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【欧米化】お茶の国の人たちがどんどんコーヒーを作っている

コーヒーと言えばブラジル、コロンビア、インドネシア、ケニアなどいくつかの国を思い付くと思いますが、コーヒー豆専門店などへ行くと本当に様々な国でコーヒーが作られていることに気付きます。

特に最近ではアジアにおいてコーヒー豆の生産と消費が増えているように感じます。
ですので今回はアジアのコーヒーについてまとめます。
(どれが美味しいなど味に関しての話は一切しないので悪しからず)

先にまとめです。

まとめ
伝統的にお茶を飲む文化を持つアジアではコーヒー豆生産が着実に伸びており、ここ30年間の伸び率で言えば中南米を凌ぐものがあります。
欧米の市場を狙っていることや、フェアトレードの拡大、国内のコーヒー消費拡大がコーヒー豆増産の主な理由ですが、
気候変動により世界的にコーヒー豆減産の恐れが危惧されていることや、一次産品に頼った輸出では差別化ができないことなどコーヒー豆生産を拡大し続けることが必ずしもアジアの途上国の発展につながるかというとそうとも言い切れず、
最終製品を自国で作る加工技術の獲得が中長期的に見ると本当に大切なことなのかなと思います。

コーヒーの生産量と消費量

コーヒーの国別生産量

コーヒー豆の国別生産量(千袋・2021) USDA「World Markets and Trade」より

生産量上位国の順位は毎年安定しているようで、ブラジル、ベトナム、コロンビアの上位3カ国だけで世界中で消費されるコーヒー豆の6割を生産しているようです。

コーヒーの国別消費量

コーヒーの国別消費量(千袋・2021) USDA「World Markets and Trade」より

消費量はEU、アメリカ、ブラジルの上位3カ国で世界の消費量の65%を占めています。(ブラジルは他国からのコーヒー生豆の輸入を禁止しています)
意外にも日本は4位に位置しているのですが、一人当たりの消費量はそこまで多くなく、ヨーロッパ(特にスカンジナビア半島の国々)の消費量が多いのが特徴です。
スカンジナビア半島の国々は冬が極寒のため家にいる時間が増えてコーヒーを飲む機会が増えたり、冬は日照時間も短くなるため、日照不足が原因で起こる倦怠感を紛らわすためにコーヒーを飲むこともあるので消費量が多いようです。

一人当たりコーヒー消費量(2019) FAOより

一方、一人当たり消費量ではアジア勢で圧倒的な首位に立つラオスはコーヒーの生産国でもありますが生産量の割に人口が少ない(743万人)ので、これだけ高い順位にランクインしていると考えられます。

お茶を飲むアジアでコーヒー豆生産が増えている

アジアの躍進

大陸別コーヒー豆生産量(トン) FAOより

1990年から30年間の大陸別のコーヒー豆生産量の推移を見ると、元々はアフリカの方がアジアよりもコーヒー豆生産が盛んだったのが、1995年ごろには逆転をして、今ではアフリカと圧倒的な差をつけているのが分かります。
1990年を100%とした時の伸びは中南米で約157%、アフリカは約104%、アジアはなんと約359%と圧倒的に生産量が伸びていることが分かります。

アジアの国別コーヒー豆生産量(トン) FAOより

また、アジアの国別で見てみるとベトナムの生産量が圧倒的です。
ベトナムでコーヒー豆の生産が盛んになった理由としては、1995年にベトナムに子会社を設立したネスレの力が大きいとされています。
また、フランスによる植民地支配の結果、ベトナム自体でもコーヒー文化が根付いたことやベトナムの人口が伸び、経済力も着実に着いていることも生産量が伸びている理由と言えそうです。

生産量の伸びが大きいのはラオス(約36倍)と中国(約18倍)です。
ラオスもベトナムと同じくフランス領だった国ですが、ラオスについてはフェアトレードの拡大による影響が大きいようで、ベトナムで生産されているコーヒー豆がほとんどロブスタ種なのに対して、ラオスは海外向けにはアラビカ種を生産しています。(一般的にロブスタ種よりもアラビカ種のコーヒー豆の方が価値があるとされています)
中国のコーヒー豆はほとんどが雲南省で生産されたもので、雲南省の環境が世界のコーヒー名産地の環境と近いということで高品質なコーヒーができるようです。また、中国国内のコーヒー消費量も伸びており、2019年にナスダックに上場し、翌年には粉飾決算の発覚で上場廃止になったラッキンコーヒーの名前に聞き覚えのある方もいるのではないでしょうか。

その一方でフィリピンはかつてアジアのコーヒー豆生産上位国でしたが、現在は30年前の半分以下の生産量になってしまっています。
理由は、世界中に蔓延しコーヒー栽培に大打撃を与えた「さび病」で、フィリピンは1880年には世界第4位のコーヒー豆輸出国となりましたが、1889年ごろからさび病の影響でコーヒー豆生産は下火となってしまいました。

アジアでコーヒー豆生産が増えている理由

  • 欧米の市場に合わせて変化
    (ブラジルがコーヒーを自国産で賄っていることを考慮すると)コーヒーのメインの消費地は欧米です。EUとアメリカの総人口を足すと世界人口の約10%ですが、世界のコーヒー消費量では4割以上を占めています。
    発展途上国の主産業である農業において輸出を強化するために先進国でよく飲まれるコーヒーを生産しています。

  • フェアトレードの拡大
    現在はSDGsという言葉が浸透したことなどにより、日本でも着実にその認知が拡がっているフェアトレードですが、欧米のフェアトレードの市場規模は日本の数十倍以上もあり、依然として日本はフェアトレード後進国となっています。
    アジアでコーヒー豆を作っている農家はブラジルのような大規模プランテーション農業とは違い、小規模な場合が多いため、フェアトレードの認知や市場の拡大がアジアのコーヒー豆生産の増大に寄与していると言えます。

  • アジアの国内でもコーヒーの消費量が増えている
    アジアの人口増大、経済発展やそれに伴う欧米化の影響でコーヒー豆生産だけでなく国内でのコーヒー消費量も伸びています。

アジアの飲み物と言えばお茶

多くのアジアの人たちは私たち日本人も含め、伝統的にはお茶を飲む文化を持っています。
しかし、私たち日本人が良い例ですが、お茶の存在感はかつてよりも確実に小さくなっていると言えます。
コーヒー豆と茶葉を比べたときに同じ重量からできる飲料の量はお茶の方が多いため、世界的な消費量自体はコーヒーよりもお茶の方が多いのですが、個人レベルで見ると、コーヒーは毎日飲むけどお茶はたまにしか飲まないという方もいるかと思います。

他のアジアの国でも同様にコーヒーショップやカフェが増えてきており、私がよく行くネパールでも若者を中心にコーヒーを飲む人たちが増えています。(本記事トップの写真はネパールのカフェの看板です)

大陸別茶の生産量(トン) FAOより
アジアの国別茶生産量(トン) FAOより

とはいえ、生産量ではお茶も十分伸びているため、日本同様、お茶文化が全くなくなるということは考えにくいですが、伝統的にお茶を飲んでいたアジアの国でも今後はコーヒーを飲む人たちがより一層増えていくことが予想されます。
今、むしろ欧米の方では健康などの面からお茶を飲む人やカフェインレスのコーヒーを好む人が増えてきているのにも関わらず、アジアでは逆にコーヒーがメジャーな飲み物になりつつあるという少し皮肉な状況が起きているとも言えます。

増加するコーヒー豆生産の懸念点

2050年には主産地でコーヒー豆生産が減少?

コーヒーの市場規模は今後も健全に増加していく予測が出ているので、アジアのコーヒー豆生産は今後も増加していくことが予想されますが、コーヒー豆生産に関しては「2050年問題」と言われる問題が危惧されており、地球温暖化による気候変動の影響により、特にアラビカ種のコーヒー豆生産が減少してしまうことが予想されています。

2050年までに栽培に適した土地が半減してしまうと言われており、世界的な問題になっているのですが、アジアのコーヒー新興国は自らこの課題に足を突っ込んでいっていると捉えることもできます。

コーヒーは一次産品

ネパールのコーヒー畑(小木がコーヒーノキ)

アジアの国がコーヒー豆を生産しているのは主に輸出による外貨獲得が目的だと考えられますが、コーヒーのようにほとんど加工されずに輸出される商品のことを一次産品と呼び、発展途上国の経済発展がうまくいかない1つの理由として一次産品しか作ることができないことが挙げられます。
加工をすることで価値をつけることが差別化につながりますが、肝心のそれをせずに原料として輸出をするので価値をつけづらく、薄利多売でないと利益をあげにくい構造となってしまいます。
しかし、これからアジアでコーヒー豆生産を増やしていこうという国は小規模で農業をやっている人たちが多く、だからこそフェアトレード認証のようなものが必要なのですが、フェアトレードが永続的なものとも言い難いので自国で最終製品として加工できる技術の獲得が中長期的には求められているところだと思います。
加工をすることができれば新たな雇用を生み出すことにもつながります。
(フェアトレード自体は素晴らしい取り組みだと思いますし、技術の獲得がとても難しいというのは理解しています)

最後に

今回はお茶を飲むアジアのコーヒー豆生産について書きました。

伝統的にお茶を飲む文化を持つアジアではコーヒー豆生産が着実に伸びており、ここ30年間の伸び率で言えば中南米を凌ぐものがあります。
欧米の市場を狙っていることや、フェアトレードの拡大、国内のコーヒー消費拡大がコーヒー豆増産の主な理由ですが、気候変動により世界的にコーヒー豆減産の恐れが危惧されていることや、一次産品に頼った輸出では差別化ができないことなどコーヒー豆生産を拡大し続けることが必ずしもアジアの途上国の発展につながるかというとそうとも言い切れず、最終製品を自国で作る加工技術の獲得が中長期的に見ると本当に大切なことなのかなと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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