記事一覧

忘れられたコーヒー

太陽光に熱された鈍く光るコンクリートを踏みしめ足を進めると、一歩一歩の歩みと上半身の毛穴が呼応するように汗が出る。暑い暑い灰色のジャングル・東京の夏。おまけに重…

Saitou
3年前

ホステル暮らし・電気工事士・映画

東京にいるのも半年切ったので、なんとなく日記を書いて残しておきたい。この2年近い東京生活はぬるぬると厳しかった。 8/30 9月末でアパートを解約する。「故郷に戻るの…

Saitou
3年前

カキカレー

数ヶ月前にインドカレーではないスパイスカレーのお店が職場の近くにできて、よく通っている。そのお店が今週は「牡蠣カレー」を週替わりメニューで出すらしく、Instagram…

Saitou
4年前
2

下町

2度目の上京生活、上手くいかないことも多いが、住居を下町エリアに据えたことだけは本当に大正解だったと思う。地元の方との関わりは無いに等しいのだけれど、通りかかる…

Saitou
4年前
3

2019/10/2

小さい頃から高校までずっと野球をやってきて、ずっと一塁手で、ずっと補欠で遠くからグラウンドを眺めていた私にとって、マウンド上にいる先発投手は一際光って見える憧れ…

Saitou
4年前
1

躊躇ない天せいろ注文と山本周五郎

3ヶ月くらい前から、週末の休みに特段予定がなければ、お昼は決まった蕎麦屋さんに行っている。前置きするが、ガチガチに決まったルーティーンがあるのではない。インディ…

Saitou
5年前
2

ダメ日記

今日はなにも予定がない休日だったので、なにか文章を書こうと思って過ごしていたけれど、面白い題材がえんえんと浮かばずモンモンとしてきたので、諦めることにした。最近…

Saitou
6年前
12

弱さ芸でやってきた。

明日は就職先の研修場所まで一人で車を運転して行く。働く場所が決まってから、大急ぎで中古車を買って、少しづつ運転の練習をしてきたけれど、不安で気持ちが今もざわつい…

Saitou
6年前
7

働く場所が決まった

今年も甲子園が終わった。飛びやすいボール疑惑、出場校が打高投低の傾向であったことなど、いろいろな要因があるのだろうが、とにかく「火力半端ねえ!!」な大会だった。…

Saitou
6年前
4

ヘルシンキの写真

ヨーロッパで撮った写真を現像した。あいも変わらず、わけもわからず、撮っているので、大体がひどい出来映えだ。でも「ちょっと色がいいんじゃない?」とか「なんか気に入…

Saitou
6年前
5

cakes連載「一故人」の「日野原重明——「上手に不摂生」で100歳を超える」を読んで鳥肌が立つ。若いときから“「死」に正面から対峙して”生きた人なのだろうと感じた。人の一生を文章でこんな風に描き出すって本当にすごい。https://cakes.mu/posts/17145

Saitou
6年前
3

ドルスキニンカイに来た

リトアニア・ドルスキニンカイにいる。「どこやねん」と自分でもつっこみたくなるくらい、ここがどこだかよくわからない。ロンリープラネットにも数ページしか解説がない。…

Saitou
6年前
3

ばくぜんの罠

「なんちゅうか、働いてないと罪悪感にさいなまれるし、お金稼げないし、生活に意義が見えなくなるし、頑張ること見つけられないし、意外にもつらい。けど、働き出したら働…

Saitou
6年前
15

十年前にうしろめたい

足の悪い祖母が、フキをいただいたお返しに、コウザブロウさんの家へ缶ビールを渡してきてくれと言う。田舎のコミュニティにはよくあるであろう、いただきものには必ずお返…

Saitou
7年前
7

敬語からタメ口に移るタイミングわからん

他人との距離をふと意識しはじめたときには、敬語からタメ口への移り方がわからなくなっていた。あれ、今の友人たちとは赤の他人同士からどうやって仲良くなってきたのだろ…

Saitou
7年前
35

フラペチーノの食べ方問題

スターバックスのフラペチーノを飲むとき、上に乗ったホイップクリームだけをまずスプーンで食す。そしてそれから下のフラペチーノにストローを刺して、吸い始める。友人が…

Saitou
7年前
5
忘れられたコーヒー

忘れられたコーヒー

太陽光に熱された鈍く光るコンクリートを踏みしめ足を進めると、一歩一歩の歩みと上半身の毛穴が呼応するように汗が出る。暑い暑い灰色のジャングル・東京の夏。おまけに重い重い、肉に喰い込む肩掛けバッグ。クソ暑いのに、なんでだ。ハードカバーの本3冊、文庫本2冊、Kindle、おまけにコンパクトカメラが入っているからだ。

もう嫌だ。いつもこうだ。家を出る前の身支度、暇で散歩するのだからそりゃ本も読むだろうと

もっとみる
ホステル暮らし・電気工事士・映画

ホステル暮らし・電気工事士・映画

東京にいるのも半年切ったので、なんとなく日記を書いて残しておきたい。この2年近い東京生活はぬるぬると厳しかった。

8/30

9月末でアパートを解約する。「故郷に戻るので今年度末にはどちらにせよ出ていく、かつコロナの影響で収入も減っていて厳しいので、今回は更新料をどうにか免除してくれないか」と管理会社を通して2度粘って交渉したが、オーナー側からの答えはいずれもノーだった。かなり勝手を申していたの

もっとみる

カキカレー

数ヶ月前にインドカレーではないスパイスカレーのお店が職場の近くにできて、よく通っている。そのお店が今週は「牡蠣カレー」を週替わりメニューで出すらしく、Instagramで写真をアップしているのを昨日見かけた。赤茶色に濁して照りのあるルーを纏って浮かぶ、広島産のカキはムッチリと肉感的で、上の歯と舌の間で優しい万力のように噛み潰したら、どんな液体が噴出するのだろう、などとスパイスの香りとともに想像して

もっとみる
下町

下町

2度目の上京生活、上手くいかないことも多いが、住居を下町エリアに据えたことだけは本当に大正解だったと思う。地元の方との関わりは無いに等しいのだけれど、通りかかる人たちの纏う空気が飾り気なく温かい。夜は人が消えたように路地が静まりかえっているのに、建物や街並みに生活の温度や歴史を感じて、寂しくない。

なぜ、このように感じるのかまだわからないけど、東京を離れるまでに、この土地の素晴らしさを言語化した

もっとみる
2019/10/2

2019/10/2

小さい頃から高校までずっと野球をやってきて、ずっと一塁手で、ずっと補欠で遠くからグラウンドを眺めていた私にとって、マウンド上にいる先発投手は一際光って見える憧れの存在だった。そのせいか、ピッチング前のロジンを指先につける行為、試合終わりにキャッチャーと行う腕を脱力させた緩いキャッチボール、ガンダムのような肩のアイシング、これらのような先発投手特有の文化や仕草にまでいちいち格好良さを感じてしまう。

もっとみる
躊躇ない天せいろ注文と山本周五郎

躊躇ない天せいろ注文と山本周五郎

3ヶ月くらい前から、週末の休みに特段予定がなければ、お昼は決まった蕎麦屋さんに行っている。前置きするが、ガチガチに決まったルーティーンがあるのではない。インディペンデントなお店が好きなわりに、どこに入ってもガチガチに緊張してしまう私にとって、馴染みやすい個人店を発見したら必然的に頻繁に通うようになってしまうのだ。寄生虫のようである。

その蕎麦屋さんの店構えにはこれといった特徴はなく、引き戸を引い

もっとみる

ダメ日記

今日はなにも予定がない休日だったので、なにか文章を書こうと思って過ごしていたけれど、面白い題材がえんえんと浮かばずモンモンとしてきたので、諦めることにした。最近、安っぽい自己啓発みたいな言葉や考えばかりが頭に浮かんでくる。現在の生活からの逃避からだろうか、そもそもがつまらん人間だからだろうか。でも諦めてから数時間経ってやっぱり何か書くことにした。noteのエディタを開くだけで東京のことが思い出せて

もっとみる

弱さ芸でやってきた。

明日は就職先の研修場所まで一人で車を運転して行く。働く場所が決まってから、大急ぎで中古車を買って、少しづつ運転の練習をしてきたけれど、不安で気持ちが今もざわついている。ペーパードライバー歴4年かつ、複数の情報を同時に処理するのが苦手な僕は、運転の常識もスキルも欠けている。平坦な道路も全て、怒りのデスロードに見える。今日も信号がない十字路で直進するタイミングがつかめず、判断が遅れ、左からくる車に乗っ

もっとみる
働く場所が決まった

働く場所が決まった

今年も甲子園が終わった。飛びやすいボール疑惑、出場校が打高投低の傾向であったことなど、いろいろな要因があるのだろうが、とにかく「火力半端ねえ!!」な大会だった。高校野球では「春は投手力 夏は総合力」という格言がたびたび使われるのだが、もう「夏は打撃力」でもいいんじゃないかと思った。

でも矛盾するようだが、金属バットの進化や高校球児の筋肉トレーニングの進化によって「夏は打撃力」になるにつれて、「

もっとみる
ヘルシンキの写真

ヘルシンキの写真

ヨーロッパで撮った写真を現像した。あいも変わらず、わけもわからず、撮っているので、大体がひどい出来映えだ。でも「ちょっと色がいいんじゃない?」とか「なんか気に入った!」とか思える写真も少しはある。下手くそといえども、そういう写真を目にすると嬉しさがこみ上げる。フィルムで撮った写真は現像後に初めて見るわくわく感や思い出喚起力がバツグンで、楽しい。

初めてミラーレス一眼を買ったとき、絶対に自分は「カ

もっとみる

cakes連載「一故人」の「日野原重明——「上手に不摂生」で100歳を超える」を読んで鳥肌が立つ。若いときから“「死」に正面から対峙して”生きた人なのだろうと感じた。人の一生を文章でこんな風に描き出すって本当にすごい。https://cakes.mu/posts/17145

ドルスキニンカイに来た

ドルスキニンカイに来た

リトアニア・ドルスキニンカイにいる。「どこやねん」と自分でもつっこみたくなるくらい、ここがどこだかよくわからない。ロンリープラネットにも数ページしか解説がない。「ドルスキニンカイ」というラスボス2つ前の村のような名前と温泉地という二点に惹かれてやってきてしまった。とりあえず、名前のイメージと反してとても穏やかでいい場所だが、特段、ときめきを覚えるものは見つけられない。だって田舎だもの。とても穏やか

もっとみる
ばくぜんの罠

ばくぜんの罠

「なんちゅうか、働いてないと罪悪感にさいなまれるし、お金稼げないし、生活に意義が見えなくなるし、頑張ること見つけられないし、意外にもつらい。けど、働き出したら働き出したで『なーに甘いことぬかしてたねん、昔の俺』ってくらい大変でつらいと思うし、人生ってサボってても、しっかりやっても『つらい』を基本ステータスに置くしかない気がする。はあ嫌だ。でも本当のところ、そんな屁理屈どうでもよくて、しっかりやりた

もっとみる
十年前にうしろめたい

十年前にうしろめたい

足の悪い祖母が、フキをいただいたお返しに、コウザブロウさんの家へ缶ビールを渡してきてくれと言う。田舎のコミュニティにはよくあるであろう、いただきものには必ずお返しものの文化だ。ぼくは気が進まず、あいまいな返事で口を濁す。コウザブロウさんは、幼なじみの女の子のおじいさんなのだ。その子は小学校の同級生で、中学校に入学してから不登校になった。そして中学1年か2年のときに僕はその子から告白されたことがある

もっとみる
敬語からタメ口に移るタイミングわからん

敬語からタメ口に移るタイミングわからん

他人との距離をふと意識しはじめたときには、敬語からタメ口への移り方がわからなくなっていた。あれ、今の友人たちとは赤の他人同士からどうやって仲良くなってきたのだろうか? そんな疑問が頭をもたげるほど、昔は自然に安々とできていたことが、今は難しく、やろうとすれば、ぎこちない。

例えば、思い返すと中学生のときは、そもそも同級生同士で敬語を使うことはなかった。言葉が友情の始まりを取り持つのではなく、空気

もっとみる

フラペチーノの食べ方問題

スターバックスのフラペチーノを飲むとき、上に乗ったホイップクリームだけをまずスプーンで食す。そしてそれから下のフラペチーノにストローを刺して、吸い始める。友人が「うわ、デブ!!」と言う。なぜだ。「うわ、下品!!」ならまだわかる。謝る。でも「デブ」はおかしいだろう。だってクリームだけ最初に食べても、結局、君がグシャグシャにストローで混ぜながら飲んでるそれと、摂取カロリーは変わらないもの。むしろぼくが

もっとみる