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世界近代文学

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2019年7月の記事一覧

vol.53 G・ガルシア=マルケス「予告された殺人の記録」を読んで(野谷文昭訳)

vol.53 G・ガルシア=マルケス「予告された殺人の記録」を読んで(野谷文昭訳)

今から68年前、日本から約13,000キロ以上離れたカリブ海沿岸の田舎町で、実際に起きた殺人事件に思いを巡らせた。

1982年度のノーベル文学賞を受賞したコロンビアの作家、G・ガルシア=マルケスの作品。

これは小説として作られているが、新潮解説によると、実際にあった事件を元々はルポルタージュとして世に出される予定だったとのこと。語り手の「わたし」が、人々の記憶や裁判所の調書を調べ、約30年前の

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vol.52 ドストエフスキー「正直な泥棒」を読んで(小沼文彦訳)

vol.52 ドストエフスキー「正直な泥棒」を読んで(小沼文彦訳)

1848年に発表されたドストエフスキー初期の短編。この時代、ちょっと調べた。ロシア帝国ではまだ農奴制があり、貴族に隷属されていた農奴たちは「貧しき人々」だった。日本ではこのころ、黒船来航で大騒ぎしていた。江戸時代末期、貧農が豪農に借金の帳消しを求め、均等な社会を求める世直し一揆が続発していた。

ドストエフスキーの作品に共通して描かれているのは、徹底的な貧しさと生きることの難しさ、過ち、そして苦悩

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