきました。まるで本人が、すぐそこにいるような気がしてきたのです。本人の「ありのままの姿」を捉えたくなりました。
 小説の技法が、有効ではないかと思いました。
 前後のわずかな情報を点として、点の間を創作ドラマをの線で結び、さらにアイデンティティのテーマに向かって「立体化」していく。
 すると、歴史上の人物桂小五郎が、人として立ち上がって来るわけです。
 では、きっかけになったシーンを、いくつかご紹介します。

① 闇夜の中を逃亡する

 桂小五郎は、池田谷事件の難を偶然回避した後、禁門の変(蛤御門の変)の時から、組織を離れて単独の逃亡生活に入ります。
 孤独のままに、新選組、京都見回り組、奉行所の捕り方などに追われ続けます。小五郎は、諜報活動をしつつ追及の手を逃れ、幾松にかくまわれたりしながら危機を乗り越えていきます。 
 アスリートの身体と、アドレナリンが出た高揚感と、感性の研ぎ澄まされた肉体が、京都の闇の中を走り抜けます。
 エンヤのCD、特に「ウォーターマーク」を聞きながら、月光の下、一人闇夜を疾走する小五郎の姿が目に見えるようです。
 路地裏を刀を押さえて袴を蹴立てて走り抜け、時には、軒先の闇に潜んで追手をやりすごしたことでしょう。

② 河原で朝日を見つめる

 桂小五郎は、逃亡中、様々な姿に変装します。女装すらしたというのですから、役者っけのある人なんでしょう。(事実、江戸でそれらしい逸話もありますが、それはいずれ)
 鴨川の三条大橋の河原では、乞食姿になり、河原乞食の中に身を隠しました。乞食に変身とは、封建時代に身を置きながら、よほどフラットな人間観をもっていなければ、できないのではないでしょうか。とっさの判断もありますが、心の中では人として弱点だらけの自分を見つめたことでしょう。
 そんな桂小五郎が、三条大橋の河原で夜を明かします。
 京都の山間に、朝日が昇り始めました。
 その曙光をどんな思いで見つめたことでしょう。
 輝く光の中で、胸の内に様々な感情が湧いてきたのではないか。
 動乱と無関係な大自然の日常を、どんな思いでとらえたのでしょう。
 ふと見上げると、橋の上から、そっと幾松がお握りを投げたりして、でも、それだけでは心は折れそうだったと思います。
 心の支えに、亡くなった両親など幼少期から支えてくれた人々の姿を思い描いたことでしょう。彼らのためにも、ここで死ぬわけにはいかないと。
 朝日の中で、桂小五郎が、笑ったのか泣いたのか。
 壮大な音楽が聞こえてきそうです。

③ 長州に復帰する

 桂小五郎は京都から脱出して、8カ月間、出石に潜伏します。
 クーデターで長州の主導権は、俗論党から高杉晋作たちに移ります。
 でも小五郎は潜伏したままです。
 伊藤博文(俊輔)、高杉晋作たちは、必死になって桂小五郎の行方を捜します。彼らは、長州藩の未来を託せるのは桂小五郎しかいないと考えていたのでしょう。
 ついに連絡がつき、桂小五郎は幾松とともに長州へ復帰します。
 下関で桂小五郎が、伊藤博文をはじめ、仲間たちとどんな思いで会ったのでしょうか。
 伊藤博文が大声を上げて、小五郎に、通りの向こうから走ってくるようではありませんか。(実際はどうだったか。まだ詳しく調べていないのですが)
 絶望から希望へ。
 8カ月のどん底からの復活。
 その瞬間に、ふさわしい音楽は・・・・。

 桂小五郎の印象的なシーンをあげるときりがないですね。
 アイデンティティー小説「小五郎伝ー萩の青雲ー」になった次第です。
 創作するにあたって、よく合うBGMを見つけると、いいかもしれませんね。
 「小五郎伝」の下関への道は、遠いのですが。


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