瓦
小説をまとめています。長くて十五分ほどで読めます。
練習帖ですが、よければご覧ください。
思い浮かんだことの記録
桜祭りで賑わった 桜並木は初夏の頃 葉っぱは繁り影濃くし 誰の目にもとまらない 桜並木はそんな時期 ひそひそ仲間と囁き合う 「人の心は風のよう 移り変わって戻らない」…
バンクシー展が開催の日を過ぎて一週間ほどが経ったが、客入りはまずまずといったところだった。バンクシーの作品が日本に来日するのはこれが二回目である。一回目はテレ…
春の日溜まりで 色とりどりに咲く 窓辺のパンジーを 体を縮めて見ている 母の姿 強い日差しに照らされ 光り輝く いつかは消えゆくその姿 私がこの世を去るときに この一時…
夢の月の丘は まあ、きれいなバラの花が 咲き乱れていること あのきれいな人の 白く細い腕 穏やかな川が 真珠色に輝いている なだらかな芝の丘の 月の光よ まどろみの中…
春の夕暮れ時 橙色の街灯の下を 勤めを終えた人びとが 緩んだ空気の中を おのおの向かうべき場所へ 歩いていく カフェへ? 愛する人のもとへ? それとも孤独の中へ? …
自由の歌を歌いませんか 涼しい木陰の やわらかな小道で 大きな酒樽を沢山積んだ 馬車の周りに集まって 緑や青のペンキを顔に塗った髭のじいさんや 頬が紅色に染まった女た…
昨夜 春の嵐が 窓のシャッターをうるさく鳴らしていたが 今朝 嵐は去って 静かな朝だ ときおり思い出したような風が 竹林の間に吹き 音を立てている 空は晴れわたり …
水平線と黒く垂れ込めた雲とのわずかな隙間から 真っ赤な朝日が光っている 波は暗い夜の中で音もなく 寄せては返す 私は凍える朝に立ちつくしている ただ眼を透明にして …
私は自分の怒りに対して罪悪感を抱かないようにした。怒りという高貴な感情は喜びの感情などと同様に大切に扱うべきであると考えるに至った。 世間で怒りは不遇に扱われが…
山城の竹林の隙間からお寺の大屋根が見下ろせた。 山を下りお寺の朱の楼門をくぐるとき 門の右隣の空き地の中を 軽トラックが弧を描きながら でこぼこの土の上を走っていた…
泥棒どもはたくさんいる その花菖蒲の葉叢の陰に あの古刹の寺の窯の中に 庭の芝生の日溜まりに あまりに早く 冬から春に季節がめぐるほどの早さで かすめ盗って行く 枯葉…
孤独な夜はJAZZを聞く そう、俺は月明かりに照らされた男 ベージュのトレンチコートの胸ポケットに 秘密のメモ書きが大量に入ってる 大きく開け放たれたステンドグラスの窓…
無限に続く一本道に すみれの花が咲いていた ぼくがその深紫色を 感覚に取り込もうとするとき 後ろから遮ったやつがいた 「馬鹿!そんなものほおっておけ!」 「うるさい!…
怒った顔 悲しそうな顔 歓喜の顔 恍惚とした顔 曖昧な顔 感情は崇高である 感情は顔に現れる 我々は他人の顔の中に人以上の何か―― 歴史上神と呼ばれるもの――を 顔と…
努力する〈べき〉だ 成功する〈べき〉だ 親切にする〈べき〉だ 寛容である〈べき〉だ 優しくある〈べき〉だ 俺はこの〈べき〉にナイフを突き立てた するとそいつは白い小…
手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手を 繋ぐ 手は 私だった
2024年5月21日 17:58
桜祭りで賑わった桜並木は初夏の頃葉っぱは繁り影濃くし誰の目にもとまらない桜並木はそんな時期ひそひそ仲間と囁き合う「人の心は風のよう移り変わって戻らない」夏の間は虫のため大きな日傘を用意する蝉は日陰のその幹で真夏の夢を見続ける桜並木は人知れず生命力を蓄える枝を伸ばして葉は繁り季節はめぐり花は咲く
2024年3月31日 00:46
バンクシー展が開催の日を過ぎて一週間ほどが経ったが、客入りはまずまずといったところだった。バンクシーの作品が日本に来日するのはこれが二回目である。一回目はテレビの昼の番組でも芸能人がいつものごとくおふざけしながら大きく取り上げられた。中でもバンクシーがヨルダン川近くの町の壁に書いた「フラワー・スローワー、フラワー・ボンバー、レイジ、あるいはラブ・イズ・イン・ザ・エア」はバンクシーの象徴的作品とし
2024年3月4日 19:35
春の日溜まりで色とりどりに咲く窓辺のパンジーを体を縮めて見ている母の姿強い日差しに照らされ光り輝くいつかは消えゆくその姿私がこの世を去るときにこの一時も連れて行こうかうららかな春と一緒に
2024年3月2日 14:41
夢の月の丘はまあ、きれいなバラの花が咲き乱れていることあのきれいな人の白く細い腕穏やかな川が真珠色に輝いているなだらかな芝の丘の月の光よまどろみの中でそれは一つになるだろう鏡の破片を一枚の鏡にするように夢よ不在の私をいつも何処へとつれてゆくのだ
2024年2月27日 23:45
春の夕暮れ時橙色の街灯の下を勤めを終えた人びとが緩んだ空気の中をおのおの向かうべき場所へ歩いていくカフェへ?愛する人のもとへ?それとも孤独の中へ? 春の浮き浮きした雰囲気に人びとは溶け合いながら春の夜の一つの情景になっている
2024年2月21日 16:07
自由の歌を歌いませんか涼しい木陰のやわらかな小道で大きな酒樽を沢山積んだ馬車の周りに集まって緑や青のペンキを顔に塗った髭のじいさんや頬が紅色に染まった女たちと一緒にああ、風は青い山に吹くし花吹雪が犬小屋に吹き込んでいる春の歌を歌いませんか今はいっときの悲しみはどこかに忘れて
2024年2月16日 09:25
昨夜 春の嵐が窓のシャッターをうるさく鳴らしていたが今朝 嵐は去って 静かな朝だときおり思い出したような風が竹林の間に吹き 音を立てている空は晴れわたりまるで春が たった今つぼみのようにいきいきとふくらんで花ひらく準備をしているかのようだ
2024年2月14日 04:38
水平線と黒く垂れ込めた雲とのわずかな隙間から真っ赤な朝日が光っている波は暗い夜の中で音もなく 寄せては返す私は凍える朝に立ちつくしているただ眼を透明にして朝がここから開くのを心待ちにしながら堤防の奥まで歩くと巨大なテトラポットが薄明りで神性を帯びている 私を見定めてその判断を先送りするのだろうか海水が私の罪を清めるとは思えないがドドーン――海水が堤防を越えてひたひた
2024年2月5日 19:56
私は自分の怒りに対して罪悪感を抱かないようにした。怒りという高貴な感情は喜びの感情などと同様に大切に扱うべきであると考えるに至った。世間で怒りは不遇に扱われがちである。
2024年2月1日 03:36
山城の竹林の隙間からお寺の大屋根が見下ろせた。山を下りお寺の朱の楼門をくぐるとき門の右隣の空き地の中を軽トラックが弧を描きながらでこぼこの土の上を走っていた「何やってんの?!」と、小学生くらいの弟の方が空き地の端から言った。「地ならししてんの!」と、大学生くらいの兄の方が言って、運転席からこちらを見た。その視線には何やら敵意のようなものが滲み出ているようだった。こちらも相手が嫌
2024年1月29日 23:02
泥棒どもはたくさんいるその花菖蒲の葉叢の陰にあの古刹の寺の窯の中に庭の芝生の日溜まりにあまりに早く冬から春に季節がめぐるほどの早さでかすめ盗って行く枯葉が舞って 気付いた遅し! もう手遅れだった!無花果は熟したがそれは惨めな夢の影色とりどりの小石が転がる浜の永遠の歌
2024年1月27日 01:52
孤独な夜はJAZZを聞くそう、俺は月明かりに照らされた男ベージュのトレンチコートの胸ポケットに秘密のメモ書きが大量に入ってる大きく開け放たれたステンドグラスの窓からトランペットの音が山を越えて流れていく狼男がトランペットの音を追いかけて、今にもその音色に泣き出しそう山の反対側のセレブが沢山住んでいる街の灯は点いたり消えたりして、いつ終わるとも知れない遊戯に人だかりができている
2024年1月24日 20:01
無限に続く一本道にすみれの花が咲いていたぼくがその深紫色を感覚に取り込もうとするとき後ろから遮ったやつがいた「馬鹿!そんなものほおっておけ!」「うるさい!」と僕は叫んだしかしそのスーツ姿のバッタ男は鞄から硝子で出来た容れ物を取り出すとその細長い緑色の触手を伸ばしすみれをむしり取って容れ物に入れてしまっただからぼくの感覚はバッタ男を取り込むとすみれもバッタ男もいなくなって
2024年1月19日 22:57
怒った顔悲しそうな顔歓喜の顔恍惚とした顔曖昧な顔感情は崇高である感情は顔に現れる我々は他人の顔の中に人以上の何か――歴史上神と呼ばれるもの――を顔という形象を媒介にして日々見ているのであろうか。
2024年1月17日 04:01
努力する〈べき〉だ成功する〈べき〉だ親切にする〈べき〉だ寛容である〈べき〉だ優しくある〈べき〉だ俺はこの〈べき〉にナイフを突き立てたするとそいつは白い小さなカタツムリみたいに成り果てた――まるで十字軍のようだ十字軍が行進している赤い国旗を高らかに振りながら見送っている婆さんらがいる子供らは小高い丘から行進の人だかりを眺めているだが、十字軍の行進はこれが最後だなぜって俺
2024年1月13日 02:11
手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手と手を繋ぐ手は私だった