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ジロロモーニ

ジロロモーニが睨む。
今から私の貪欲な食欲のトッピングにされる運命に有る彼は、何故か強気の視線を私に向ける。

私は考える。
怖くなはないのだろうかと。

私が朝食のサラダに、間食の鯖缶に彼をふりかける度に彼は減る。
よくわからないが彼は、私に雑に扱われ存在を蔑ろにされるにつれて表情を柔和にさせた。

ジロロモーニの量が半分になりなった時、彼の年齢もまた半分若返った。
彼はハンサムで、たっぷりの脂質から成るカロリーと栄養を含んでいた。

私は彼が美味しかったからあらゆる場所に彼を連れていき、色々な食材と番わせた。

彼は全てのパートナーと相性がよく、プレイボーイだった。
私は自信に満ちた、彼自身のパケージデザインはなるほど、功をなしていたのだなと関心した。

ジロロモーニが100mlをきった時、私は彼の最期の相手を誰にしようか考えた。
私は彼が最高のマリアージュを経験して終われるよう協力した。
彼の最期にふさわしい候補をPCにタイプし、言語化しながら可能性を探るように文字に起こした。
だがそうした行為は虚しく、候補は一向に現れなかった。
私のタイプは目的地につくことなく、意味もなく乾いた音を私とジロロモーニが存在する空間に響かせただけだった。

無意味な行為に疲れた私は原点に戻り、右脳を働かせ直感の力を持ってして彼を看取ろうと試みた。

タイピングを辞め、存在価値を持つことがなかった食材リストを惰性で保存すると、PCと共に目を閉じた。
私はそう長くはなかったけれど、しっかりと彼のパートナーを考えた。
けれども私の右の脳は左の脳と同じように鈍く、彼の伴侶を見つけ出すことが出来なかった。

全てを諦め、時の解決に逃げた私が目を開けると、
そこには無くなったジロロモーニが横たわっていた。

プレイボーイな彼は誰と合わさることもなく、孤独に死んだのだった。
彼のことを思いながら、コンビニで買ったハイボールに侵されタイピングに夢中になる私の、右手だか右肘だかに殺されたのだ。

閉じたPCの傍らで横たわる、無念の死を遂げたジロロモーニが私を睨んだ。
鋭い眼で睨まれ、弔いの気持ちを喪失した私はおもむろに、彼の身体を反対に向けた。

私の右手に、彼の脂ぎった血が纏わりついた。


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