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JW549 鹿でも鹿じゃない 

【伊勢遷宮編】エピソード8 鹿でも鹿じゃない


第十一代天皇、垂仁天皇すいにんてんのう御世みよ

紀元前4年、皇紀こうき657年(垂仁天皇26)。

天照大神あまてらすおおみかみ(以下、アマ)の鎮座地ちんざちを求め、一行は、外城田川ときたがわの上流に到達した。

人物一覧表(倭姫の一行)
人物一覧表(五人の大夫)
地図(外城田川)

そして・・・。 

ワッコ「・・・というわけで『アマ』様の鎮座地を求めるとか言いながら、歓迎者かんげいしゃやしろててばかりじゃが・・・。」 

市主いちぬし「そろそろ宮処みやどころが、有るやもしれませぬな。」 

カーケ「その前に、大川おおかわわたらなければならないんだぜ。」 

ねな「大川おおかわって?」 

カーケ「二千年後の宮川みやがわのことなんだぜ。」 

地図(宮川)

ワッコ「では、大川こと宮川みやがわを渡りましょう。」 

インカ「ん? あれは、何だ?」 

くにお「如何いかがいたした?」 

インカ「なにやら、流れてまいりましたぞ。」 

武日たけひ「あっ! あれは、鹿ししししむらやじ!」 

ワッコ「どういうことにござりまするか?」 

武日たけひ鹿ししとは、四本足よんほんあしけもののことっちゃ。同じ字でも、鹿しかのことではないんやじ。」 

カーケ「四本足の獣なら、鹿しかふくまれるのではないかね?」 

武日たけひ「たしかに、鹿しかも含まれるっちゃ。じゃっどん『倭姫命世記やまとひめのみこと・せいき』の記述からは、鹿しかなのか、いのししなのか、くまなのか、おおかみなのか、全く分からないんやじ。」 

くにお「して、ししむらとは、肉のかたまりを指しまする。」 

カット「ようするに、獣の肉が流れてきたと?」 

くにお「そういうことじゃな。」 

ワッコ「とにもかくにも、このようなけがれを目にするとは・・・。これは、良くないことじゃ。ここを渡るのは、めましょう。」 

おしん「このことから、逢鹿瀬おうがせという地名が生まれたんだべ。」 

ちね「二千年後も残ってるんか?」 

おしん「残ってるぞ。三重県みえけん多気町たきちょう相鹿瀬おうかせだ。」 

地図(逢鹿瀬→三重県多気町相鹿瀬)

乙若おとわか「して、これより如何いかがなされまするか?」 

ワッコ「そうじゃのう。もう少し、上流に行ってみよう。渡れるところが有るはずじゃ。」 

こうして一行は、宮川みやがわ北岸ほくがん沿って、上流へ進んでいった。

地図(宮川の上流へ)


しかし・・・。 

ねな「ちょっと! これは、どういうことよ。どこもかしこも、速瀬はやせばかりじゃないのよ!」 

カット「ちなみに、速瀬はやせとは、流れがきゅうところしまする。」 

ワッコ「これでは、川を渡れぬ。どうしたモノか・・・。」 

するとそこに、一柱ひとはしらの神が出現した。 

神「わしか? わしは『真名胡神まなこのかみ』じゃ。『マナ』と呼びなさい。エピソード527以来の登場じゃぞ。」 

ワッコ「あっ! あのときの神様にござりまするか?」 

オーカ「どういうことにあらしゃいます?」 

市主いちぬし飯野高宮いいのたかみや目指めざしていたおりに、出会であった神様にござりまする。」 

マナ「その通りじゃ。なんかこまっているようなんで、てやったんじゃ。」 

ねな「いましが来たら、何か、いいことが有るの?」 

マナ「その通りじゃ。浅瀬あさせを知っていると言ったら?」 

ちね「いてくしかないやろ!」 

アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」 


こうして、一行は、無事に宮川みやがわを渡ったのであった。 

オーカ「われらが渡ったところは『真名胡まなこ御瀬みせ』と呼ばれるようになったのであらしゃいます。」 

カット「三重県みえけん大台町おおだいちょうにござりまする。その後も『三瀬みせわたし』として、利用されたそうです。」

地図(真名胡の御瀬→三瀬の渡し)
三瀬の渡し跡

カーケ「利用された? では、二千年後は使われてないのかね?」 

カット「交通機関が発達しておりますれば・・・。」 

ねな「でも『御瀬みせ』って言い過ぎじゃない?」 

ワッコ「なにゆえじゃ?」 

ねな「神様が教えてくださったからって、おもねり過ぎだと思うんだけど?」 

ワッコ「そうではない。『アマ』様が渡られたからこそ『御瀬みせ』なのじゃ。」 

ねな「なるほど・・・。そういうことね。だったら、いいわ。」 

マナ「なんか・・・複雑な気持ちなんですけど・・・(´;ω;`)ウッ…。」 

とにもかくにも、川を渡れたのであった。 

つづく

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