【垂仁経綸編】エピソード12　埴輪誕生

第十一代天皇、垂仁すいにん天皇てんのうの御世みよ。

西暦3年、皇紀こうき663年（垂仁天皇32）7月6日。

大后おおきさきの日葉酢媛ひばすひめ（以下、ひばり）が薨去こうきょした。

ここは、纏向珠城宮まきむくのたまき・のみや。

涙にくれる、垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊いくめいりひこいさち・のみこと（以下、イク）と共に「イク」の妃きさきにして「ひばり」の妹たち、そして、大連おおむらじや大夫たいふたちが話し合っていた。

ちなみに、オリジナル設定である。　

マー「大連おおむらじ？　何なに、言いってんの？！　先年せんねん、大王おおきみが禁きんじられたでしょ！？」　

ニック「せやけどなぁ・・・。やっぱり、先進国として、他国から見られへんのは・・・。」　

バタ子「何度も言いますけど、大王おおきみの詔みことのりですから！」　

くにお「殉死じゅんしが、人々を悲しませることは、十二分じゅうにぶんに承知しょうちしておりまする。されど、任那みまなの豪族たちが、日々、憂うれいておられることは、御存知ごぞんじにござりましょう？」　

あざみ「それって、作者のオリジナル設定でしょ？！　『記紀きき』に書かれてないこと、言いって欲ほしくないんですけど！」　

武日たけひ「じゃっどん、世界せかい情勢じょうせいっちゅうモンも、気にせんと・・・。」　

マー「だ、か、ら、そんなの放ほうっておけば、いいって、言ってるのよ！」　

ちね「放ほうっておくって？　何なに、言ゆうてんねん。そないなことしたら、ヤマトが分裂するんやで？」　

バタ子「分裂？　大仰おおぎょうな言い方だと思いますけど・・・。」　

オーカ「お・・・大王おおきみは、如何いかが、思おぼし召めしにあらしゃいますか？」　

イク「ひ・・・ひばり・・・(´；ω；`)ｳｯ…。」　

カーケ「聞いてなかったのかね？！」　

あざみ「大王おおきみ？　殉死じゅんしは禁止きんし。それで、よろしいですよね？」　

イク「いや・・・大連おおむらじや大夫たいふたちの言うことにも、一理いちり有る・・・。」　

マー「ちょっと！　何なに、言いってんの！」　

イク「でも、殉死じゅんしは、嫌いやだ。」　

ニック「せ・・・せやけど・・・。」　

イク「他ほかの『やり方』を探さがすんだ！　必ず、良い『やり方』が有るはずだ！　皆みんなで考えるように！」　

こうして、大王おおきみから課題が出されたのであるが、良い意見など、なかなか出でて来こず・・・。

翌日か、数日後の朝のこと・・・。

野見のみの宿禰すくねが「イク」の元にやって来た。　

野見のみ「大王おおきみ。おはようござりまする。夜の警護役けいごやくである、宿禰すくねの務つとめ、つつがなく終おえもうしたので、挨拶あいさつに罷まかり越こしましてござりまする。」　

イク「ああ・・野見のみか。おはよう・・・。務つとめ、御苦労だったね。」　

野見のみ「ははっ。では、これにて下さがらせていただきまする。」　

イク「あっ！　そうだ！　野見のみ！」　

野見のみ「は？　如何いかがなされましたか？」　

イク「まだ、野見のみには聞いてなかったね。此度こたびの大后おおきさきの陵みささぎについてなんだけど、殉葬じゅんそうに代かわる、いい『やり方』ってないかな？」　

野見のみ「殉葬じゅんそうに代かわるモノ・・・。要ようは、人が死なねば、よろしいのですな？」　

イク「そういうことだね。」　

野見のみ「では、土つちくれを人ひととしては、如何いかがにござりましょう。」　

イク「土つちくれ？」　

野見のみ「左様さよう。我われの故郷ふるさと、出雲いずも（現在の島根県東部）には、土部はじべと呼ばれる、職人たちがおりまする。この者たちを呼び寄せましょう。」　

こうして、野見のみは、百人の土部を呼び寄せると、埴はにつち（赤くて粘ねばる土）を用もちいて、人や馬、様々な物の形を作り、これを「イク」に献上けんじょうしたのであった。

野見のみ「これよりは、この土物はにを以もって、人に代かえ、陵みささぎに立てましょう。」　

イク「これだ・・・。これだよ！」　

ニック「これが、埴輪はにわの起源きげんなんやで。立物たてものとも呼ばれたみたいやな。」　

バタ子「ただ、円筒えんとう埴輪はにわは、もっと前から有るみたいで、この話は、形象けいしょう埴輪はにわの起源きげんみたいですよ？」　

カーケ「『バタ子』？　これが、ロマンなんだぜ。」　

バタ子「こ・・・これが、ロマン・・・。」　

イク「とにかく、野見のみには、鍛地かたしところを授さずけよう。」　

あざみ「埴輪はにわ製作せいさくの工房こうぼうってことね。」　

イク「そして、土部はじべの氏うじを授さずけよう。これからは、土部はじべの連むらじの野見のみと名乗なのるように。」　

野見のみ「かたじけのうござりまする。」　

こうして、埴輪製作集団が誕生したのであった。　

つづく