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繋がっている

母からお皿が届いた。北欧食器のいいやつ。とっても欲しくて、ずっとネットの中をウインドーショッピングしていたので、手元にあるのが不思議で嬉しい。お茶碗も一年で割ってしまった私だ。丁寧に丁寧にしないと。爪先にまで意識が向く。それでも嬉しさは心を突き上げてくる。割らないようにぎゅっと抱きしめた。

「誕生日と母の日近いやん。プレゼントしようと思って」
そう言うと、母は私が思い立った日と同じ日にお皿をプレゼントしようと考えてくれていたらしい。私たちは親娘というか双子のようにシンクロする。「臍の緒で繋がってますから」母の口から何度も聞いた言葉。臍の緒のつながりは大きいみたいで、父とは価値観が全然違うのに母とはぴったりハマる。

「買ってくれるん!!」喜んだ母は、私にも食器をプレゼントしてくれるという。私が欲しい食器も母の欲しい食器も同じフィンランドの食器ブランドのもの。聞けば、亡くなった祖母もお気に入りのブランドだったそう。3世代好きなデザインが一緒とは、三人は前世でフィンランド住みだったのだろうか。

母の誕生日はまだ先なので、忘れないように欲しいと言った柄をメモして電話を切る。留学や旅行のためと、バイトのお金を貯めていたが、実は贈り物をするためでもある。金額を気にする母は少し小さいプレートでいいと言ったが、どうしようか。このブログを母が読んでいないと信じて少し考えよう。

大学から帰宅後、それは宅配ボックスに届いていた。強く滑らかな藍色で、陶器の重みも心地よかった。これはご馳走で満たさなければ!と少し背伸びをして、品数を増やす。ひとり食べるだけであるのに盛り付けは楽しく、半熟の味玉は笑っているように見えた。デスクライトを最大にし、首にミラーレスカメラをかける。ピントと距離感をじっくりと調節して、息を止めたままシャッターを切った。母に感謝の意を込めて。彼方の祖母にも。


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