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【書評】「文化」の表象を読み解く

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世界各国の文化論や文化史について書かれた本の紹介マガジンです。
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記事一覧

【絵画読解】揺れる〈向こう〉と去る記憶

いま絵画のサブスクCasieで借りている作品である吉田絵美〈向こう〉を題材にして、前回同様に…

前-記号的、舞う身体~イリナ・グリゴレ『優しい地獄』

精霊のような本である。著者が、というよりもこの本自体が、現し世のものとは思えないような浮…

『聖書』初めて読んだらトゲトゲしさが思いの外すごかった

さいきん、やっぱり聖書読まなきゃダメだよなぁと思うことが増えてきてたので、手始めにAudibl…

人情の碗、悟りの微笑~『茶の本』に日本人の内なる調和を覗く

「岡倉天心」という名前を、誰しも一度ぐらいは聞いたことがあるだろう。 本名を岡倉覚三(186…

心を無に、血湧き肉躍る大アマゾンの冒険へ~開高健『オーパ!』

むせ返るような熱気、香りたつ種々雑多なスパイス。目を閉じればハチの羽音と、足元の河にピラ…

絢爛で魔術的な文化論の”超”作~高山宏『近代文化史入門―超英文学講義』

ついに出た。2020年私的ベスト本の急先鋒。 博覧強記の文学者にして「学魔」と呼ばれる著者高…

世界を捉え、自らを超えるまなざし~ジッド『ソヴィエト旅行記』

1936年6月、フランスのベストセラー作家アンドレ・ジッドはロシアの地を訪れていた。 目的はまず、病床に伏す友人の作家ゴーリキーを見舞うためであったが、同時に、天才革命家レーニンによって華々しく建国された社会主義のソ連を周遊するツアーでもあった。 当時の大半の西洋知識人の例に漏れず、ジッドもまた共産主義に惹かれ、マルクス主義的理想国家として具現化されたソヴィエト連邦という壮大な実験を両手をあげて賛美していた。そんなわけで、嬉々として足を踏み入れたスターリン政権化のソ連で、

差異と共生の認識論~『多文化主義とは何か』センブリーニ

多文化主義とは、異なる民族集団が持つ文化や風習、価値体系を等しく尊重し、社会の中で共生を…

"日本人"のルーツへの問い-『文字とことば』(シリーズ 古代史をひらく)

「ひらがなや漢字はいつ、どのようにして日本で使われるに至ったのか?」 そういえば、よく知…

日本人の豊かな信仰世界を覗き見る~柳田国男『禁忌習俗事典』

忌みとは、不吉の象徴である。避けるべきものである。 古代日本には、清浄の思想があった。清…