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「天才を親に持つ、2世の苦しみ」

天才の親の元に生まれた2世

世間を騒がせる「2世」という存在がいます。特に、芸能界やスポーツ選手に多いですが、優秀な遺伝子を受け継ぎ、親と同じ場所で活躍する人がいます。野球でもサッカーでも、2世が親のいた世界を目指し、実際に活躍している人はいます。しかし、親が活躍している人であればあるほど、親を超えるほどの活躍をする2世は少なく、ほとんどいないと言えます。そこまで活躍しなかった親の2世であれば、親を超えることはありますが、天才だった親を超えることは、まずありません。

まずは、ある2世のエピソードを紹介します。

天才マラソンランナー瀬古利彦の息子

日本マラソン界のドン瀬古利彦さんの息子で、天理さんという方がいました。親のあまりの偉大さに、子供たちは陸上の道を避けたようですが、天理さんだけは、一番遺伝子を受け継ぎ、才能を感じていたことで、サッカーをやろうとしていた天理さんに、瀬古さんは陸上をやって欲しいと気持ちを伝えたそうです。本人は嫌だったそうですが、それでも親が喜んでくれるからと、陸上の道に進みました。

しかし、「あの瀬古の息子」と言われ続け、期待もハードルも高く、常にプレッシャーがつきまといました。少しでもタイムが悪いと、ボロクソ言われるわけです。それでも努力し続け、父が走った「箱根駅伝」出場を目指し、東海大学に進学しました。しかし、ライバルが多く、候補に入れない選手は、マネージャーに回らなければならないという部のルールがありました。誰も立候補しなかったことで、多数決になった時、名前が挙がったのは、「瀬古天理」だった。父の背中を追い、箱根駅伝に出場するために頑張ってきた天理さんにとっては、もう走る理由がなくなり、部を辞めようと父に電話しました。

そして、瀬古さんはこんなことを言います。

「今まで、父さんの息子で辛かったろ?もういいんだ。
 でも、部活がけはやめるな。」

その言葉を聞き、天理さんは、マネージャーとしてチームを支えようと、マネージャーになることを決めました。そして、4年生の時には、箱根駅伝に出場することができ、引退の時、マネージャーであるにも関わらず、皆から胴上げされたのでした。

天才の2世、瀬古天理さんは、陸上の道で成功することはありませんでしたが、天理さんに限らず、天才であった親のと同じ道で、親以上に成功することは、不可能に近いです。

それにはこんな理由があります。

天才である親のプレッシャー

なんと言っても、親だ偉大過ぎると、それだけで子供にとってはプレッシャーです。親子と言っても、同じ人間ではありません。遺伝子を受け継ぐことで、もしかしたら親よりも高い才能を持っているかもしれません。だからと言って、親以上に成功するとは限りません。どんなに才能があっても、成功を約束された状態で成功するのは、並大抵の事ではありません。もちろん、そういうプレッシャーの中で結果を出す天才もいますが、2世というのは、親の姿がずっと付きまといます。

本当に自分がやりたくてやっている事ではなく、親の為、誰かの為にやるという原動力では、成功することはまずありません。自分の為、自分がやりたくてやっていることに対してのプレッシャーは、自分の力に変えられますが、誰かの為だけにやっていることで感じるプレッシャーは、自分を成長させるより、自分を潰す方に働くでしょう。

親の期待に応える為に成功はできない

「誰かの為に」ということは大事ですし、必要だと思いますが、それが「原点」になってしまうことは、私は危険だと思っています。自分の為というか、自分が本当にやろうとしていることをやり遂げる為に、「誰かの為」というものや「プレッシャー」が大事になります。なぜなら「自分の為」というものこそ、「核」になるからです。

誰かの為、親の為という、誰かの期待に応える為だけでは、成功することはまずできません。仮に成功したとしても、自身が本心から望むことでなければ、本人が幸せでいられることはないでしょう。達成感や充実感はあると思いますが、目標を達成し成功したとしても、本人の心が満たされることはないでしょう。

ある意味、成功している親というのは、「毒親」に成り得るのかもしれません。ダメな親だけが毒親ではなく、優秀過ぎても、子供にとっては毒親に成り得ると思います。

瀬古さんの場合、天才の2世という、生まれながらに高すぎる壁があることが、2世が親を超えられない理由の一つと言えるでしょう。

既に夢を実現している

そして、もう一つの理由としては、親が既に成功を手にしている事で、成功を望む意欲が出ることはありません。むしろ、親が叶えられなかった夢を子供に託す方が、成功する可能性は高いと言えます。

人は、「できないことができるようになる」からこそ、成長していくし、生きていけます。それが人類として歩んでいくことだと思いますが、同じことを続けていくということは、並大抵のことではなく、むしろ異常なことなのかもしれません。
例えば、瀬古さんで言えば、不運からオリンピックで金メダルを獲ることはできなかったので、まだ親を超えることはできたかもしれませんが、瀬古さんが天理さんが小さい頃から英才教育という名の洗脳を始めていれば、それも実現したかもしれません。ただ、瀬古さん自身、オリンピックで金メダルを獲ってはいなくても、「世界一」という自負があったんだと思います。だからこそ、自分の夢を子供に託すことはなかったのでしょう。そういう意味で、親自身が、夢を実現できずに悔やむことがなければ、子供に夢を託すことはなく、2世が親を超えることはないのでしょう。

成功した親を超えた成功者

そんな中で、成功した親を超えた成功者がいます。

それが、「室伏広治」その人です。

きっと他にもいると思いますが、以前『消えた天才』シリーズのコラムでも取り上げた室伏広治さんは、アジア1の父を超え、世界1になりました。

これは、中々ないケースではあると思いますが、なぜ室伏さんは天才の父を超えることができたのでしょうか。

それは、室伏広治さん自身が父を超える天才であり、お父さんも悔やむことがあり息子に夢を託し、オリンピックでメダルを獲れなかった溝口和洋さんという存在がいて、何より室伏広治さん自身が、ハンマー投げ世界一を目指していたからだらだと思います。もしかしたら、野球やサッカー、マラソンに比べて、メジャーなスポーツではないからかもしれませんが、それでもその道においては偉大な親を超えられたことは、奇跡に近い要素が重なったからこそ、室伏さんのオリンピック金メダルにつながったのかもしれません。

様々な要素によって、成功した親を超える成功者となりましたが、やはり、「自分が本心から望んだ」ということがなければ、どんなに才能があっても、親が望んでも成功することはできず、溝口さんとの出会いもなかったのでしょう。

「自分が望む」ということが最重要

天才の2世として生まれるということは、中々同じ道を自分が望むということは難しいことかもしれませんが、2世だろうがなんだろうが、「自分が望む」道でなければ、本当の意味で成功することも幸せになることもないんだろうと思います。

もし2世として生まれたとしたら、同じ道であっても違う道であっても、「自分が望む道」を選択できるように強い気持ちが必要なのではないかと思います。

今日は、コードギアス名言Vol.15「二つの道がある」というコラムを配信しましたが、最終的に「道」というテーマで送る1日となりました(笑)

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