子産

弁護士 中尾 司 ミライト・パートナーズ法律事務所代表弁護士(大阪弁護士会) 以前は教…

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弁護士 中尾 司 ミライト・パートナーズ法律事務所代表弁護士(大阪弁護士会) 以前は教育関係の仕事をしていました。法律に関することがらを中心に思うことをつらつら書くつもりです。

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ブログを読むにあたってのご注意

ご訪問いただきありがとうございます。 このブログでは,私が日常感じたあれこれを,書き連ねていこうと思っております。 それは法律に関するものであったり,私の備忘録を兼ねたものであったりするかもしれません。 なお,初めて来られた方は,このブログの記事をご覧になられる前に,必ずこちらをご一読いただきますようお願い申し上げます。 当ブログでは,弁護士である私が,その時その時の関心事などを記していこうと思っています。 こうした当ブログの記事は,あくまでも私自身の経験に基づき,一

    • 震災の日の記憶

      ご訪問頂きありがとうございます。  今日,2021年3月11日は,東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)から10年の節目の日でした。まずは震災によって犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに,ご遺族の方々にお悔やみを申し上げます。 1 東日本大震災の概要 このブログをご覧の方々にはまだまだ鮮明な記憶かとは思いますが,簡単に災害の全容を振り返っておきます。    震災による死者(震災関連死を含む。)は,令和3年3月1日現在で19,747人,行方不明者は今なお2,556人に

      • 『世界の辺境とハードボイルド室町時代』【読書感想文】

        ご訪問いただきありがとうございます。 1 世界の辺境とハードボイルド室町時代という著作 標記のタイトルは,わかる人にはわかると思いますが,村上春樹氏の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を想起させるタイトルです。  私は村上氏の同作が好きですので,これに引き寄せられて書店の店頭で本書を手に取りました。  本書は,アジア・アフリカなどの日本人があまり行かない地域を旅し,これを著作化するノンフィクション作家である高野秀行氏と,日本中世史の研究者である清水克行氏の対

        • 『生物と無生物のあいだ』【読書感想文】

          ご訪問いただきありがとうございます。  学生時代の畏友であり今はご同業のN先生(特に伏せる必要もないかとは思いますが,ご本人の了解を得ておりませんので(笑))の推薦で手に取った本が,本稿のタイトルに掲げさせていただいた福岡伸一氏著の『生物と無生物のあいだ』です。  タイトルからウイルス学の先端知見が書かれているのかなぁと思い読み始めましたが,ちょっとイメージとは違う内容でした。しかし,非常に面白かったです。良い意味で裏切られました。  端的に申し上げると,著者ご自身の体

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          ”国旗を焼く自由”と表現の自由(その2)

          ご訪問頂きありがとうございます。 前回(→前回はこちら)に引き続いて考えていきたいと思います。 1 ジョンソン事件判決後のアメリカ政治 前回みたジョンソン事件に関する連邦最高裁の判決を受けて,ブッシュ大統領(父)(George Herbert Walker Bush/1989-1993)は,同判決を非難するとともに憲法改正を示唆しました(憲法改正案は上院の過半数強の賛成を得たにとどまり,成立しませんでした。)。  また,連邦上下院はともに,遺憾の意を表明する決議を圧倒的多

          ”国旗を焼く自由”と表現の自由(その2)

          ”国旗を焼く自由”と表現の自由(その1)

          ご訪問頂きありがとうございます。 1 国旗損壊の処罰規定創出? わが国の国旗(日章旗)について,これを損壊することを刑罰をもって規制することを与党が目指す可能性についての報道がなされています(→ニュースはこちら)。  これに対し,賛成派,反対派双方からSNSを中心に活発に議論がなされています。  日章旗が事実上わが国の国章として扱われるようになってからの歴史はまだ150年ほどであり,わが国の長い歴史からすればそれほどの年月を閲してきているわけではありません。  とはいえ

          ”国旗を焼く自由”と表現の自由(その1)

          営業秘密の管理~ソフトバンク元従業員による情報持ち出し

          みなさまあけましておめでとうございます。 更新が滞っておりますことお詫び申し上げます。 1 COVID-19をめぐる社会情勢 さて,令和2年の春からわが国でも深刻化したCOVID-19の感染拡大は,今また第3波といわれる感染拡大期を迎え,1月13日には,新型インフルエンザ対策等特別措置法の緊急事態宣言の対象となる地域が1都2県から1都2府7県に拡大されようとしています。  特に状況が切迫していると思われる大都市部のCOVID-19受入病院の医療従事者の方々,患者の振り分けや

          営業秘密の管理~ソフトバンク元従業員による情報持ち出し

          故事に学ぶ日本学術会議問題

           ご訪問ありがとうございます。  前回,日本学術会議の会員任命拒否について,法的側面からの雑感を述べさせていただきました。他方,適法不適法とは別に,当不当の問題は別にあり得るであろうことも指摘させていただいておりました。  今回は,この,当不当という問題について,少しだけ私見を示させていただきます。  このブログでは,はばかりながら,中国の古代政治家である公孫僑こと子産のお名前を借りております。詳細は,当ブログの「はじめに」に譲りますが,この子産には,今回の問題に少し類似

          故事に学ぶ日本学術会議問題

          日本学術会議の問題雑感

          ご訪問ありがとうございます。  日本学術会議の会員任命についての問題が世情騒ぎとなっております。今日はこの問題について,少しだけ考えてみようと思います。 1 日本学術会議とは そもそも日本学術会議とは何なのか,日本学術会議法は以下のように規定しています。 第二条 日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする。  ふむふむ。科学者の「内外に対する代表機関」ですか。「科学者の

          日本学術会議の問題雑感

          リツイートを著作者人格権侵害とした最高裁判決

          ご訪問ありがとうございます。  令和2年7月21日,最高裁判所第3小法廷は,Twitterにおいて他の投稿者が行ったツイートをリツイートした投稿が,著作者人格権侵害にあたるとした原審(知財高判平成30年4月25日)に対する上告を棄却し,原審の判断が確定しました(→判決文)。  SNSの利用者にとってはかなり注意を要する判例であり,今回これについてみてみたいと思います。 1 事案の概要 本件の事実関係はかなり複雑です。  まず,被上告人(一審原告,以下「X」とします。)は,

          リツイートを著作者人格権侵害とした最高裁判決

          泉佐野市ふるさと納税訴訟最高裁判決(その2)

          ご訪問ありがとうございます。  去る6月30日,ふるさと納税制度の指定自治体から除外された泉佐野市が国を相手に提起した,不指定取消訴訟の最高裁判決が,第三小法廷から出されました。  前回に続き,今回は,最高裁の判断についてみてみましょう。 1 判断の枠組み 地方税法37条の2第2項は,「都道府県等による第1号寄附金の募集の適正な実施に係る基準」の策定を総務大臣に委ね,総務大臣は,この委任に基づいて,募集適正基準の一つとして本件告示2条3号(平成31年総務省告示第179号,

          泉佐野市ふるさと納税訴訟最高裁判決(その2)

          泉佐野ふるさと納税訴訟最高裁判決(その1)

          ご訪問ありがとうございます。  去る6月30日,ふるさと納税制度の指定自治体から除外された泉佐野市が国を相手に提起した,不指定取消訴訟の最高裁判決が,第三小法廷から出されました。(判決文は→こちら)   今回はこれについてみてみたいと思います。  長くなりそうですので,今回はまず,判旨に引用された上告理由及び上告受理申立てまでの経緯についてまず概観してみます。 1 前提事実-地方税法改正(平成31年法律第2号)と不指定決定 ふるさと納税に関する特別控除の対象となる寄附金

          泉佐野ふるさと納税訴訟最高裁判決(その1)

          東京オリンピック大会エンブレム(パロディと著作権法)

          ご訪問ありがとうございます。 1 東京オリンピックエンブレム問題 東京オリンピックのエンブレムについて,日本外国特派員協会の月刊誌の表紙に描かれたデザインが,著作権侵害にあたるとして大会組織委員会から抗議を受ける事件(→報道)がありました。  抗議を受けた協会は,その後,掲載デザインを取り下げました(→報道)。  この件については,表現の自由を理由とした擁護論や,風刺だから目くじらを立てるべきではないとの議論と,不謹慎との批判等が交錯する状況であったようにみられます。

          東京オリンピック大会エンブレム(パロディと著作権法)

          講演録「伊達政宗が生きた時代の日本と世界」

          ご訪問ありがとうございます。 1 東北大学名誉教授平川新先生の講演録 前回お示しした學士會会報には,NU7という冊子も同梱されており,ここにも興味深い講演録が記載されていました。  昨年11月2日に東北大学で行われた,同大名誉教授で宮城学院女子大学学長の平川新先生による,「伊達政宗が生きた時代の日本と世界」という講演録です。 2 伊達政宗が生きた時代の日本と世界の要旨 この講演録の中では,16世紀後半から17世紀前半を生きた東北地方の戦国大名,伊達政宗による支倉常長の遣

          講演録「伊達政宗が生きた時代の日本と世界」

          緊急事態宣言と法治主義

          ご訪問頂きありがとうございます。 1 学士会と學士會会報 學士會会報という雑誌があります。  學士會会報は,一般社団法人学士会が発行する会報で,学士会は,いわゆる旧七帝大(北大・東北大・東大・名大・京大・阪大・九大)の卒業生・学生・教員の合同同窓会組織です。  學士會会報には,毎回,会員諸氏の講演録や論考等が寄稿されているのですが,その中に,私の「違和感」での雑感をより法学的に精緻に説明してくれている論考がありました。 2 京都大学大学院法学研究科教授・曽我部真裕先生の

          緊急事態宣言と法治主義

          「9月入学」実施の是非

          ご訪問頂きありがとうございます。 学校の9月入学に関する議論や報道がにわかに盛り上がりを見せています。 1 学校休業の現状 現状,多くの地域で学校の休業が5月末まで延長されており,1学期の半分に相当する授業日程が失われています。  6月1日から授業を再開することができれば,夏休みをすべて無しとし,さらに授業コマ数の増加や,土曜授業の設定等を行うことにより,授業時間を回復することは不可能ではありませんが,6月1日から再開できるかどうか自体不明な状況です。  加えて,7・8

          「9月入学」実施の是非