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【書籍紹介】『平成のヒット曲』(新潮新書) 柴那典 著


0.はじめに

柴那典『平成のヒット曲』を読みました。
その名の通り、平成の邦楽ヒット曲を紹介した本です。美空ひばりの『川の流れのように』から米津玄師『Lemon』まで収録。CD売上枚数や再生回数などの商業的数字ではなく、その時代への影響なども加味した選曲基準となっています。
CD全盛期とカラオケブームによる音楽産業の最盛期、インターネットの発展に伴うCD産業の衰退、CDに特典を付けることで1人複数枚購入が起き、ヒットチャートが崩壊したこと、SNSの躍進によって局地的なヒット曲が生まれる…といった平成音楽史のざっくりした流れを学ぶことができます。


1.感想

私が平成生まれなこともあって、まさに懐かしい曲のクロニクルでした。90年代のモーニング娘。「LOVEマシーン」が入っていないなど、少し残念な所はありますが、それだけ音楽産業が強い時代だったのでしょう。
森高千里の話も面白かったですね。
「いくつになったらオバさんだと思うか」
という問いに対し、
「年齢に関係なく、自分でそう思った瞬間からオバさんだと思う」
と答えた、という話が興味深かったですね。確かにそれは言えてるかもしれません。
「ハナミズキ」や「小さな恋のうた」のように聴いたことはあるが、どんな経緯で作られたのか知らない曲の裏話も書いてあります。初耳でしたね。

他にも、指原莉乃の初センター曲「恋するフォーチュンクッキー」や「逃げ恥」のエンディング「恋」、初音ミク「千本桜」なども解説。曲名を聞くだけで当時が思い出されます。と同時に、その曲が当時の世相をどう表しているかを解説してくれるので、実に面白い。
最後の「Lemon」の解説に到達すると、
「ああ、平成が終わったんだなあ」
と実感し、少ししんみりとした気持ちになりますね。
知らない曲、知らないエピソードが多数あり、とても楽しく読めました。


2.おわりに

年を取ると若い頃に聴いていた曲ばかり聴くようになり、新しい曲を聴かなくなる、とよく言われます。というよりも、実際にそうなる人は多そうです。新しい音楽を聴くことは、エネルギーの要る営みなのかもしれません。ある程度は仕方ないかもしれませんが、あまりに度が過ぎると老害になる恐れがありますね。「最近の曲は薄っぺらい」とか、先入観で判断してしまうかもしれない(昔から薄っぺらい曲なんて山ほどある、というか大半はそうなのでは?薄い濃いより楽しいかどうかこそ、重視すべきかも)。
そうならないためにも、歌謡の世界がどんな風に変化し、社会のあり方、考え方はどう変わっていったのか、その歴史を辿ることで現在の音楽を再定義し直す。それにより、現在の音楽がどんな文脈の上に成立し、何を表現しようとしているのかを考える。そうすることで、「最近の曲はつまらない」から「最近の曲も悪くない」に変わるのではないでしょうか。

まあ、そこまで考えずとも、単純に懐古趣味で読むのもおすすめな一冊でした。
それでは!

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