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台湾GL映画二作「U・ラブズ・ユー」(看不見攻擊的程式)&「Encore Martha」(安可瑪莎)

台湾のLGBTコンテンツ専門動画サービスのGagaOOLalaの、“2021年度Queer Up The Volume (同志音乐爱情故事)”シリーズ、これは台湾の文化省より公式にサポートを受けて制作される10人の監督による10本の作品のシリーズで、途中本当に全部出るのかなぁと怪しんでいたが、無事全作品が出揃った!
全6話の作品が3本、全4話の作品が1本、40分前後の短編映画が2本、そして20〜25分の短編映画が4本となる。私は基本的には30分以下の作品はあまり視聴しないのであるが、せっかくシリーズ全作品を視聴してきたので観ることにした。そして記事は、最後のこの短編映画4本がちょうどBLとGL2本ずつなので、まとめて2本ずつ書くことにした。BL短編映画の記事はこちら↓
(画像は全てGagaOOLala公式サイトより)

「U・ラブズ・ユー」 (看不見攻擊的程式)

主演:ワン・ユーピン、ワン・ユーシュアン
22分
いしゃーしゃ的オススメ度:★★☆☆☆

ロボットとのラブストーリー

ワン・ユーピン演じるUは配達ロボット。でもちょっと不良部分があるため、時折カイロプラクティックに行くが、そこでワン・ユーシュアン演じるリンミン(林銘)を見かけるようになり、彼女に惹かれる。
リンミンは群衆恐怖症で、外をあまり出歩くことができないため、食事を宅配でばかり注文していたが、Uが彼女の全ての注文を引き受け、彼女と顔を合わせるようになる。
そしてお互いに惹かれあっていくが。。。ロボットは「愛情を持ってはいけない」という法則がある。果たして、二人の関係はどうなるのか?

ロボットはパートナーとなりうるのか?

かなり抽象的な映像とストーリーなので、好き嫌いが分かれると思うが、監督の意図としては、「ロボットは将来的に人間の愛情の対象、パートナーとなりうるのか?」という問題提起をしたかったようである。ロボットといえば、ちょっと前までは工場などで人間の代わりに作業を自動的にやってくれるものという認識だったと思うが、SiriやAlexaといったAI技術が発達していく中、もっと進化して愛情を持つことができるのではないだろうか。そして、人間もロボットに惹かれるようになってしまうのではないだろうか。そんな錯覚を起こさせるようなストーリーである。

中国語の原題を自動翻訳(←あ、これもロボットか!)にかけたら、「目に見えない攻撃プログラム」と出てきた。もしも本当に技術が発達して、こんなプログラムをロボットが持つとしたら。。。知らぬ間に人間にさまざまな感情を抱くようになり、愛情ならいいが、「こき使いやがって!」みたいな憎しみを抱かれたら困ってしまう。それならまだ人間の方がいいかもしれない。
作品としてはあまり好きにはなれなかったが、テーマとしては面白かったと思う。

こちらがMandarkが歌う主題歌「泡泡」♪このシリーズの曲の中で、一番好きかも!


「Encore Martha」(安可瑪莎)

主演:タミー・ライ(賴佩霞)、ファン・ウェンリン(方文琳)
24分
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★

別れても好きな人

タミー・ライ演じるマーシャはかっこいいスーツを着てクラブで歌うジャズジンガー。ある晩、偶然初恋相手でかつ昔の恋人であったファン・ウェンリン演じるマンディーと約30年ぶりに再会。彼女が結婚し、子供と孫もいることを知るが、何よりも内心喜んでしまったのは、彼女の夫が他界していたということであった。
ずっとマンディーのことを忘れられなかったマーシャは、果たして、彼女とまた一緒になれるのだろうか?

勇気のいる家族へのカミングアウト

マンディーはある日、娘夫婦と子供、息子とその彼女との家族ランチ会に、マーシャも誘う。そして家族の反応を窺うのであるが。。。どうも時期尚早であったようだ。
マーシャは家族ランチ会に呼ばれたことで期待を抱いていたが、理解を得るのは難しそうだと感じ、息子を呼び出して話をすることにしたのであった。

「カミングアウト」(注:本作では特にこの言葉は使われていない)というと、映像作品ではよく若い人たちがするかどうか迷うのが描かれるが、本作でのマンディーはもう孫もいる年齢。しかも、一応男性と結婚し、子供も産んでいたわけである。ここでもやはり「最初の花の香り(第一次遇見花香的那刻)」と同様、”伝統的な家族の形”という縛りを感じているのが描かれていて興味深かった。やはり、女性の方が出産することができる分、余計に家族の形を気にしてしまうのであろうか。同性愛を扱った、他の作品とはまた一味違った熟年ならではの立場というのが描かれていて、短いけれど、いい作品であった。

もちろん主演二人もとてもよかった。タミー・ライは歌手、俳優、司会者などとして活躍しているようだし、ファン・ウェンリンもベテラン女優。なので、やはり見応えがあったと言えるだろう。

こちらが予告編。


ちなみにこの“Queer Up The Volume (同志音乐爱情故事)”だが、第二弾を作るようで、公式ホームページで作品プロジェクトを募集している。この第一弾ではタイの作品が入ってたからなんでだろうと思っていたが、こうして世界中から募集しているのであれば、日本からももちろん参加できるということなのだろう。



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