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JW521 荒ぶる神の山

【垂仁天皇編】エピソード50 荒ぶる神の山


第十一代天皇、垂仁天皇(すいにんてんのう)の御世。

紀元前12年、皇紀649年(垂仁天皇18)。

天照大神(あまてらすおおみかみ)(以下、アマ)が遷座(せんざ)を宣言。

御杖代(みつえしろ)の倭姫(やまとひめ)(以下、ワッコ)は、従者たちと共に南へと進み、阿佐賀国(あさか・のくに)に入った。

登場人物一覧表(倭姫の一行)
地図(阿佐賀国)

そして、この地の豪族、建呰古(たけしこ)(以下、ケシコ)が続けて出演するのであった。 

ワッコ「そろそろ、次の宮の名を教えてくれても良いのではないか?」 

カット「さ・・・左様にござりまするな。して、宮の名前ですが・・・。」 

ケシコ「あっ! 阿佐賀の峰(みね)の荒ぶる神を教えておりませなんだな。」 

ワッコ「えっ?」 

市主「荒ぶる神がいると?」 

ケシコ「左様。桝形山(ますがたやま)とも呼ばれる山にて、その荒ぶる神は、百人行くうちの五十人を殺し、四十人行くうちの二十人を憑(と)り殺しておりまする。」

地図(阿佐賀の峰→桝形山)

ねな「じゃあ、吾(やつかれ)たちの一行は『ケシコ』を入れて十人だから、五人に減るってことね。スッキリして、いいんじゃないかしら・・・。」 

おしん「良くなんかねぇ!」 

ワッコ「こうなったら、父上・・・大王(おおきみ)に奏上(そうじょう)するほかない。」 

インカ「奏上とは如何(いか)なる儀(ぎ)にて?」 

ワッコ「荒ぶる神を鎮(しず)めるため、討伐の兵を出してもらうのじゃ。」 

乙若「して、誰を派遣致しまする?」 

ワッコ「ここは国造(くにのみやつこ)である『ワクワク』さんに行ってもらおう。」 

ワクワク「分かったよ! それじゃあ早速、行ってくるね!」 

アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」 

こうして「ワクワク」は、国中(くんなか:現在の奈良盆地)の纏向珠城宮(まきむくのたまき・のみや)に向かい、垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊(いくめいりひこいさち・のみこと)(以下、イク)に奏上したのであった。

地図(纏向珠城宮へ奏上)

ワクワク「紙面の都合で、もう着いちゃったよ。」 

イク「それで・・・『ワッコ』ちゃんが、危ない目に遭(あ)ってるって本当なの?」 

ワクワク「本当だよ! 嘘を吐(つ)いても仕方がないからね。」 

イク「じゃあ、すぐに人数を送ろう。阿倍大稲彦(あべ・の・おおしねひこ)!」 

ワクワク「あれ? 誰も返事しないよ?」 

イク「ん? 阿倍大稲彦! ・・・・・・あれ? 『皇太神宮儀式帳(こうたいじんぐう・ぎしきちょう)』では、阿倍大稲彦が派遣されてるんだけど・・・。なんで返事しないの?!」 

するとそこに、武渟川別(たけぬなかかわけ)(以下、カーケ)と、大稲腰(おおいなこし)(以下、イナコ)の兄弟がやって来た。

系図(カーケ、イナコ)

カーケ「大王? 大丈夫か? この物語では、まだ、阿倍氏(あべ・し)が登場してないんだぜ?」 

イク「えっ? 伯父上?」 

イナコ「そうなんですよ。もうちょっと後に登場する予定だったんですが・・・。」 

イク「叔父上? どういうことなの?」 

カーケ「阿倍氏は、それがしの息子の代から、名乗り始めるんだぜ。」 

イナコ「そうなんですよねぇ。でも、今回のことで早まっちゃいましたね。」 

イク「それで、阿倍大稲彦は、どこに?」 

イナコ「それが、系図を見ても、そんな御仁(ごじん)が見当たらず・・・。」 

カーケ「そこで、名前が似ている『イナコ』を派遣しようと思うんだぜ。」 

イナコ「えっ? 初耳なんですけど? 我(われ)に荒事(あらごと)は向いてませんよ!?」 

カーケ「そんなことは分かってるんだぜ。でも、阿倍氏の誰かが行かなきゃならないんだぜ。」 

イナコ「じゃあ、兄上が行けば良いではないですか!」 

カーケ「それがしのようなビッグネームを間違えるはずがないんだぜ。絶対に『イナコ』のことだと思うんだぜ。」 

イク「とにかく、早く行ってください。叔父上。」 

イナコ「か・・・かしこまりました・・・。」 

こうして「イナコ」が向かったのであった。 

つづく

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