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現実逃避のうた

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2019年11月の記事一覧

ロマンスの現実逃避3

はっきりと目に見えるものだけが幸せじゃないんだと、ぼくはつくづく思うよ。

君がたとえば料理の味見をしているとき、その後ろ姿を眺めていると、ぼくはこの光景をいま、独り占めしているんだって思う。
ぼくにだけ作る君の料理を味わいながら
これが、ぼくの血や肉になるんだって思うと嬉しくなるんだ。ぼくは君の愛によってできているんだってね。

君とスキーに出かけたとき、すぐに転ぶ君をぼくはうまくフォローで

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固定観念の現実逃避

最近、僕のまわりでおかしなことが起こるんだ。
たとえばぼくの持っているタンスの中の服が、ぜんぶ黒い服にみえるときがある。

レストランのメニューを選んでいると、突然メニューが全部カレーライスになっていたりすることがある。

銭湯にいったとき、風呂に入ってる人がみんなぼくの親父に見えたり。。

とにかく、おかしいんだ。「同じもの」に見えてしまう。眼科にいっても異常がないから
不安で。。最近は不

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風鈴の現実逃避

君は知っているかい?
風鈴のむなしさを。。

この男のアパートに連れてこられたのは、
かれこれ8年前だ。
ぼくは夏の風物詩としての役目を果たすために生まれてきたのだが、この男のアパートのベランダに配属されて8年も経ってしまった。

なにがむなしいかって?
春夏秋冬、つまり一年中ぼくは
この男のアパートのベランダに吊るされたまま鳴り続けているのだ。
秋の最初はまだいい。夏の名残惜しさから聞こえて

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ロマンスの現実逃避2

ロマンスの現実逃避2

君のこと、あんまりよく理解はできないかもしれないけど、君をたくさん愛することはできるよ。そうして君が笑顔になったら、また一つ、ぼくは君を知れたような気がするんだ。

君が出かけていった後、しばらくしてから救急車のサイレンが鳴り響いたとき、ぼくの心は一気に乱されたんだ。君が事故に巻き込まれたのではないかと。
でも、数時間してから君が笑顔で帰ってきたとき、ぼくはこれまでに無いほど安堵して、
君の存在の

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