イヌコワジャーナル

2023年4月に上演した戯曲イヌコワからはじまるモトカワマリコのジャーナルです

イヌコワジャーナル

2023年4月に上演した戯曲イヌコワからはじまるモトカワマリコのジャーナルです

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イヌコワについて

犬が怖くて脚立から降りられない人の物語を、7頭の犬をめぐるエピソードと4つの対話で描いた戯曲「イヌコワ」の紹介です。 個人に顕著な弱点があること、それは社会から克服する努力(無茶なチャレンジ)を求められる。仲間に入りたかったら、壁を越えなさい。犬恐怖症は不自由だからと、なんとか克服(マスキング)したら、恐怖という原初的な感覚を克服したら、何か大きなものを失うのではないか。 「成長」とは「自主的洗脳」じゃないのか、脳を社会に都合よく調整すること、構成員として整然としたピースに

    • 恒例、春の被害妄想

      4月になると布団をクリーニングに出す、ダニ防止加工はちょっと値段がはるけれど必要があってそうしている、同じ業者に頼む。今朝、集配日を確かめようと思って、業者のマイページをチェックした。うそ! そこには7件のまるで覚えのないオーダーが連なっている。えええ!合計すると相当な額になる。注文した覚えはもちろんない。 これがよくある「乗っ取り」というやつ!ECを呑気に注文している客が誰かにカモられること、21世紀はその人がどんなポジションでも、経済活動としてはゼロでも、リストに載っ

      • ああ、電車に通過される

        各駅停車しか止まらない駅、入構してきた快速は速度を緩めもせずビュンビュン通過していく、ホームに立っている人たちは総じて体をちょっと引き、通り過ぎる電車をやり過ごす。 わかっているんだけど、もちろん。 ここは乗り換え駅でもないのだから、快速は止まらない。 でも、電車に乗ろうとしている当事者として、乗れもしない電車が通っていくこと、乗れない電車が豪速で通り過ぎること、当然のように警笛を鳴らされ、体をひいてやりすごすことに、わずかに傷ついてしまう。 わかっているけれど、もちろん。

        • タイトルほどはポルノでもない古い映画

          「ポルノグラフィックな関係」 50代はどのくらい若く、どのくらい老いているものなのか、どう振る舞うべきなのか、良いモデルが見つからない。40代は切れなく多忙で、私生活でも仕事でも飛んでくる球をガンガン打ちかえすだけで精一杯、何がなんだかわからないままだった。 たまに渋谷のとあるアパレル店で天井まで5面鏡のあるフィッティングルームに入って試着をすることにしている。チェックをすると、いつもは見えないような背中の下の鞍肉のような肉の塊が見える、愕然とする。 そんな肉、年齢とともに

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          祟りかご利益か、諏訪の祓旅

          今年も暖冬で御神渡りは見られない。 辰年なのに、諏訪の水神様は湖を渡らないようなのだ。そうだけどどうしても行きたい。なんとしても諏訪大社四社をコンプリートしたかった。そこで「あずさ」で茅野にいき、守屋山方面に。駅から歩いて30分ほどで前宮に到着する。その道すがらなにかがおかしかった。小学生のころ、給食を食べてすぐ校庭を走り回ると横っ腹が痛くなったが、それ的に久々片腹に疼痛、駅の「八ヶ岳オクテット」 で巨大野菜のサンド(シャキシャキでうまかった)を食べてすぐ歩き出したからかも

          祟りかご利益か、諏訪の祓旅

          「みずうみ」にはまり、麹町と飯田橋を連続往復

          地下鉄有楽町線の市ヶ谷駅に急いでいた。出がけに家の廊下の書棚から川端康成の「みずうみ」をとって鞄に入れて、通勤の時間潰しにしようと思った。川端作品は文豪デカダン大好き10代のころの幼い蔵書だったけれど、何がどう「みずうみ」なのか、思い出せない。 主人公銀平は1行目で軽井沢駅に到着し、2行目でズボンをはき替え、ワイシャツからセーター、レインコートから靴まで新調して、古いものは季節外れの他人の別荘に捨てていく。追われているらしいのだが、1ページ目でとにかく全身着替える主人公、予

          「みずうみ」にはまり、麹町と飯田橋を連続往復

          『赦しへの四つの道』(アーシュラ・K・ル・グィン=著)

          友を得るには300年必要 新刊『赦しへの四つの道』(アーシュラ・K・ル・グィン=著)にA Man of the People(同胞)という短編がある。主人公はマチンイェヘダルヘッドデュラガマラスケッツ・ハヴジヴァという少年。僻地の星から選ばれて高等教育を受け、長じて宇宙を仕切る組織エクーメンの使節になり亜光速で星間移動をして仕事をしている。移動に80光年かかってしまうので、旅行中に親兄弟も自分の子どもさえ死に絶えてしまうという。 この「ビジネストリップ」と「血縁の死」はあ

          『赦しへの四つの道』(アーシュラ・K・ル・グィン=著)

          彼方のうた@ポレポレ東中野

          女の子がおじさんを尾行する話、というだけで観に行こうと思ってしまった映画「彼方のうた」。「春原さんのうた」で定評がある杉田協士監督の作品だので。それから端田新菜さんが出演しているので。 こういうのってどうなんだろう。ヒロインが偶然映ってしまった感のある粗めの画角で登場するって。ドキュメンタリーの風味は観客の立ち位置を微調整する。尾行する彼女を尾行する、目撃しちゃった感を出すため。ああ、私たちは普通の映画の観客より罪深い秘密の存在なのだと知らされる。座位を強制する椅子に座らさ

          彼方のうた@ポレポレ東中野

          梅田哲也展 待ってここ好きなとこなんだ@ワタリウム美術館

          先月の27日に予約して観に行った梅田哲也展。別府の芸術祭には行けなかったので気になっていたのだ。美術展にしては高額の2800円、完全予約制のツアー???ツアーそのものが観客参加型の作品だった。受付をすませて、時間になったらエレベーターで上階に送り込まれて…旅が始まる趣向。 しばらく放置される。エレベーター前のスペースにはトイレと階下をのぞく吹き抜けがあるだけで、作品的なものは見当たらない。隠された仕掛けがないか、ツアー参加者が各々ヒントをさがすが大したものは見つからない。双

          梅田哲也展 待ってここ好きなとこなんだ@ワタリウム美術館

          波止場で@SCOOL

          アーバンベアとはどんな熊なのか、目撃情報や暗視カメラなどで情報を集めて分析する、雑食、町場育ちで車の走行音や人の声を恐れない。オレンジのベスト、銃をもった人、檻や罠、犬に警戒する、電気柵は穴を掘って回避、民家や倉庫、果樹園には食物があると認識………。 人間はどういう生き物なのか、言葉を話す、雑食、リーダーがいる群れで組織的に狩りをする、雌雄で社会的役割が分かれている傾向、強い群れには規律がある。他の群れの個体と接触したら警戒する、協力することもあるが、敵意の確認行動(挨拶、

          Kabi 調理する、料理を語る、食べる、シアターレストラン

          完全予約制、予約時間が決まっているので、食事の開始時間は全員同時になっている。遅刻厳禁、遅れたらせかされたり、メニューを全部食べられなくなる可能性もあるらしい。発酵をテーマにしたクロスオーバージャンルで評判のレストランなのだが、注文が多い。黴だなんて面白いねえという好奇心、面倒臭くて敷居が高いなあというわずかな嫌悪感、アンビバレントに交差する。とはいえ、自分の誕生日に自分で予約するというチリーな現実には相応しい緊張感あふれるお店だ。今時はこんな感じなのか?レストラン。 アペ

          Kabi 調理する、料理を語る、食べる、シアターレストラン

          「孤独な存在」@さいたま国際芸術祭

          「孤独な存在」中国のドキュメンタリー、どっぷり内省的な作品で、広いホールに客も3割くらい、数回しか上映しないのに。これって「ドキュメンタリーってお話がなくて面白くない」のド典型なんだね。 映像がメランコリックで美しくてなんか見れてしまう。中国のどこかわからない丘を結ぶ、迷路みたいな坂道をいろんなおじいさんが歩いている。それぞれの石畳、石の塀、それぞれの隙間を寒そうな川風が吹き抜ける。 途中で出てくるテレビ映画が気になった。画質がよくなくてよくわからず、ベンハーかイワン雷帝

          「孤独な存在」@さいたま国際芸術祭

          砂の国の遠い声@シアターウェスト

          こういう感じの演目を「ゴド待ち」と分類するらしい。客席ではあちこちで「やあ、来てたのか」とか小声の挨拶が飛び交っている、金曜のソワレ、HGっぽい空気。作家宮沢章夫氏を悼む追悼公演だったようだ。 申し訳ないくらい前情報がなく………ベテラン俳優が居並ぶメジャーっぽい箱に矢野昌幸氏が出演するので、愉快がって観に行っただけ。砂漠の監視員という仕事をする人たちのお話。千年一日の如く砂ばかりの土地を監視するという設定ですさまじく演劇的な人間たちが登場する。 コントのようにシーンがタイ

          砂の国の遠い声@シアターウェスト

          マンタレイ@さいたま国際芸術祭2023

          タイ映画「マンタレイ」は掘り出しものだった。難民問題がテーマだと知っていたから気が重かった。いきなり冒頭で森が光る、電飾の鬼登場!呆気に取られた。明らかに電飾だが、不思議で怖くて、見たいぞスイッチが入った。映像の力ってすごいね。 見どころは、主人公の漁師が底抜けにいいやつで、優しくて、淋しくて、か弱くて、汚いものに踏みにじられ、美しいものに焦がれて、悲しい運命を背負ってしまうこと。そして2時間、一言も喋らないロヒンギャの男、全てを受け入れる聖めいた受難の神々しさ、あと電飾。

          マンタレイ@さいたま国際芸術祭2023

          通勤快速教、降車のたびに社会性を問われる気がする

          踏切に人が立ち入って、さらに要救護の病人が出たので、電車が30分遅れた。通勤快速はなお混雑していた。ターミナル駅で下車するのだが、そのときいつも考える、自分は他者集団を信じているんだろうか、今ここに居合わせた人たちを信じないなら、社会とか組織とかも信じられないってことになるのかな。つまり、私は下車駅でナチュラルに降りられるのかどうかということだ。 乗客の乗車目的は多様だが、アクションは同一、乗って降りる、それに奇抜なパターンはない。みんな、私も、いつか降りようと構えている。

          通勤快速教、降車のたびに社会性を問われる気がする

          円盤に乗る派「幸福な島の夜」

          ハロウィンの賑わいを避けて、代々木公園から山手通りを歩いてアゴラ劇場に向かう。松濤の山頂に続く坂道を高そうなカジュアルに身を包んだ父と、ジャックオーランタンを持った雪の女王が集合場所に向かって急いでいた。 尾久の「円盤に乗る場」は、なんじゃ?と気になって周辺をうろうろしていたけれど、「円盤に乗る派」の公演を見るのは初めて。ついに宇宙基地に到着という感じ。ファンとか擁護者っぽい人が多そう、これはファンミーティングなのだろうか、みんな知り合い?HGの人しかいない圧。 50人規

          円盤に乗る派「幸福な島の夜」