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マイストーリー、マイネーム

Netflixにて「ドラゴンクエスト ユアストーリー」を鑑賞。
一応、テレビにps4をつないだのでテレビ画面でも観れなくはなかったが、何しろまだ寝たきり状態ではあるため、スマホのちいさな画面で。
充分だったと思う。むしろ私の初ネトフリテレビ鑑賞にならずに済んだ。そして寝たきりでもよく理解できる理解しがたい作品であった。

細かいことはもうほぼネタバレされつくしているだろうから、そこはおいといて、私が納得した点をひとつ。
(以下、私もネタバレ)




物語クライマックス直前、世界観が現実に戻ってきたとき、主人公をロールプレイングしていたプレイヤーが、

「子どものころから主人公の名前はリュカにしてるんで」

……あ、なるほど。となった。


この作品は原作の扱いがどうとか監督によるひねりがどうとかもろもろあるが、ゲームをノベライズした久美沙織の著作権を侵害している点に、私は着眼していた。
それ以外は何というか、好みもあるから原作をプレイしていてもこの映画が好きっていうこともあるだろうし、つまりそれ言っちゃおしまいの「人それぞれじゃない?」で済む気がした(アサイ「木根さんの1人でキネマ」愛読しています)。
だが著作権侵害となると話は別。
作品が好きだろうと名作だろうとやっちゃいけないことをやってちゃそらだめよ。倫理的にアレでも好きっていうのは、思うも言うのも自由だけど、侵害された人の存在は忘れないでおいてほしい。

私は久美沙織氏によるノベライズを読んでいないが、リュカという名は知っている。
それぐらい有名であることを、皮肉にもこの映画が明らかにしてしまっている。
ゆえに起訴されるに至ったといっても過言ではなかろう。

はじめにことの経緯を聞いたとき、なんでそんなに重大なところにチェックが入らなかったんだろうと不思議に思ったものだった。

そして今回、実際に鑑賞してなんとなくその意味を理解した。

監督は原作にあたる「ドラゴンクエスト5」をプレイしていないという。
でもたぶん「ドラクエ」ぐらいは知っていたんだろう。
きっと一応、まわりにどんなゲームかざっくり聞いたりはしてみたんだろう。

そしてそのうちの何人かが「自分は毎回、主人公の名前はリュカにしていました」と答えたとしても何ら不思議はない。

いっそ一人でも良い。ある一人に聞いたらそう返ってきたとして、であれば監督の中に「ドラクエの主人公はリュカ名がお約束」とインストールされたとしてもこの際おかしくはない。

もうちょっと興味を持った人なら、「なんでリュカ?」と疑問に思い、尋ね、久美沙織のノベライズに行き当たり、そして更にもうちょっと知恵がまわったらば「そんなに有名なら著作権とか大丈夫かな?」と心配になり、より慎重に取り扱ったことだろう。

たぶん興味もなければ知恵もなかったのでは。
としか言いようがない。
ここでの知恵は想像力や思いやりとも換言できる。

多くの子どもが「リュカ」名を使ったことと、それをそのまま映画に反映させるのとでは、自由度も手順も何かもかも違ってくる。
「今回のミルドラースは強い」と、そこに違和感を挟みこむことに夢中になって「今回のリュカ」が過去に何億人いたかを見落とした。
だって良く知らないけどみんなリュカリュカつけてるんだからリュカにしといたほうが無難でしょ?といわんばかりの短慮。
こういうことなんだろうなあと、勝手に納得した。

ちなみに私は「ドラゴンクエスト5」をプレイするときは、毎回、主人公は「こむろ」で、生まれてくる息子は「うつ」で娘は「きね」です。
だからもし私があのバーチャルなドラクエ5をやれるなら私がこむろになるんだろうけど、きねに該当するキャラクターがいないなら、考え直さざるを得ない。
ほかの人はどうかはわからないけど私はキャラクターに愛着をもってゲームをプレイするので、名前はとても大切。
それをないがしろにされるのは単純に不愉快。

主人公の娘がまるっとけずられたことも、ヘンリーの嫁もいないことも、わりと重要なセリフが消え去ったことも、実はバーチャル空間設定も、何でも監督の好きなようにして良いと思う。監督の作品なんだし。
でも久美沙織氏には誠実に謝罪すべきではないかと考える。
監督がゲーム未プレイでもドラクエが特に好きでなくても構わない。
ただ、無知ゆえに他者の権利を侵害したことは認めてほしい。
少なくとも久美沙織氏の要求に応じてクレジットに氏の名前を入れることぐらいは、Netflixでの公開まえにしておいてほしかった。

今回、私はこの映画を観て、改めて「ドラクエ5」をプレイしたくなった。原作のシナリオがあまりにも素晴らしいことを思い知ったからだ。
もしかしたら、ひょっとしたら、公開時にこの映画を観て「ドラクエ5」に興味を持った子どももいたかもしれない。
そして主人公に「リュカ」の名をつけるかもしれない。
その子どもがリュカとして冒険するドラクエ5の世界から戻ってきたときに、楽しかったと素直に喜んで、あの映画のおかげでこんなに面白いゲームに出会えた、ありがとう、と捧げるかもしれない感謝を、監督はどう受けとると言うのだろうか。

私はとりあえず次に「ドラクエ5」をプレイするときは、いつも通り「こむろ」と名づける。ゲームの中から「きね」は消えないし。そして嫁は変わらずビアンカです。その前にルドマンさんにプロポーズします。
デボラさんが出てくるバージョンをプレイしたことがないから、いざ初デボラ版となったら悩むだろうけども、まずはルドマンから攻略するスタイルに変更はありません。
でも本命はヘンリー嫁です。

実際にゲーマーのこだわりってけっこう強いものだろうと想像するから、ドラクエ5の主人公にリュカの名をつけつづけている人は少なくないと思う。
その由来は「ユアストーリー」にはない。
きっとそれさえもイメージできないまま「Continue your adventure」と言われてもねえ……ってなる反応も、想定していなかったのだろうなあ。

これだけだと映画に対して不満しかない記事になってしまうので、良かったところを。
ヘンリー可愛い。あれは可愛い。消えた嫁のぶんまで可愛い。
音楽は良かった。映画館の大音響で聴けた人がちょっとうらやましい。
フローラの演技がもっとこうフローラルな感じかと思ったらそうでもなかった。でもそんなに違和感なし。
ルドマンさんの髪型が可愛い。クロワッサン。
雪山の場面が多くてちょっとおののいたものの公開時期が夏だったことを考慮して許容。
けずられた場面やセリフが懐かしすぎてゲームやりたくなる。ps4でリメイクしてくれないかな。ps5じゃなくて良いので。むしろ是非ともps4で。それかSwitchで。


今年、はじめて観た映画がこの「ドラゴンクエスト ユアストーリー」である。
何とも言えない選択をしてしまった気にならなくもないが、ともかくも、久美沙織に関する新たな情報を待ちたい。
ノベライズを読むことは恐らくない。
(昔、同じく久美沙織による「MOTHER」のノベライズを読んでゲームはゲームすべきだなと身に染みこみすぎていてもはや抜けない。だから「デス・ストランディング」の小説版も半分しか読めていない)

あとNetflixのベーシックプランでこの作品を鑑賞したのだが、画質は充分に美しかった。
テレビだとやはりもうちょっと粗が出るかなあ。
実際に試すときの楽しみとして取っておきたい。




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