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レントよりゆったりと〔随想録〕

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#詩的

きょうのおみくじ

きょうのおみくじ

 昨日は初詣へ。その足でアウトレットに行き、本当に欲しいものを1点だけ探して買う、というささやかな楽しみを満喫しました。

 2019年、家人は大厄ということでお祓いもしてきました。悪いものを全て落としきったところで[おみくじ]を引いたところ、なんと家人には大吉が、僕には凶がでました。世間には辛辣な運勢を占うおみくじを提供して、身も心も引き締めてくれる神社仏閣もありますが、参拝したところはそうい

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その庭木を眺める瞬間は

その庭木を眺める瞬間は

フリーランスの職場はあちらこちらに散らばっているので、それぞれ地域特有の魅力を知れて得だと感じることが多い。

月曜午前の職場は閑静な住宅街の真ん中にある。 おおむね12時には仕事を終え、次の職場に移動しようと車を走らせる。
決して高級住宅街というわけではない。新興でもない。全体の雰囲気や家屋の劣化を見れば、2、30年前くらいに開発された場所ではないかと推測する。

先日、その住宅街の庭がどれもこ

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「カースピーカーより流れてくるもの」
『レントよりゆったりと(随想録)』
https://scraiv.com/n/1548231935694

エッセイ「そのアンティークが輝くのは」
『レントよりゆったりと(随想録)』
https://scraiv.com/n/1548163236388

日光浴

日光浴

 月に二度、木曜の休日を用意した。

 冬の朝には、起きたらすぐにベッドルームのカーテンを全開にする。なかなか拭く暇もなく、土埃でコーティングされた窓。そこに陽が差し込んでも、冬の日差しはほんの少し頼りなくて、様々な人の営みに負けてしまいそうだ。

 今日は曇りだった。雲たちさえ、人の味方をするのだろうか? 僕はベッドの上に陽の当たる場所を見つけて、そこに寝転がった、仰向けに。そして読みかけのアー

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とある塔の頂で

とある塔の頂で

 遠く隔たっているようで、すぐ辿り着ける国の、離れているようで、傍にある塔の話。

 聞こえるか、摩擦で上げる雄々しい叫びが。見えるか、対比が示す猛々しい建造が。そうだ。上へ、上へ、上へと積み上げてきた塔だ。烈しさゆえに、物々しくも濃霧に隠された、輪郭と鋭角の象徴だ。

 こんな伝説がある。塔の最も高いところに剣を突き立てた瞬間のこと。稲妻が龍の如く天へと昇り、分厚い暗雲をつんざく、と。霧が晴

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とある泉のほとりで

とある泉のほとりで

 遠く隔たっているようで、すぐ辿り着ける国の、離れているようで、傍にある泉の話。

 立ち込める霧は視界の全ては遮らない。霧は、泉のまわりにある原生林や山々や、その輪郭と色合いをうまく柔和させている。目の前の光景をむしろ美しく、ただ美しく見せ、旅人らを妖しげに誘っていた。
 霧と凪は仲良くしていた。ここでは晴れやかな陽気よりも、閑寂とした空気の方が似合うみたいだ。快活な太陽が照らせば、すぐさま光が

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