【伊勢遷宮編】エピソード5　宇久留

第十一代天皇、垂仁天皇すいにんてんのうの御世みよ。

紀元前4年、皇紀こうき657年（垂仁天皇26）。

天照大神あまてらすおおみかみ（以下、アマ）の鎮座地ちんざちを求め、一行は、伊蘓宮いそのみやに至いたった。

そこで「ワッコ」は、あることに気が付いたのであった。　

ワッコ「あの南の山脈やまなみを見ていたのですが、あちらの方が、ここよりも良よき宮処みやどころが有るように思いまする。」　

アマ「うむ。たしかに・・・。」　

ワッコ「そういうわけで『ワクワクさん』を派遣はけんして、調しらべさせまする。」　

ワクワク「えっ！？　僕が！？　どうして、僕だけ？」　

ワッコ「なぜなら『倭姫命世記やまとひめのみこと・せいき』に、そう書かれておるからじゃ。」　

ワクワク「そ・・・そういうことなら、仕方しかたないね。行ってきまぁす！」　

こうして「ワクワクさん」は、良き宮処を求めて旅立ったのであった。　

カット「ところで『ワッコ』様？　私たちは、如何いかが致いたしまする？」　

ワッコ「うむ。私たちも、良き宮処を求め、次に進もうぞ。」　

カーケ「もう進むのかね？」　

アマ「何か文句もんくでも有るのか？」　

カーケ「そ・・・そんなことは無いんだぜ・・・(;^_^A」　

ワッコ「では、大おお伯父上おじうえたち、大夫たいふの皆様方みなさまがたは、これまで使ってきた舟で、付ついて来きてくださりませ。」　

くにお「姫は、如何いかがなされまする？」　

ワッコ「私たち一行は、小舟で進みまする。」　

ねな「小舟の方が、早く進めるってことね。」　

武日たけひ「大きい方の舟には、雑々くさぐさの神財かむたからや、忌楯いむたてや忌桙いむほこなどが積つまれちょるなぁ。そんげなコツで、動きが遅おそいっちゅうコツか？」　

ワッコ「左様さようにござりまする。」　

オーカ「ちなみに、神財かむたからは神宝しんぽうのことにあらしゃいます。忌楯いむたてと忌桙いむほこは、旅の安全を祈いのるために使う道具にあらしゃいます。」　

市主いちぬし「補足説明、かたじけのうござりまする。」　

おしん「それによぉ、小舟だったら、小川おがわも進めるしよぉ、いいこと尽づくしなんだ。」　

ワッコ「うむ。では、外城田川ときたがわを上のぼって参まいろうぞ！」　

こうして「ワッコ」の一行は、小舟と大舟に分かれて出発した。

そして、しばらく進んでいると・・・。　

乙若おとわか「あっ！　大舟が遅れてきましたぞ。」　

インカ「やはり荷物にもつが多いゆえ、付ついて来これぬのか・・・。」　

カット「それだけではありませぬぞ。ついに止とまってしまいました！」　

ワッコ「えっ？　大おお伯父上おじうえ！？　大夫たいふの皆様方みなさまがた！？」　

一方、大舟の方では・・・。　

カーケ「かなり不味まずいことになっているんだぜ。」　

ちね「どないするんや？！　進まへんで？！」　

オーカ「そのようなこと言われましても・・・。」　

くにお「これでは、御船みふね『宇久留うくる』！」　

武日たけひ「どんげな意味っちゃ？」　

くにお「宇久留うくる・・・すなわち、遅おくれるという意味じゃ。」　

オーカ「下さがっているとも言えますなぁ。」　

カーケ「こうして、宇久留うくるという地名が起こったんだぜ。」　

ちね「二千年後の地名で言うと、何処どこになりますのや？」　

カーケ「それが、さっぱり分からないんだぜ。」　

ちね「聞いた、わてが、悪わるうございました・・・。」　

さて、小舟の方に戻ろう。　

ワッコ「大丈夫であろうか・・・。だんだんと離はなれておるが・・・。」　

ねな「大丈夫よ。」　

乙若「なぜ、そのようなことが分かるのじゃ？」　

ねな「なぜって・・・『倭姫命世記やまとひめのみこと・せいき』が、それ以上、何も書いてないからよ。」　

アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」　

こうして、なにはともあれ、一行は、川を遡上そじょうしていった。

すると・・・。　

インカ「ん？　あれは？　何者かが、立っておりますぞ。」　

ワッコ「え？」　

何者「わしか？　わしは神の子やで。名前は、速河彦はやかわひこやで。地元じもとの皆みんなは『はいこさん』と呼んでるんやで。」　

唐突とうとつに現れた「はいこ」。

一体、どうなるのであろうか？　

次回につづく