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ガンダムと精神医学: 精神科医がガンダムを医学的に考察!

皆様、こんにちは!鹿冶梟介(かやほうすけ)です。

…ということで(どういうこと?🤔)、今回は精神科医である小生がガンダムを語ります!!

はっきり言うと、今回の記事は無謀です…。

大袈裟な話ではなくガンダムとは単なる「アニメ」の枠にとどまらず、もはや「文化」「哲学」のレベルまで昇華された概念です😤

正直申しまして精神科医の細腕一本ではとても荷が重いテーマなのです…(キリッ)。

こんな書き出しだと"さぞ鹿冶はガンダムに詳しいのだろう…"、と思われるかもしれませんが、自白しちゃうと「ファーストガンダム」以外でちゃんとみたのは「機動武闘伝Gガンダム」だけです😭

こんなガンダム🔰な小生ですが、”ガンダム”に関する精神医学ネタを皆様と是非シェアしたいと思います。

ガンダム上級者からはブライト少尉のように「薄いぞ。何やってんの!」と呆れられるかもしれませんが、シャアのように「見せてもらおうか(以下略)」と期待していただけると幸いです😖


【アムロ・レイの新米の兵隊がよくかかる病気】

Amazon Prime: 機動戦士ガンダム 第12話より引用

まずは機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)第12話「ジオンの脅威」から。

ジオン公国でガルマの国葬が大々的に行われようとするのと同時に、猛将ランバ・ラルがホワイトベース討伐の任を帯びて戦艦ザンジバルで降下してきた。ザンジバルの追撃を振り切ることができなかったブライトは、ひどい虚脱状態のアムロをガンダムで出撃させる。そんな状態のアムロの前に凶悪な影が立ちはだかる。

(アマゾンプライム解説より)

ガンダムにおけるメンタルヘルス関連の鉄板ネタです。

機動戦士ガンダム第12話で主人公アムロ=レイが敵から攻撃を受けているにもかかわらずなかなか出撃できず、同僚パイロットのリュウから顔を引っ叩かれます。

虚脱状態のアムロは面倒臭そうな表情で、「殴らなくたっていいでしょ」と返事をしますが、出撃の準備をしていると「このヘルメットおかしいですよ。苦しいんだ…」などと訴えます。

モタモタするパイロットたちに苛立つブライト艦長に対して、リュウは

実は、アムロが新米の兵隊のよくかかる病気になっているんだ

と答えます…。

このシーンについてネットではアムロは”うつ病”とか”PTSD”では?という意見があります。

アムロの症状を入念にチェックすると「フラッシュバック」「ガンダムに乗ることの回避」「陽性感情の欠如(幸福感、満足感を感じられない」「現実感が変容した感覚」「集中困難」「過剰な驚愕反応」などを認め、このことから「うつ病」というよりは「PTSD」に近い印象があります。

しかし、ご存知のようにファーストガンダムは「1年戦争」の最後の「四ヶ月間」の話です。

もう少し詳しく言うと、アムロ=レイの精神不調の間接的原因となるガルマ=ザビ大佐の死が10月4日(恋人のエッシェンバッハの死亡はその数日後)、そしてガンダム12話のランバ・ラルとの交戦は10月6日から11月5日の間の話です

すなわち、アムロの不調は数日から1ヶ月以内の話です。

従って、PTSDの診断基準「症状の持続が1ヶ月以上」には合致しないため、PTSDも正しい診断ではありません。

症状と持続期間から推測するに、アムロ=レイの診断は「急性ストレス障害(acute stress disorder) 308.3(F43.0)」と診断するほうが妥当と感じます。


↓ガンダムといえば、やはりファースト!


【スレッタ・マーキュリーは自閉スペクトラム症?】

Amazon Prime: 機動戦士ガンダム 水星の魔女 第1話より引用

最新のガンダムシリーズ「機動戦士ガンダム 水星の魔女」からも精神医学ネタを紹介します。

主人公のスレッタ・マーキュリーはTVアニメのガンダムにおいては初めての女性主人公です。

しかも本作はガンダム史上初の学園ものかつ百合もの(?)ということで何かと話題になったそうです😅

...と言うことで、小生も本作をAmazon Primeでざっとチェックしてみたところ(と言ってもシーズン1の最初の数話ですが...)、精神医学的になかなか興味がある作品ですね…🤔

<主人公の吃音>

まず本作品を見て気になったのは、主人公スレッタ・マーキュリーの「吃音(どもり)」です。

吃音とはご存じのように、言葉を発する時最初の一音に詰まってしまうことで、「は、は、は、はじめまして!」とか「ど、ど、どうぞよろしくお願いします!」などと言葉が滑らかに出てきません。

スレッタは学校(アスティカシア口頭専門学園)に来る前は、同世代の友人はおらず、内向的でコミュニケーションが苦手な人物として描かれています。

作中母親の前では吃音の症状はあまりでませんが、苦手な人と喋る時は吃音の症状も強くなるようです。

<スレッタは自閉スペクトラム症?>

吃音という点以外にもスレッタには対人関係に困難を抱えているようです。

前向きで頑張り屋なのですが、内向的で対人関係では”空気"が読めず、皮肉も理解できないため学園内では浮いた存在になっております。

そんなスレッタの特徴をネット上では”自閉スペクトラム症では?”という噂が流れているようです。

"女性+吃音"というガンダム歴代主人公としては異質なスレッタ・マーキュリーは本当に自閉スペクトラム症なのでしょうか?

以下にDSM-5の診断基準をもとに、スレッタの特徴を当てはめてみましょう。

DSM-5における自閉症スペクトラム(ASD:Autism Spectrum Disorder)の診断基準
以下のA、B、C、Dを満たしていること。
A:社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害(以下の3点で示される)
1.社会的・情緒的な相互関係の障害。
NO=> ASDでは他者と興味や感情を共有することが難しく、関心事が自分に集中して一方的に話すことが多いのですが、スレッタは少なくともミオリネや友人たちの気持ちに寄り添う姿勢が見られる。
2.他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)の障害
YES=>空気が読めず、また相手の皮肉なども理解できない。相手の表情を読むことも苦手で、時々相手をイラつかせる。
3.年齢相応の対人関係性の発達や維持の障害。
YES=>前述のように学園内での対人コミュニケーションに問題あり。どことなく、他の学生よりも幼い印象がある。
B:限定された反復する様式の行動、興味、活動(以下の2点以上の特徴で示される)
1.常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方。
YES=>人と喋るときに両手の指先を合わせてモジモジする癖あり。口癖「逃げたら1つ、進めば2つ手に入る」
2.同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、言語・非言語上の儀式的な行動パターン。
YES?=>融通が効かず臨機応変な対応が苦手でパニックになることあり。しかし、同一性へのこだわりとまで言ってよいかは微妙。
3.集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある。
YES=>母親プロスペラとの約束に対する異様な拘りがある。またミオリネとの約束に対しても強いこだわりあり。
4.感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心。
NO=>感覚過敏や感覚鈍麻は認めない。
C:症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。
NA=> ネタバレになりますが、本作品ではスレッタの幼少期は描かれておりません(プロローグの子供は…😱)。
D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。
NO=>重大な障害には至っていない。

まとめると診断基準としては、A項目2つ、B項目2-3つ、C項目不明、D項目非該当となります。

従って、スレッタ・マーキュリーは自閉スペクトラム症ではないと考えられます。

しかし、スレッタは水星で生まれ育ったので、そもそも地球人である我々の診断基準に基づいて診断するのは間違っているのかもしれないですね…。


↓スレッタの愛機はエアリアルという機体だそうです。


【シン・アスカの”複雑性"PTSD】

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