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カブトムシのワープ(1)
完膚なき夏の終わりをカブトムシの全滅が報せてから数日後。
会社員の渡辺はせっせと卵さがしに勤しんでいる。
ケースの底の残土の中に、夏の間にメスが産みつけた卵。
それら一つひとつを手でかき分け、そっとつまんでから土に還す。
神事めいたそんな作業を、渡辺は密かに「卵の土入り」と名付けて毎年楽しみにしていた。
40歳手前で一度もセックスをしたことが無く、というか最近はマスターベーションの気力さえも失
俺のパンデミックがパンパンの理由(リプリーズ)
ヘイ!ミック
久しぶりだな
今日は手すりに触れたかい?
俺か?
俺は相変わらずパン屋で修行中の身さ
そんなことより聞いてくれ
俺はあの娘に触れたいんだ
この恋に効くアルコールが欲しい
でも本当は売り切れてて欲しい
ウェルシアの店員も俺に言う
「お客様が唯一の感染者です」と
だとしたらこの道の向こうには何がある?
もしかしてあの娘、無症状キャリア?
俺だけが全身の倦怠感に悩
インフルエンザに犯されて
インフルエンザの大流行を、無根拠に他人事のショーとして見ていた身としては、じっさい自分が罹患して苦しんでいる姿を素直に認める。ということは受け入れ難い。
流行り物にはシニカルに構える。これが僕の矮小な自意識であり、自分自身を守る心の砦だった。
Windows全盛期にはMacintoshを愛したし(当然いまはAndroidを勉強している)、ミスチルやモンゴル800を小バカにすることで心の安定をチ
冬の光に照らされた家族は
冬の朝日に照らされた家族というのはなぜあんなにも幸せそうに見えるのだろう。
柔らかくて眩しい逆光に照らされると家族は、累々と横たわる問題もまるで無かったことのようにそこに存在できる。
朝の食卓、駅のホーム、高速道路のインターチェンジに入る父の横顔。
光の当たり具合で見え方が変わるなんて、まったくもってインチキなのだけれど。
家族の幸福とは案外そんなインチキなものなのかもしれない。
『空中都市』(DEMO)
海の風景を眺めて
君へ短い手紙を書く
空中都市は今ごろ
どこにいるんだろう
赤黄色あれは
曳航のグッデイ
沈みゆく空に太陽が
溶けていった
海は何遍も打ちつけ
君は遠く旅に出る
空中都市は今ごろ
どこへ向かうだろう
全部雲が晴れりゃ
今度暑くなって
紺碧の空に太陽は
溶け出している
革命前夜の雨は
永く降り続いて
海の風景を眺めて
君に短い手紙を書く
空中都市
「パラシュートパパ、魚のおうちへ行く」(4)
(3)からの続き
ぱっちんじゃっぽぉぉぉぉん。
海の上に落ちたパラシュートパパは、波のゆりかごにくすぐられながらそのまま海の中に入りました。
まったく不思議なことに、パラシュートパパは海の中でもパラシュートを開いて降りていくことができました。
ふわふわと空を降りるように、きらきら光る海の中をゆっくり落ちていくのはとても気持ちがいいものでした。
海の中にはじつにたくさんのいきものが暮らしてい
パラシュートパパ第1話「パラシュートパパ、魚のおうちへ行く」(3)
パラシュートパパ第1話
「パラシュートパパ、魚のおうちへ行く」(3)
(2)からの続き
パラシュートパパはパラシュートが上手です。
歌が上手な人、運動が上手な人、ワガママを言うのが上手な人、パンを選ぶのが上手な人。
いろんな上手がありますが、パラシュートが上手な人はあまり多くないかもしれません。
なんてったって生まれたときから背中にパラシュートを背負っているのですから。
だからパラシュートパパ
パラシュートパパ第1話「パラシュートパパ、魚のおうちへ行く」(2)
パラシュートパパ第1話
「パラシュートパパ、魚のおうちへ行く」(2)
(1)からの続き
太陽が昇りました。
パラシュートパパはさっそくお友達のラッカさんに電話です。
『ねえねえラッカさん、海にお魚のおうちをみにいってみたいと思わない?』
『いくいくいいねえ、それすごくいい』
ラッカさんはいつだってパラシュートパパの味方なのです。
ラッカさん自慢の飛行機はみどりいろ。
それはまるでトンデミーヨ
パラシュートパパ第1話「パラシュートパパ、魚のおうちへ行く」(1)
パラシュートパパ第1話
「パラシュートパパ、魚のおうちへ行く」(1)
住所は空のした土のうえ、トンデミーヨ村に住むパラシュートパパ。
せなかに背負ったパラシュートで、今日もどこかに大冒険。
ある日、パラシュートパパは晩御飯にお魚を食べながら思いました。
このお魚はどこからやってきたんだろう?
パラシュートパパはパラシュートパパパパに訊きました。
『ねえパパパパ、このお魚たちはどこからやってくる