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高齢ドライバー事故をウラヨミ。原因は思い込み?

多発する高齢ドライバーによる事故

連日、高齢ドライバーの逆走や事故が相次ぎ、問題視されています。高齢者による事故は、以前から少なくはなかったのですが目立つ事故が増えてきているように思います。衝撃だったのは、先週福岡で起こった暴走多重事故ですが、81歳という高齢で、交差点にノーブレーキで侵入し、複数台を巻き込む事故を起こして、ビルに突撃し、運転者と同乗者のご夫婦が亡くなり、他にも重軽傷を負うという悲惨なものでした。運転手が亡くなられたことで、何が起きていたのか、事故を起こす状況や直前のやりとりなど、様々な憶測や検証がされていますが、とある専門家の方の意見を聞いて、個人的には一番納得がいったことがありました。なぜこんなに高齢ドライバーによる事故が多発するのか。おそらく様々な事故に共通するものだと思い、ウラヨミしていきたいと思います。

事故の原因は「思い込み」

今回は、福岡での事故を焦点にしていきたいと思いますが、暴走するきっかけになったのは、交差点の700m前に前の車に衝突したことで、それから暴走を続けた700mの間、ブレーキ痕はなかった。つまり、ブレーキを踏んでいないということです。ブレーキが壊れていた可能性もなくはないですが、おそらくそれはないと思われます。あおり運転のように、何かをきっかけにブチ切れたとも考えにくく、失神していたとも言われていますが、猛スピードを出しているにも関わらず、何台にも軽い衝突はしたものの、ちゃんと前の車を避けているんです。ハンドルを切ることもなく、交差点に進入した時には、130キロを超えていたそうです。

ここから考えられることは、こんなことが起こっていたのではないでしょうか。

「あぁ!ぶつけてしまったぁ・・・」
気が動転し、どうしようと思ったんでしょう。
「事故を起こしてしまった。車を止めなきゃ」
動揺したまま、ブレーキを踏んで車を止めようと思ったのに、車は止まらないどころか加速してしまう。
「あれ、止まらない!?おい!どうなってるんだ。ブレーキが壊れてるんじゃないか!?故障のせいで事故を起こしてしまったのか!?」
そう思いながら、一生懸命車を止めようと、ブレーキを踏んだのでしょう。しかし車は尚も加速し、
「どんどん速度が上がってる!?うわぁ、また前の車にぶつかってしまう!!」
とっさに避けるも、何台かの車にぶつかり、避けるために中央線をはみ出して逆走もしてしまう。
「うわぁ!またぶつけてしまった・・・。どうなってるんだ。この車、やっぱり故障してるんじゃないか!止まれ!止まれー!!」
一生懸命ブレーキを踏み続けるも、車は止まらないどころか、130キロものスピードになってしまう。
「交差点だ!このままじゃ大事故になってしまう!!頼む!止まってくれー!!」
そう思いながら、交差点に進入し、複数台にぶつかりながら、自らは正面のビルに突っ込んでしまった。

最初に事故を起こしてしまってから、気が動転したことで、車を止めようとブレーキを踏んだつもりが、アクセルを踏んでいた。「止まらない!?」と余計に動揺し、必死で「止まれ!」と思いながらアクセルを踏んでいたのでしょう。しかし、止まらないどころか加速することで更に動揺し、パニックを起こしていたのではないでしょうか。車が故障していると思い込み、あとはずっと車を止めるためにアクセルを思いっきり踏み続けたんだと思います。

きっと、本人は、ブレーキを踏んでいると思い込んでいたんだと思います。事故を起こしたことによる気の動転、止まるはずが速度が上がり更に動揺し、続けて事故を起こしたことでパニックを起こしてしまった。最後は、神に祈るかのように、「止まれー!」と、ブレーキだと思い込みながらアクセルを踏み込んでいたんだと思います。

「ブレーキを踏めば、車は止まる」というのは、当然のことです。実際にブレーキを踏んで止まらなければ、車の故障です。今回の事故もその可能性がゼロではないですが、ブレーキが故障していても速度が上がるという理由にはなりません。むしろ130キロというスピードが出るのはアクセルを強く踏み込まないと出る速度ではありません。そして、失神していたら車を避けることもできません。憶測にしか過ぎませんが、きっとこのような「思い込み」による事故だったというのが、一番しっくりくるのです。

「思い込み」の危険性

事故の真相を解明することも大事ですが、これが「思い込み」による事故であれば、高齢者に限らず誰にでも起こり得ることです。「思い込み」というものは、人の認識を捻じ曲げる強力なものです。『インハンド 』第8話のコラムの中で「恐ろしいのは先入観」という項目でも触れましたが、「遺伝子やデータなんかより、先入観の方が人間にとってよっぽど危険だ。」と語られています。事実がどうであっても、「先入観」という思い込みによって、捉え方は全く変わってしまいます。事故を起こしたり、異常事態に陥った時に、正常な判断をすることはとても難しいです。ただでさえ厄介な「思い込み」が、今回の事故の場合は、最初の事故によって動転し、ブレーキだと思い込んでアクセルを踏んだことで、止まるはずなのに止まらない異常事態だと感じ、更に動揺することで、より思い込みが強くなってしまったのでしょう。

免許を取った頃、父親に「慣れた頃にこそ事故を起こすもんだ。気をつけなさい。」と言われたことを思い出しましたが、高齢者に事故が多い理由は、長年運転をしてきて、慣れきってしまっているからかもしれませんアンケートでも高齢になる程、「自分の運転に自信がある」と答えた割合が高くなるそうで、オレオレ詐欺のCMでも「若い者にはまだまだ負けん!」と言ったりしていますが、そういう気持ちがあるのも確かでしょう。しかし、年齢に関係なく、誰でも事故を起こす可能性はあります。

事故を起こすとしたら、「大丈夫」という「思い込み」から、ブレーキだと思い込んでしまうこと、簡単に言えば「だろう運転」と言えますが、「思い込み」自体はそれ以上に厄介なものだと思います。「思い込み」を生むのは、「慣れ」「過信」「思考停止」などといったことでしょうか。

今回の事故も最近多発している事故も、起きてしまったことを変えることはできません。大津の事故のコラムでも述べていますが、私たちにできることは、こういった悲惨な事故を起こさないように心がけることです。大切な人を失う、こんなに辛いことはありません。大切な人が加害者になることもまた、辛く苦しいものです。「思い込み」には注意して、運転したり、外を歩いている近くには、危険があるということを忘れずに過ごしていきたいですね。

事故だけでなく、「思い込み」は人生を左右することでもあります。こういったことをきっかけに、自分にどんな「思い込み」があるのか、振り返ってみることも大事ではないかと思います。思い込んでいるからこそ、中々気付けないものではありますが・・・。


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