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著…三浦しをん『あやつられ文楽鑑賞』

 「文楽が見たくて辛抱たまらん! さあ、劇場へ行こう!」という著者の叫びが聞こえてきそうな一冊。

 伝統芸能って、正直言って取っつきにくいですよね?

 しかし、著者ならではのユーモア溢れる語り口のおかげで、わたしは専門用語が出てきても挫折せずにこの本を読み終えられました。

 文楽が他の芸能と大きく違うのは、作品を演じるのが人間そのものではなく人形たちだというところ。

 もちろん、人形たちがそれぞれ個別の意思を持って自ら動いているわけはありません。

 人形たちを通して語り、動いて、物語を演じる人たちが存在します。

 著者がそのプロフェッショナルたちを取材したページからは、芸を磨くひたむきさが伝わってきます。

 きっと、人形を通してでなければ表すことの出来ない心があるのでしょう。

 各作品の解説も、著者らしい着眼点があって楽しく読めました。

 あらすじや登場人物の特徴を丁寧に解説しつつも、読書が退屈しないように面白いことを折々に書いてくれています。

 例えば、『仮名手本忠臣蔵』の解説には、

 「文楽の登場人物は、わりとよく睡眠を取る。私が親近感を覚えるゆえんのひとつだ」

(著…三浦しをん『あやつられ文楽鑑賞』 単行本版P78から引用)

 という一文があります。

 これを読んで、わたしも文楽の登場人物に対して急速に親近感を覚えました!

 分かるなあ。

 わたしだって一秒でも長く寝ていたいですもの。

 文楽の登場人物は、何かを成そうという時に武芸の鍛錬をするわけではなく、また、腹が減っては戦は出来ぬとばかりに食事をするのでもなく、まずは寝るのですね!

 よし、わたしも寝ようではありませんか。

 文楽の登場人物のように。

 ぐぅ。

 …いかんいかん、野比のび太氏並みの入眠スピードで眠ってしまった…!

 さて、この本においては、歌舞伎や落語などについても書かれているので、わたしはこの本を読んでいて文楽以外の伝統芸能にも興味がわいてきました。

 せっかく日本に生まれたのですもの、日本ならではのこうした芸能を楽しんでいきたいです。


 〈こういう方におすすめ〉
 文楽に興味があるけれど、「なんだか敷居が高そう」と感じている方。

 〈読書所要時間の目安〉
 1時間半〜2時間くらい。

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