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怪談篇|欲張りのアウチとアフリカ食文化 【新人読書日記/毎日20頁を】(25)

「ブッシュマンの民話」、181-200頁、読了です。

今回は頭の後ろに口がある怪物の怪談です。江戸時代の奇談集『絵本百物語』にも容姿の似たような妖怪がいます。二口女といい、後頭部にもう一つの口を持つという女性の妖怪です。罪を犯した人が妖怪になるという因果応報の意味を含めるキャラクターです。欲張りで村の人に殺されてしまうアウチの話にも因果応報といった意味があると思います。狩人たちからもらった獲物に満足できず、残りの分まで全部食べてしまい、妖怪だと村民に気づかれ、死ぬ運命になります。

また、文の中に語られている現地の人の暮らし方、食文化など初めて知ることが多くて面白いです。カラハリ砂漠の細かい砂に熾(おき)を混ぜて豆やスイカの種を煎ることも、熱い熾(おき)と灰の中に動物を丸ごと埋め込んで、蒸し焼きにすることも、鉄鍋が入り込むまでのブッシュマンの生きる知恵がわかります。

ナンテの豆を熾火と灰で煎る 田中二郎・撮影


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今日もお読みいただきありがとうございます。
食文化といえば、農業を忘れてはいけないですよね。現在まで続くアフリカの農業を知るには、こちらの新刊がおすすめです。

私たちが暮らす現代産業社会の源流は,古代の食料生産革命から生まれた「アグラリアン社会」(農業社会)にある。すなわち高い農業生産性を誇るが,その生産法は大量の水と肥料を必要とし,しかも環境変動に対して極めて脆弱な単作(モノカルチャー)が卓越する。この「アグラリアン社会」に由来するシステムと思考が,豊かな森林を破壊し地球規模の環境危機を引き起こしている。ではどうすればよいのか。食料生産革命を経験しない「自然社会」として多様で豊かな農と食を育んできたアフリカに学ぶことで,精神のモノカルチャーと化した現代社会の行き詰まりを解決する術を探る。

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