マガジンのカバー画像

けがれた者達の歌 春雷

322
春の季節に書いた 春の詩と物語の在り処
運営しているクリエイター

記事一覧

深海

深海

深い海の底で

鉄錆びの臭いが

錨からする

其処が

僕の居場所の目印

ある時

見知らぬ者が

錨に触れ粉々に崩れ

深海に消えた

僕の大事な

錨が

見知らぬ者に壊され

頭に来たんだ

だから

見知らぬ者に噛み付いた

見知らぬ者は

噛み付いた所から

深海に溶けていくんだ

あの錨の様に…

赤いケモノ

赤いケモノ

陽が落ち

景色が暗く濃く染まる

ゴロゴロと唸る

空の音に紛れさせる様に

喉から出る唸りを響かせる

獲物まで

此の唸りが聞こえるか?

唸りが其の身を震わせる筈

強い雨風の中

走り回る足音も聞こえるか?

雨に此の姿が映る筈

空が唸る度に思い出せ

私の唸りが耳から離れぬ筈

アイテム

アイテム

沢山の中から

選ばれるのは

奇跡なのかも…知れないね

藤丸₁₃ ( fujimaru00000 )のオリジナルアイテム
⬇️

根

誰の目にも晒されぬ

地中の奥深くに

自身の長い根を伸ばし

そして

眼の届かぬ遠い処まで

森中に根を這わせる

居場所を

木陰や深林

森や樹海に

求める者達の為に…

意の儘に

意の儘に

僕が欲しいと

君から奪い取った

瞳だから

僕の意の儘に

呼んで

撫でて

噛み付いて

愛でるのは

当たり前だけれど

君自身は

如何なんだろうね?

手紙

手紙

騒つく者達が

僕の様子を伺う様に

此方を見る

僕は騒つく者達に

暇なら手紙を届けてよ と

騒つく者達に渡したら

手紙を噛んで

歯型が付いたり

小さな手形を付けたりしてた

どんな形でも

君に届くなら良いか と

僕は笑った

無題

無題

沢山の言葉が渦巻いていて
手の中をスリ抜けて逝く

なんてね…

渦巻く言葉を書けば
僕の本質的な所が出て…

良く無いね

カラクリ人形

カラクリ人形

オルゴールの音が鳴る

カラクリ人形の

僕等に

躍らせる為に

オルゴールが鳴るんだ

毎回、毎回

同じリズム

同じステップ

同じ振り

回数を重ねると

拍手してた手が重ならない

木靴が擦れたり割れたり

僕等が躍るには不格好なんだ

それでも

オルゴールの音は

毎日 鳴るんだ

蟲と童子と自由研究

蟲と童子と自由研究

蛞蝓は
いつか蝸牛になるのかな?

蛍を握り潰したら
僕の手も光るのかな?

蟷螂とか蝉とかって
頭を千切っても
身体が動く時あるよね?

蜘蛛の膨らんだ腹が潰れた時
ドロドロしたモノが
散らばるよね?

どの蟲も
羽が無くても
蟲って蠢くのかな?

炎魚と黒い太陽

炎魚と黒い太陽

赤い太陽の
熱さが僕を狂わせる

僕は魚だけれど
欲しいのは
水じゃないんだ

炎だよ

渦巻く炎と
ジリっと焼ける熱に
巻かれて居たいんだ

此の身が焼け
黒く爛れても
太陽の中で泳ぎ続けるんだ

更なる熱さを求め

太陽の炎を
全て此の身に纏い

其処に遺るのは

黒い太陽だ

月と獣

月と獣

月明かりが

黒い木々の狭間に道を作る

夜空に在る月が

腹を空かした獣な僕を誘い

何処までも 走らせるんだ

なんて事ない夜

なんて事ない夜

夜道を歩いていると

星が瞬く

夜道を歩いていると

猫が鳴く

夜道を歩いていると

暗闇が視える

夜道を歩いていると

風が吹く

なんて事ない夜に

夜道を歩いていると

月が見えているんだ

ドロドロ

ドロドロ

瓶や籠に閉じ込めず

自由に知りたい物

見たい物を見せたいと思いながら

時々ふと思うのだ

僕のドロドロとした感情の渦に漬け込み
君を溺れさせたくなる
僕の邪な想いと

チョコレートの甘さに漬け込み
もっと
もっと
君が甘くなる様にと

僕の想いが
鬩ぎ合っている時があるんだ