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禁煙のため、過去の私の頭を撫でる

タバコなんか嫌いだ。あんなものは、アホの嗜好品だ。毎日毎日、500円払って「ヤニ」などという、いかにも嫌われそうなネーミングの黒いネバネバを肺になすりつけ、ぽわーっと口から煙を吐いては周囲の人を不快にさせるあのタバコが、大嫌いだ。

といいつつ、私は喫煙者である。しかもヘビーアンドヘビーアンドベテランのスパスパーである。レントゲンでも撮ろうものなら、まるで肺が喪失したかのごとく黒く映るだろう。内臓の一部がもう溶けちゃってるかもしれない。

でも、タバコは嫌いなのである。嫌えば嫌うほど、必要になる。これは依存以外の何者でもない。ピースのアロマと私は、どうしようもなくラブラブなのだ。

しかしアラサーと呼ばれる年になったいま、そろそろ、この一方的な依存を解かねばならない。禁煙外来に行くのは面倒だ。ここは医療ではなく、アウトプットのちからを信じて、禁煙を成功させたいと思う。 いやはや、noteがあってよかった。これはクリエイティブだ。

禁煙を成功させるアウトプットとは

アウトプットで禁煙を成功させる。ちょっと意味がわからないかもしれない。まずは、その真意から書こうと思う。

人間性や思考、行動は「環境」が現れるツールだ。方言が分かりやすい例だろう。大阪で生まれ育ち、両親が関西弁であれば、自ずと関西人になる。福岡であれば博多弁。青森であれば津軽弁。これは誰に強制されたわけでもなく、周りが話しているから、自分で選んだわけだ。

哲学や性格も一緒だ。お化けが怖い人は、そう感じるようになったきっかけがある。ジェットコースターも同じ。外交的か内向的かも同じ。先天的なことは、ほぼない。骨格や罹患率などの肉体的なこと以外は、後天的に刷り込まれた事象がほとんどだと思う。その癖づいた思考が行動に変わるわけだ。

では、後天的な思考を変えるためには、どうすればいいのか。「よし、変えるぞ」「私は◯◯な性格だ」と言い聞かせるか。それでは変わらない。大切なのは、思考の根っこだ。根治が大切だ。要は「思考や行動が生まれた場所」まで遡って、当時の自分に「おい、やめろ」と告げることが論理的な解決法なのである。

これがアウトプットによる禁煙の成功のカギ。よし、私がタバコを吸い出した当時にタイムスリップするとしよう。

中学生の私よ、ヤニはダサいぞ

母は嫌煙家だった。父は私が4歳のころにセブンスターを捨てた。私はそこまでタバコに親しまずに、幼いころを過ごしたわけだ。

そんな私がはじめてタバコに火をつけたのは、中学2年生のころだった。理由は3つある。

1つはヤンキー高だったからだ。福岡の博多区の学校で、やたらと不良が多かった。と、いってもクローズのような硬派なヤンキーではなく、校内でいじめる対象を見つけては、みなボコボコにしていた。ヒエラルキーは明らかな2段階層で、いじめるorいじめられる、だった。情けない話だが、いじめられないために、タバコを吸うことや万引きをすること、盗んだバイクを売ることなどの非行をしていた。ちなみにヤンキーにも憧れがあった。喧嘩をする前にセブンスターに火をつけるあの姿が、当時はなんともかっこよかったのだ。

2つ目は、バンドを組み出したからだ。同じ年のバンドメンバーは、タバコ好きだった。また練習スタジオはロック大好きな高校生が多く、いつもモクモク。それを格好いいと思ったし、同級生とは違う自分に優位性を感じていた。これはアイデンティティの構築なので、仕方がない。

3つ目は文豪に憧れていたから。当時の私は文学資料集を切り抜いて、ノートに貼り付け、勝手に文豪スクラップを作っていた。その写真には作家が文机を前にタバコを吸っている姿もあり、おー、かっけー、と感動した。特に坂口安吾のこの写真には憧れた。

この写真の左下の蚊取り線香と(たぶん)灰皿が、学ランの私には最高にクールだったのだ。ちなみに安吾の作品はタイトルだけが好きで、内容は別に、だった。

さぁ、呪いを解く瞬間!

さて、ここからが本番だ。3つの内容について、呪いを解こう。

1つ目 ヤンキーがトリガーだった私へ
もう、タバコを辞めてもいじめられないから安心してくれ。あとヤンキーは別にクールじゃないぞ。あれはタバコを吸わなきゃ、覚悟ができないから、吸っているだけ。本当に格好いいのは誰とも戦わない人だ。

2つ目 バンドがトリガーだった私へ
お前、ミッシェルガンエレファントも、ブランキージェットシティも、聴いてないだろ。お前が好きなバンドマンは、タバコを吸っていないじゃないか。あと、バンドは今やアイデンティティでもなんでもないから、タバコやめろ。

3つ目 文豪がトリガーだった私へ
大学に進んでまで文豪の研究をしてわかっただろ。太宰も芥川も安吾も、ダメ人間だぞ。心が弱い奴ばっかりだぞ。だからタバコ吸ってんだよ。あとフリーランスで在宅作業が多いしな。ペンが進まずに唸りながらタバコ吸うとか、ダセエだろ。ほら、サッとインタビュー原稿仕上げて、うまい空気吸え。お前の今の仕事は小説家じゃねえ、ライターだ、

よし、明日からも普通に生活する

これでタバコへの執着は、すっかり解けた。むしろ、タバコを吸うことがダサいとさえ思っている。喫煙者をなんとなく、侮蔑的な視点で見ている。いやはや、ここまでテキメンだとは。

禁煙することでお金も貯まる。いち日500円、ひと月で1万5000円、いち年で18万円、これは別に意識して貯金しない。意識する時点でタバコに縛られるからだ。もともと吸っていませんよ〜、みたいな顔で普通に生活し、普通に定額貯金する。何も背負わない、何にも縛られない、これでまたひとつ、身軽になったわけで、明日からいつも通りシュルレアリスム文学を書いて、コラージュをつくりまーす。

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