世界を捉え、自らを超えるまなざし~ジッド『ソヴィエト旅行記』
1936年6月、フランスのベストセラー作家アンドレ・ジッドはロシアの地を訪れていた。
目的はまず、病床に伏す友人の作家ゴーリキーを見舞うためであったが、同時に、天才革命家レーニンによって華々しく建国された社会主義のソ連を周遊するツアーでもあった。
当時の大半の西洋知識人の例に漏れず、ジッドもまた共産主義に惹かれ、マルクス主義的理想国家として具現化されたソヴィエト連邦という壮大な実験を両手をあげて賛美していた。そんなわけで、嬉々として足を踏み入れたスターリン政権化のソ連で、