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16.アラフォーでイタリア留学

イタリア大使館から発給された留学ビザは、9月13日までの留学期間に2週間ほど足されただけの約7ヵ月間になりました。
そして、この留学期間中に私はちょうど40歳の誕生日を迎えることになります。

アラフォーでの海外留学、日本ではめずらしいかもしれませんがヨーロッパ基準ではとくに取り立てられるほどのことでもなく。
若いときとはまた異なる、アラフォーならではの感じ方、過ごし方もできるし、いろんな意味でお勧めです。


同級生は18歳

学校は毎週月曜から新しいクラスが始まります。
私も月曜に学校へ行き、1時限目に筆記と口頭のレベルチェックを受け、2時限目から決まったクラスに入りました。

3月半ばの学校は人が少なくて、私の入ったクラスには私以外にスウェーデン人の18歳の女の子がいるだけ。
この子がまるでディズニープリンセスかと思うような、金髪碧眼長身スタイル抜群のものすごい美女で驚く、というかビビる。

他のクラスでも18歳、19歳のヨーロッパ人が多く、彼らは高校を出たあと大学へ行く前に1年ほど他国へ留学するという選択肢が一般的なようでした。
まだ何も知らないけど、とにかく生意気盛りです。
最初、むちゃくちゃけん制されましたけど2週間ほど経つとすっかり打ち解けました。

同じクラスなのでイタリア語力も似たようなものです。
彼女とはいろんな話をしました。
将来は東京でスウェーデンバーをやりたいとか洋服の店を出したいとか言ってましたっけ。

家族連れで留学していたアラサー

4月最初の月曜日、2時限目の始まる前の教室に入ると見知らぬ外国人男性がひとり、ポツンと所在なさげにイスに座っていました。
私も入学して3週目に入ったばかり、やっと学校のシステムに慣れたきたかなというころです。
彼はきっと新しい先生に違いないと思い込み、すでに何回も言わされているいつもの自己紹介を呪文のように唱える。

「チャオ。ソノ ユミ。ソノ ジャッポネーゼ。ソノ ディ トーキョー。ピアチェーレ」。
すると彼は
「チャオ。ソノ オーレ。ソノ ダニマルカ……」。

え?ダニマルカ?
そう、彼は先生ではなく、デンマークからやってきた新入生だったのです。

イタリアにルーツを持つ妻と生後8ヵ月の子どもを伴っての短期留学です。
このあと妻のイタリアの親戚を訪ねイースター(復活祭)休暇を過ごすので少しでも彼らと話せるようにという計画でした。
定職にも就いていましたが、1ヵ月ほど休暇を取って留学することにしたらしい。

ちょっと日本では考えられないシチュエーションでものすごく印象に残っています。
アラサーで就職してて妻子持ちでも留学するだなんて。

アラフォーで留学するキャリア志向ヨーロッパ人

タオルミーナという土地柄か、夏が近づくにしたがって生徒数も増えていきました。
夏休みを利用して1ヵ月、2ヵ月といった留学をするヨーロッパ人が多かったのです。

私のクラスにもアラフォーキャリア組が何人か入ってきました。
自国で趣味のイタリア語教室に通ってる人、仕事の関係でイタリア語ができたほうがキャリアアップを図れる人など、余裕のある感じの生徒が多かったです。

夏を迎えるころには私のイタリア語も上達してきていたので、18歳のスウェーデン女子とはまた違った交友関係を築くことができました。
彼らだけなら英語を共通言語にコミュニケーションが取れますけど、英語が苦手な私のためにプライベートタイムでもイタリア語オンリーというルールを作ってくれたのです。
そして面白いことに今でも連絡を取り合っています……もちろんイタリア語で。

若いうちに留学していたら、いくら言葉が出来てもこういう関係性は築けなかったでしょう。
ある程度キャリアを積んでからの留学だったので、共通の体験や悩みを語り合え、会話が弾んだのだと思います。

アラカン留学が当たり前なヨーロッパ

2006年当時、50代でリタイアして年金暮らしをしている人がいるのに驚かされました。
今の日本でいうところの「早期退職」だったのかな。
北ヨーロッパから太陽を求めシチリアに来ている人が多かったです。

彼らは夏のトップシーズンである7月8月を避けて来ます。
航空券や宿泊費など値段も安いし、真夏のタオルミーナは暑過ぎますし。

ノルウェーだかスウェーデンだか忘れましたけど、ヨットでタオルミーナに来た夫婦もいました。
なぜ留学したかというと、海辺に別荘を買うつもりなのでイタリア語ができたほうが良いし、学校紹介の宿に泊まったほうが安いから、という一石二鳥をねらっての留学でした。

イギリスから一人で来ていた女性は、休み時間にいつもタイムズを広げてSUDOKUをやってましたっけ。
4月でまだ人数の少ない時期だったし、女一人同士、よく一緒に過ごしました。

彼女は人生のうちでどうしてもイタリア語を話せるようになりたいのだと言っていて、当時すでに60歳をゆうに超えていました。
孫のような世代のクラスメイトと一緒に学ぶのです。
記憶力の衰えは致し方ないけれど、豊富な人生経験でそれをカバーしてユーモアたっぷりでクラスに参加していました。

留学中は、私の中の既成概念がガラガラと音を立てて崩れていくような出会いがたくさんありましたが、なかでも年齢に縛られない、自由な生き方をしている人が多いことに驚かされました。
年齢に対する思い込みって怖いな、もったいないなと思うようになったことも留学で得られた貴重な気づきです。

学ぶ姿勢に年齢は関係ありません。
学びたいという意欲さえあれば、あとは何とかなるものです。

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