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先にお飲み物お伺いしましょうか?/ご注文はいかがなさいますか? 第903話・7.15

「先にお飲み物お伺いしましょうか?」
 居酒屋の店員が注文を取りに来たが、平良は「ち、ちょっと待って、もうすぐ、あ!」途中まで言いかけて突然立ち上がった。視線を入口に向けて手を上げる。「おう、泰ゾウ!俺も今来たところだ」入口から入ってきた泰羅も平良を見つけ「平ちゃん、ごめん、予定していた新幹線1本乗り遅れちゃって、悪かった」と手を頭の後ろに置きながら、平良の席に向かう。
「早速だが、ドリンクを注文しよう。とりあえず生ビールでいいか」「ああ、そうだな。どこのメーカーだ」泰羅は平良の席に座ると早速ビールの銘柄を確認。「あ、いいよじゃあ2杯お願い」
 ふたりのやり取りを黙ったまま、ある意味存在感を消していた店員。「生ビールふたつですね。少々お待ちください」というと、すぐに厨房側に戻っていく。

「平ちゃん、今回は急だったけど半年振りか」泰羅は平良に話しかける。「そうなんだよ泰ゾウ、来週から俺、和歌山支店に行くことになったからな、せっかく泰ゾウが転勤から戻ってきたのに入れ替わりだな」平良と泰羅は同級生。漢字は違うが、同じ読み方である。ゆえにお互い「泰ゾウ」「平ちゃん」と呼び合っていた。

「はい、生ビールです」慌ただしくジョッキをふたつ持ってきたのは先ほどとは別の店員だ。この日の居酒屋は週末らしく忙しい。先ほどの店員は入って間の無いバイトのようだが、こちらはベテラン店員であることは見た目からわかる。主力で働いている為か、さっとジョッキふたつをテーブルの片隅に置くと、すぐに別の客の注文のために立ち去った。「じゃあ、再会を祝して」「カンパーイ」平良の音頭で泰羅がジョッキをぶつける。そのまま口の中に入る黄金の液体は、先に店に来た平良より、泰羅のほうが早く口の中に入ったようだ。口を動かしながら入り込んでいく黄金色の液体。上に浮かんだ白い泡の下から次々と中に入っていく。数秒後ジョッキがテーブルの上に戻った時にはどちらのジョッキも半分以下。

「やっぱりビールはうまいな」と平良は料理のメニューを見る。「さて、やっぱり造りかな」とつぶやくが泰羅はそれを阻止。「やめておこう、俺さっきまで魚の美味しいところいたし」「あ、そうか」平良も思わずつぶやく「俺も来週から和歌山の沿岸部だからな。魚はやめよう。じゃあ何する」平良は泰羅に選んでもらうことにした。泰羅はメニューを見る。ここで、ふたりが気付かぬうちに影が現れた。先ほどの店員だ。そして
「ご注文はいかがなさいますか?」


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