【伊勢遷宮編】エピソード12　大若子ふたたび

第十一代天皇、垂仁天皇すいにんてんのうの御世みよ。

紀元前4年、皇紀こうき657年（垂仁天皇26）。

天照大神あまてらすおおみかみ（以下、アマ）の鎮座地ちんざちを求め、一行は、ある野原に辿たどり着ついた。　

ワッコ「何なんと素晴すばらしい野原じゃ。目弖野めでのと名付なづけようぞ。」　

おしん「こうして、皇女ひめみこ様が愛めでられたので、目弖野めでのと名付けられたんだべ。」　

くにお「愛野めでのとも書くぞ。」　

市主いちぬし「ところで、二千年後の何処いずこになりまするか？」　

くにお「分わからぬ。」　

市主いちぬし「えっ？」　

くにお「まあ、前回紹介された、園相そない神社じんじゃが鎮座ちんざする、三重県みえけん伊勢市いせし津村町つむらちょうの周辺であろうな。」　

アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」　

ワッコ「それだけでなく、円つぶらな小山こやまも有るな・・・。山の周辺は、都不良つぶらと名付けようぞ。」　

カーケ「こうして、都不良つぶらが訛なまって、津村つむらとなったんだぜ。津村町つむらちょうの語源ごげんなんだぜ。」　

カット「では、愛野めでのも津村町つむらちょうの可能性が高いのですな？」　

カーケ「そういうことなんだぜ。」　

更に一行は進んでいった。

すると・・・。　

乙若おとわか「ん？　また、野原が現れましたぞ。」　

オーカ「此度こたびの野原は、沢さわの中に道が通じてますなぁ。」　

ワッコ「では、この野原は、沢道さわみちの小野おのと名付けましょうぞ。」　

カーケ「ところで『ワッコ』？　沢の道とは、陸おかの道かね？　それとも川かわの道かね？」　

ワッコ「大おお伯父上おじうえは、如何いかが思われまする？」　

カーケ「それがしは、川の道だと思うんだぜ。」　

ちね「なんでです？」　

カーケ「なぜなら、あそこに船が見えるからなんだぜ。」　

インカ「あっ！　船が近付ちかづいて来きますぞ！」　

武日たけひ「見覚みおぼえのある船やじ。」　

くにお「見覚えがあるどころではないぞ。あれは、拙者せっしゃたちが乗っていた船ではないか？」　

オーカ「たしかに、よく見ると・・・。」　

市主いちぬし「ん？　なにやら、声が・・・。」　

ワッコ「如何いかが致いたした？」　

市主いちぬし「船から、声が聞こえませぬか？」　

一行が耳をそばだてると、たしかに、声が聞こえる。

そして、よく見てみると、船の上で誰だれかが叫さけんでいる。　

誰だれか「おぉぉい！　おぉぉい！　僕だよぉぉ！」　

ワッコ「だ・・・誰じゃ？」　

乙若おとわか「あれは『ワクワクさん』ですぞ！」　

ワッコ「なに？！」　

ワクワク「そうだよぉぉ！　迎むかえに来きたよぉぉ！」　

大若子おおわくごこと「ワクワク」の姿に、皆みなが歓喜かんきの声を上げる。　

一行「おぉぉい！　『ワクワクさぁぁん』！」×１３　

ワクワク「みんな！　久しぶりだね！」　

ワッコ「良よき宮処みやどころが見つかったのか？」　

ワクワク「当たり前じゃないか。そうじゃなきゃ、こんなとこに来ないよ。」　

ワッコ「そ・・・そうじゃな(;^_^A」　

ワクワク「ところでさぁ。ここにも社やしろを建たてちゃったんだよね？」　

ワッコ「えっ？」　

ねな「その通りよ。その名も、川原かわら神社じんじゃよ。」　

カット「祭神さいじんは、月読命つくよみ・のみことにござりまする。」　

おしん「二千年後の地名で言うと、伊勢市いせし佐八町そうちちょうに鎮座してるぞ。」　

インカ「そこが、沢道さわみちの小野おのというわけか・・・。」　

おしん「んだ。そんでよぉ、『ワクワクさん』がやって来きた川は、宮川みやがわなんだ。」　

武日たけひ「せっかく宮川みやがわを渡わたったっちゅうのに、宮川に戻ってきたち、そういうコツか？」

おしん「そういうことになるな。」　

ワッコ「まあ、良いではないか。それより『ワクワクさん』。良き宮処とは、何処いずこぞ？」　

ワクワク「その前に、伝えなきゃいけないことがあるんだよね。」　

ワッコ「伝えねばならぬこと？」　

ワクワク「大夫たいふの十千根とおちねこと『ちね』様に・・・。」　

ちね「ん？　わてか？　なんや？」　

ワクワク「大王おおきみが、国中くんなか（現在の奈良盆地）に戻って来いって！」　

ちね「はぁ？　なんでや？　そないなこと『倭姫命世記やまとひめのみこと・せいき』には書かれてへんで？！」　

ワクワク「いわゆる、作者の陰謀いんぼうってヤツだね。」　

作者の陰謀とは・・・。

次回につづく