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Low fantasy.

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2019年4月に開催した個展作品を物語とともに紹介します。
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記事一覧

「Low fantasy.」(10)

「Low fantasy.」(10)



「森の庭師」
町を出てXXX日
3番目の辺境、青い森の豊かさは特別に素晴らしかった。
見たこともない草花、樹木が そこかしこに生えている。
深い森の中を歩き進んで数日、突然目の前に現れた美しい花畑で
私は森の庭師に出会った。

「Low fantasy.」(1)

「Low fantasy.」(1)

「物置から見つかった1枚の絵と手描きの地図、おそらく祖母によるものだろう。祖母は ある日突然、一緒に暮らしていた猫と旅に出て、はじめのうちこそ便りが送られてきたけど、やがてそれも途絶え、そのまま帰らなかった。祖母は長い旅の途上、何に出会ったのだろうか。興味を惹かれた私は 祖母の足跡をたどり、地図に描かれた‘彼の山’へ旅に出ることにした〜」

「物置から見つかった絵」
背景の花と見比べるとかなり小さ

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「Low fantasy.」(2)

「Low fantasy.」(2)

「草原の庭師のテント」
町を出てXX日
1番目の辺境、ひろい高原に入り何日か過ぎたところで、
大きなテントにたどり着く。
草原の庭師と名乗る小柄な少女は花柄のショールをかぶっていた。
テントは高原の中を7日ごとに移動しているそうで、
広大な高原の中、たどり着いたのは運が良いと言われた。
ユニコーンは庭師の相棒で名前は宇吉郎という。
走るのがとても早くひろい高原の端から端までを
1日で駆け抜けること

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「Low fantasy.」(3)

「Low fantasy.」(3)

「高原の大ウサギ達」

ひろい高原に生息する大ウサギ達は皆とても面倒見がよく、働き者である。
草原の庭師の仕事は、毎晩 雪のように降り落ちてくる流れ星を追いかけ、
拾い集めることなのだけれど、
実際のところ、大ウサギ達が ほとんど集めてくれるそうだ。

庭師と大ウサギたちで集めた星は、宇吉郎がテントへと運ぶ。
たった一晩で山ほどの流れ星が集まった。
こんなにたくさん落ちてきても、まだ夜空には満点の

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「Low fantasy.」(4)

「Low fantasy.」(4)

「見送る星」
次の辺境、鏡の入江へ向けて立つ日。
草原の庭師と宇吉郎が ひろい高原の端まで送ってくれた。
すっかり日も暮れて 遠くに見える入江に映る星空を見ている2人。

草原の庭師に名前を聞いたけど、
庭師になるためには名前も生まれも捨てなければいけないらしく、
それすら「昔の事すぎて、もう名前も忘れた」とのこと。
彼女の見た目から、ずっと少女だと思っていたけど
一体 どれほどの年月を ここで暮

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「Low fantasy.」 (5)

「Low fantasy.」 (5)

「岬の庭師の番屋」

町を出てXXX日。
2番目の辺境、「鏡の入江」へと向かう海岸線沿いに、番屋を見つける。
番屋は「岬の庭師」と名乗る人物の住まいだった。
庭師は 暖かそうな帽子にコートを着た背の高い、、、
一見では性別の判断がつかない。聞いても良いものだろうか。。
木製の大きなカヌーを持ち上げているのは
相棒のヒグマ、朝永(トモナガ)さん。力持ちが自慢だそう。

庭師は 私の滞在を快く了承して

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「Low fantasy.」(6)

「Low fantasy.」(6)

「岬の灯台」

お世話になっているばかりでは申し訳ないので、
庭師の仕事を手伝いたいと申し出たところ、
「小さな灯台」の整備に一緒について行くことになった。

「岬の庭師の仕事は、入江の見回りと岬の先端にある
小さな灯台を守ることだ。」朝永さんが道すがら そう教えてくれた。
しかし、港があるわけでもなく、船が通る様子もないけれど、
一体どこへ向けた灯なのだろうか。

庭師が用意したカゴの中身には星

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「Low fantasy.」 (7)

「Low fantasy.」 (7)

「鏡の入江」

よく晴れた日の朝、岬の庭師と朝永さんは
必ず入江の見回りに出るそうだ。

朝永さんが、倉庫から運び出したカヤックを
番屋のある岸辺から水面へ浮かべた。
オールを漕ぐのは庭師の方が上手いらしい。
鏡のように風景を映す水面に僅かな波を立てながら
カヤックは進み、静かに入江をめぐる。
それは まるで空に浮かんでいるかのような感覚だった。

見回り中、入江には多種多様な生き物がいることを教

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「Low fantasy.」 (8)

「Low fantasy.」 (8)

「ウミウシ女」

次の辺境へと向かうために、岬の庭師たちと別れ早数日が過ぎた。
延々と続く波の静かな海岸線を歩いていると、
進む先にある岩場に人影を見つける。

近づくにつれ、姿かたちが見えてきた。
なんとも綺麗な女の子達のようだった。
(ようだった。というのは、どうやら人ならざるもののようだからだ。)

しかし様子がおかしい。
ちらりちらりと こちらを見ては意地悪そうに笑い、
コソコソ話をする素

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「Low fantasy.」(9)

「Low fantasy.」(9)

「キイロイオオカミの群れ」

海沿いを離れ、彼の山の方向へ進んでいく途中、
キイロイオオカミの群れと一緒に旅をしている。という人に出会った。
この辺境を旅する人は少なく、偶然に出会うことはとても珍しい。
これも何かの縁だと、彼らとは しばらく道を共にした。

5匹のキイロオオカミたちは、毛並み、背格好こそ似ていて
はじめのうちは見分けがつかなかったが、
数日も一緒にいれば それぞれの個性ですっかり

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