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リビアで起こっていることを、これ以上ただ見ているだけではいられないから

「普通の人びとは、また国が一つになることを望んでいて、それが自分たちの希望なんだ。」
これは、リビア人の友人が以前わたしに語った言葉である。

今、リビアで起こっていることを目の前に、わたしはこの友人の声にどのように向き合ったらいいのかをずっと考えている。

考えても考えても、答えは出ない。
だけど、一つだけわかることがある。
それは、リビアで起こっていることを、これ以上ただ見ているだけではいられない、ということだ。


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リビアで今、起きていること

北アフリカに位置する国、リビア。
2011年2月に、いわゆる「アラブの春」が波及し、41年間続いたカダフィによる独裁体制が崩壊した。

体制崩壊の後、一時は民主的な国づくりに対する希望が高まった。だが、その試みは難航し、今日まで混乱が続いている。

そんなリビアでは、現在二つの政府が正統性を争い合っている状態にある。
一つは、首都トリポリを拠点とする国民合意政府(GNA)。2015年に国連仲介のもと作られた政府であり、現在、国際社会より正式なリビア政府として認識されている。
そしてもう一つは、東部の都市トブルクを拠点とする政府(HoR)。こちらは2014年の選挙によって成立した。2015年にGNAが成立した際には、HoRは協力をすることで合意したものの、その後はGNAを承認しない姿勢へと転じている。

わたしは専門家ではないですが、一通りカバーはできているはず。
英語でしたら、BBC newsの記事もわかりやすいです。


そして今月初め、まさに二週間ほど前のこと。
HoRを後ろ盾とする、ハフタル将軍率いる「リビア国民軍」が、首都トリポリへ向かって軍事侵攻を始めた。
尚、「リビア国民軍」という名前であるが、HoRの後ろ盾のもと、自主的に国民軍の名を名乗っているだけである。正式な国軍ではなく、軍事組織に近い。

GNA側もこれに対して応戦を続けるなか、現在もハフタルの勢力は刻一刻とトリポリへと歩みを進めている。
地上での闘いだけでなく、空からの攻撃も行われ始めた。昨晩もトリポリ近郊で空爆があり、暴力は激化の一途を辿っている。

ハフタル将軍の指揮下では、市民や医療従事者に対する攻撃も行われていることが確認されている。これらの行為は、国際法で禁じられている戦争犯罪だ。

この衝突により、1.8万人が故郷を離れ、避難を余儀なくされているという。
そして、残る人たちはいつ自分の身に降りかかるかわからない暴力、そして死への恐怖と隣り合わせの暮らしをしている。


それでも、声を上げる人たちがいる

命の危険にさらされながらも、トリポリをはじめとした都市では、人びとが集まり、ハフタル将軍や、ハフタルを支援しているとされているフランス、UAE、サウジに対して抗議の声を上げ続けている。

その姿は、まるでアルジェリアとスーダンの市民に続くのが、我われであると訴えているかのようでもある。

その他にも、こうした環境下でも日常を送ろうとしている人たち。
ソーシャルメディアにおいて、リビアで起きていることを命懸けで発信する人たち。
国境を越えて、移住先で声を上げている人たち。

勇敢なリビアの人たちが、今、暴力や恐怖と対峙し、正義と平和を求めている。


わたしたちは、今すぐ態度を改めるべきだ

翻って、わたしたちはどうであろうか。
こうした人びとの声を、聞くことができているのだろうか。

リビアの未来を決めるのは、他の誰でもなくリビアの人たちであるべきだ。
だが、もし国際社会にいるわたしたちが、見て見ぬふりをすることによって、不正義に消極的にでも加担しているのであれば、わたしたちはその態度を今すぐ改めなければならない。

人道的介入なのか、戦争犯罪に問うことなのか、資産凍結なのか。
人間を殺している集団に対する武器供給や支援をやめることなのか。
あるいは援助の拡充とか、国際社会がより声を大きくすることなのかもしれない。
選ばれるべき手段は様々であろう。

だが少なくとも、見ているだけでも、いくつかの国がそうしたように、ハフタル将軍に対する非難声明を出すだけでも、もはや不十分である。

そんなことをしていても、人の命は奪われ続けるだけだ。


一人の行動も、世界を変えることができる

ここまでの絶望的な状況の中でも、わたしのもとには、リビアの人たちの声が届いている。

わたしにできるのは、それを日本語で伝えること。
そして、ともに正義と平和を求めること。


スウェーデンの高校生であるトゥーンベリ・グレタさんは、気候変動に対するアクションを求め、一人で学校を休んで国会の前で座り込みを始めた。
今、この動きは世界中へと広まりつつある。

日本でも、元山仁士郎さんが対話とハンガーストライキを行い、辺野古基地建設を巡る県民投票の全県実施に大きく寄与した。

これらの人たちが向き合ってきたのは、これまで、どんなに政府や国際機関の場で"懸念"されていても、大きな進展を見せることのなかった問題だ。
たった一人の行動が、それらの解決へ向けた大きな推進力となったのである。
これは、わたしにとって大きな励ましとなり、勇気を与えてくれるものである。

わたしは国家権力の中枢にいるわけでも、問題の解決策を一瞬にして提示できるわけでもない。
だけど、そのようなことは関係ない。

誰かが始めなければ、何も始まらないから。

今、世界が変われば、まだ防ぐことのできる悲しみがあるかもしれない。
もう、ただ見ているのはやめにしましょう。


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ヘッダーは、リビアに住むヒバ・シャラビさんの作品。
ヒバさんはトリポリにおける文化遺産の保護がされていない状況を危惧し、数年前よりSNSなどで発信活動を行っている。

そしてその声は、リビア国内だけではなく、国際社会に対して向けられている。

リビアだけではない。
シリアで、イエメンで、この8年ほどで何が起こってきたのかを見ても、わたしたちはまだ気づかないのだろうか。
もう十分すぎるのではなかろうか。

今、この瞬間に危機にさらされているのは、まぎれもなくわたしたちと同じ人間の、命と尊厳なのに。


2019.04.18
Minori.

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