マガジンのカバー画像

時事

21
運営しているクリエイター

記事一覧

震災の日の記憶

震災の日の記憶

ご訪問頂きありがとうございます。

 今日,2021年3月11日は,東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)から10年の節目の日でした。まずは震災によって犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに,ご遺族の方々にお悔やみを申し上げます。

1 東日本大震災の概要 このブログをご覧の方々にはまだまだ鮮明な記憶かとは思いますが,簡単に災害の全容を振り返っておきます。
 
 震災による死者(震災関連死を含

もっとみる
”国旗を焼く自由”と表現の自由(その2)

”国旗を焼く自由”と表現の自由(その2)

ご訪問頂きありがとうございます。

前回(→前回はこちら)に引き続いて考えていきたいと思います。

1 ジョンソン事件判決後のアメリカ政治 前回みたジョンソン事件に関する連邦最高裁の判決を受けて,ブッシュ大統領(父)(George Herbert Walker Bush/1989-1993)は,同判決を非難するとともに憲法改正を示唆しました(憲法改正案は上院の過半数強の賛成を得たにとどまり,成立し

もっとみる
”国旗を焼く自由”と表現の自由(その1)

”国旗を焼く自由”と表現の自由(その1)

ご訪問頂きありがとうございます。

1 国旗損壊の処罰規定創出? わが国の国旗(日章旗)について,これを損壊することを刑罰をもって規制することを与党が目指す可能性についての報道がなされています(→ニュースはこちら)。
 これに対し,賛成派,反対派双方からSNSを中心に活発に議論がなされています。

 日章旗が事実上わが国の国章として扱われるようになってからの歴史はまだ150年ほどであり,わが国の長

もっとみる
営業秘密の管理~ソフトバンク元従業員による情報持ち出し

営業秘密の管理~ソフトバンク元従業員による情報持ち出し

みなさまあけましておめでとうございます。
更新が滞っておりますことお詫び申し上げます。

1 COVID-19をめぐる社会情勢 さて,令和2年の春からわが国でも深刻化したCOVID-19の感染拡大は,今また第3波といわれる感染拡大期を迎え,1月13日には,新型インフルエンザ対策等特別措置法の緊急事態宣言の対象となる地域が1都2県から1都2府7県に拡大されようとしています。
 特に状況が切迫している

もっとみる
故事に学ぶ日本学術会議問題

故事に学ぶ日本学術会議問題

 ご訪問ありがとうございます。

 前回,日本学術会議の会員任命拒否について,法的側面からの雑感を述べさせていただきました。他方,適法不適法とは別に,当不当の問題は別にあり得るであろうことも指摘させていただいておりました。
 今回は,この,当不当という問題について,少しだけ私見を示させていただきます。

 このブログでは,はばかりながら,中国の古代政治家である公孫僑こと子産のお名前を借りております

もっとみる
日本学術会議の問題雑感

日本学術会議の問題雑感

ご訪問ありがとうございます。

 日本学術会議の会員任命についての問題が世情騒ぎとなっております。今日はこの問題について,少しだけ考えてみようと思います。

1 日本学術会議とは そもそも日本学術会議とは何なのか,日本学術会議法は以下のように規定しています。

第二条 日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させること

もっとみる
リツイートを著作者人格権侵害とした最高裁判決

リツイートを著作者人格権侵害とした最高裁判決

ご訪問ありがとうございます。

 令和2年7月21日,最高裁判所第3小法廷は,Twitterにおいて他の投稿者が行ったツイートをリツイートした投稿が,著作者人格権侵害にあたるとした原審(知財高判平成30年4月25日)に対する上告を棄却し,原審の判断が確定しました(→判決文)。
 SNSの利用者にとってはかなり注意を要する判例であり,今回これについてみてみたいと思います。

1 事案の概要 本件の事

もっとみる
泉佐野市ふるさと納税訴訟最高裁判決(その2)

泉佐野市ふるさと納税訴訟最高裁判決(その2)

ご訪問ありがとうございます。

 去る6月30日,ふるさと納税制度の指定自治体から除外された泉佐野市が国を相手に提起した,不指定取消訴訟の最高裁判決が,第三小法廷から出されました。
 前回に続き,今回は,最高裁の判断についてみてみましょう。

1 判断の枠組み 地方税法37条の2第2項は,「都道府県等による第1号寄附金の募集の適正な実施に係る基準」の策定を総務大臣に委ね,総務大臣は,この委任に基づ

もっとみる
泉佐野ふるさと納税訴訟最高裁判決(その1)

泉佐野ふるさと納税訴訟最高裁判決(その1)

ご訪問ありがとうございます。

 去る6月30日,ふるさと納税制度の指定自治体から除外された泉佐野市が国を相手に提起した,不指定取消訴訟の最高裁判決が,第三小法廷から出されました。(判決文は→こちら) 

 今回はこれについてみてみたいと思います。
 長くなりそうですので,今回はまず,判旨に引用された上告理由及び上告受理申立てまでの経緯についてまず概観してみます。

1 前提事実-地方税法改正(平

もっとみる
東京オリンピック大会エンブレム(パロディと著作権法)

東京オリンピック大会エンブレム(パロディと著作権法)

ご訪問ありがとうございます。

1 東京オリンピックエンブレム問題 東京オリンピックのエンブレムについて,日本外国特派員協会の月刊誌の表紙に描かれたデザインが,著作権侵害にあたるとして大会組織委員会から抗議を受ける事件(→報道)がありました。
 抗議を受けた協会は,その後,掲載デザインを取り下げました(→報道)。

 この件については,表現の自由を理由とした擁護論や,風刺だから目くじらを立てるべき

もっとみる
緊急事態宣言と法治主義

緊急事態宣言と法治主義

ご訪問頂きありがとうございます。

1 学士会と學士會会報 學士會会報という雑誌があります。
 學士會会報は,一般社団法人学士会が発行する会報で,学士会は,いわゆる旧七帝大(北大・東北大・東大・名大・京大・阪大・九大)の卒業生・学生・教員の合同同窓会組織です。

 學士會会報には,毎回,会員諸氏の講演録や論考等が寄稿されているのですが,その中に,私の「違和感」での雑感をより法学的に精緻に説明してく

もっとみる
「9月入学」実施の是非

「9月入学」実施の是非

ご訪問頂きありがとうございます。

学校の9月入学に関する議論や報道がにわかに盛り上がりを見せています。

1 学校休業の現状 現状,多くの地域で学校の休業が5月末まで延長されており,1学期の半分に相当する授業日程が失われています。
 6月1日から授業を再開することができれば,夏休みをすべて無しとし,さらに授業コマ数の増加や,土曜授業の設定等を行うことにより,授業時間を回復することは不可能ではあり

もっとみる
違和感

違和感

 ご訪問ありがとうございます。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策にまつわる法的な問題点について,これまで思いつくままにつらつら述べてきました。

 疑問点はいつも多く,それにも増して,表現し難い違和感が常につきまとってきました。

 その違和感の正体は何なのか…。
 それがようやくわかった気がします。

 結局,新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の枠組みにあるのではな

もっとみる
新型コロナと休業要請と施設名公表

新型コロナと休業要請と施設名公表

 ご訪問ありがとうございます。

1 はじめに 吉村大阪府知事や,西村経済再生担当相発で,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連し,新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」)に基づき,休業要請を行った対象施設のうち,要請に応じていない施設等を公表する旨の方針が示されています。

2 特措法45条について 報道によれば,

吉村知事は記者団に「看過できないものは現地に職員を派遣

もっとみる