理生

書くことは、消化です。 写真は"中耶 莉佐"の名前で出しています。

理生

書くことは、消化です。 写真は"中耶 莉佐"の名前で出しています。

最近の記事

Mutually 3

* 「ノイマンさん、さっき後ろに連れてた女の子…、誰です?」 喰いかかってくるサイの目線から気を抜いたら逃げてしまいそうになる。 「あれ…?サイは知らないのかい?彼女は、アークエンジェルクルーの、アリサ・バーデン二等兵だ。ミリアリアの後輩だそうでな。」 予想以上にナチュラルな演技が出来た、と我ながら得意げになったのも束の間。 「知らないんですよ。ミリィと一緒にいるようになったのは僕もキラもカレッジに入ってから。それより前の知り合いは、トールにしか分かりません。だから、聞いて

    • Mutually 2

      * 「へぇぇ〜。じゃあ、大尉はもともと操舵士として配属されたわけじゃなかったんですか。」 「本当に、偶然。たまたま。」 初めは状況に飲まれて上手く会話が出来なかった2人だったが、ノイマンがアークエンジェルに乗るまでの長い昔話をしている間に次第に慣れ、椅子に腰かけたアリサと、ベッドに腰掛けたノイマン、互いに向かい合って話せるようになっていた。 「あの時上官命令で強く言われてなかったら絶対にあの椅子には座ってないだろうな。」 ノイマンの脳裏に、今は亡きナタル・バジルールの顔

      • Mutually

        (※こちらは夢創作小説です。 原作に登場しない架空のキャラクターが登場します。 時系列は原作に対して正確でない場合があります。) -彼女に初めて出会ったのは アークエンジェルの食堂だった。 「なぁ、ノイマン。おまえ最近、巷でなんて呼ばれてるか知ってるか?」 同僚のチャンドラが左肘でつつきながら言う。 「そういうのは周りが言うだけで、俺には相応しくないよ。」 心の底からそう思っている。 死になくないから避ける。ただそれだけだ。 軍人のくせに銃も構えたことがない自分が そのよ

        • 海の見える街 (あとがき)

          実に18年振りの 1つの作品を完結させるという 約2ヶ月間の旅でした。 このように、 インターネット上に自分の書いたものを ポストするのは今回が初めてです。 どうも、はじめまして。 理生です。 いろんな名前で、 撮った写真をポストしていたり 過去にはシンガーソングライターもどきでもありました。 演劇を通して表現というものに 高校生の頃から携わってきたaround40です。 プロフィールにも書いてあるとおり 私にとって書くことを含み 表現をする(表に出す)ことは"消化

        Mutually 3

          海の見える街 (14)【最終話】

          目の前に座る上品な老人は、暖かい紅茶を飲みながらひたすらに自分が話し出すのを待っているようだった。 「あの…」 あなたの事を教えていただけますか、と老人はそれだけ言って口を閉じてしまった。 まるで面接のような空気感が居間に漂っている。 「名前は、漢字で色の白と書いて、しろ と言います。歳は今年二十一になります。」 それ以降、それに相槌を打つわけでもなく、老人はただ紅茶を啜っている。 「…あまり、自分の事を仰りたくないのね。」 老人が口を開いたのはしばらく沈黙

          海の見える街 (14)【最終話】

          海の見える街 (13)

          翌日、土曜日の朝。 来島者を迎えに来た三人は、降りて来た人の【人数】に絶句した。 治の言った”もうワンアクション”は意外にも早くやって来た。 「あれ?二人来る予定だったの?」 「え?治、二人になったの?」 「…。」 治は返事もできなかった。船から降りて来た内の一人を、よく知っていたから。 「裕、悪い。お客さんを頼む。」 駆け出した治を一瞬ポカンと見つめたが、残された二人は瞬時に状況を理解した。 治の妹がやって来たんだ。 「おはようございます。Shiroさんですか?」 船

          海の見える街 (13)

          海の見える街 (12)

          季節は夏を越え、短い秋をも越えて冬に差しかかろうとしていた十一月。 僕は突然、裕の家に呼ばれた。 「見学?」 「うん、まぁそんな感じ?どういう所ですか?って聞かれたけん、一回来てみたら?言うてみたら行ってみたいって。」 裕が管理しているこの島のいろいろを発信しているアカウントに一件のコメントが寄せられたらしい。 後に僕がそれを引き継ぐことになるので、裕は僕に任せたいと言って呼ばれたのだった。 「性別とか歳は分かるの?」 「歳は二十一やと。茜さんよりさらに歳下やね。性別は向こ

          海の見える街 (12)

          海の見える街 (11)

          「ハルー!」 爽やかに吹く風の中を、茜さんが走っている。 見覚えのある浜辺、辺りに僕たち以外は居ない。 茜さんの屈託のないその笑顔に、僕はなぜか胸を痛めた。 こんなにも幸せそうに笑う茜さんに、僕は薄っすらと苛立ちを感じていることに気づく。 こちらに手を振り、近づいてくる彼女を力一杯突き飛ばすイメージを見る。 やりきれない感情を手に握る。 僕の傍に誰かが立っている感覚を覚えた。それが誰なのか、僕はわからない。 ただ、どこか遠い昔の、自分の感覚なようにも思える。 嬉しそうに僕

          海の見える街 (11)

          海の見える街 (10.5)

          ふと、目が覚めた。 まだ辺りは真っ暗だった。 自分がしがみ付いて寝たはずなのに、いつの間にかハルが自分にしがみ付いている。 常時気怠そうにしているけど、寝ているハルはさらにもさっとしていて、何だか可愛かった。 ハルの頭の向こうにある携帯に手を伸ばして、画面を点けると午前三時を少し回ったところだった。 メールが五通も来ている。全部裕くんからだった。 五通もメールを送ってくるくらいなら、この部屋のドアをバンバン叩いてでも来て欲しかった、というのが私の正直なところだった。 たぶん

          海の見える街 (10.5)

          海の見える街 (10)

          「へぇ、手持ち花火とか懐かしいなぁ。」 受け取った荷物を運び潮風に戻ると、玄関口で友瀬さんが僕らの帰りを待っていた。 茜さんは嬉しそうに花火を抱えて車に乗っていたので、降りた途端にそれは友瀬さんの目に入った。 「今日が本土の花火大会だって、僕知らなかったんですよね。」 また、別の日にでも、と言いかけると 「今日は風も弱いし夜も天気がええ。明日からしばらく雨みたいやけん、今日やりましょうや。」 と、友瀬さんに遮られた。 「船のおじさんに花火大会は十九時半からだって教えてもらいま

          海の見える街 (10)

          海の見える街 (9)

           僕が潮風にやって来て、二ヶ月ほど時が経過した。 僕は毎日、朝七時に体育館にやって来て、ヘンデルの調子の良い鍛冶屋を弾く。 まるで某有名アニメーション映画の主人公(トランペットを吹く少年)のように。 すると、眠気まなこを擦りなから茜さんが起きてくる。 五分近くある曲の間に杏香さんがやって来て、弾き終えた時には体育館の隅で聴いていることもあった。 この曲はメインのフレーズをアレンジを加えながら六周繰り返す構想をしてる。 茜さんは五周目が好きらしく、よく六周目に入って体

          海の見える街 (9)

          海の見える街 (8)

          「裕くんと咲生は、二人で車で迎えに来てくれた。」 部屋に戻ると、茜さんはベッドに腰掛けて話し始めた。 「咲生は裕くんにベッタリくっ付いてた。そのまま私に一生懸命話しかけて来た。ほんと、一生懸命。」 「一生懸命、って言うのは?茜さんが僕にやったように無理にキャラクターを作って、という意味?」 僕の問いに、茜さんは少し納得行かなそうな顔をしたが、しばらく考えて、まぁ、同じかもね。と言った。 「私の場合はいい子に見せようみたいな気持ちが一番大きいんだけど。人に嫌われたくな

          海の見える街 (8)

          海の見える街 (7)

          「裕はこれから、たくさんの人の不安を取り除いて、すくってあげられるよ。」 咲生が最後に自分に言った言葉は、咲生の意図に反して完全に俺を縛り付けていた。 タバコに火をつけて軒先に立つと、学校の方からピアノの音が聞こえて来る。 全身を冷たいものが駆け巡って、ゾワっと鳥肌を招いた。 咲生が居なくなってから鳴らなくなった音だ。 咲生は、この島生まれの同級生で俺の幼馴染だった。 今は潮風となっているあの学校に一緒に通っていた。 面倒見が良くて、誰に対しても分け隔てなく優しく

          海の見える街 (7)

          海の見える街 (6)

          「時が止まってる、か。なるほどね。」 杏香さんから聞いた話をすると、茜さんは苦笑いを浮かべて、でも何だか納得したように腕を組んで頷いた。 話をする中で、曽田さんが、曽田さんの、と言っていると、 「さっき言ったじゃん!私のこと苗字で呼ぶ覇気のない奴に似てる!ヤダ!」 と言うので、僕は彼女のことを茜さんと呼ぶことにした。 「さん、を付けるあたりが、やっぱり教室の一番後ろの席でメガネかけてる感じの奴だな…」 とか何とか言っていたけれど、それでいいと言ってもらえた。 僕のことはハルと

          海の見える街 (6)

          海の見える街 (5)

          今の僕が始まったのは、知らない、病院の天井からだった。 なんで自分がそこにいるのか、どれだけ考えてもわからなかった。 なんなら、今でもはっきりわからない。 目覚めた僕を見て、父も、母も、妹も泣いて抱き合っていた。 程なくして医者や看護師が何人もやって来て 僕に付けられたいろんな装置を確認したり、さらに何か装置をつけたり。 わけがわからない慌しさの中で医者が僕に問いかけた。 「自分の名前はわかりますか?」 深川 治です。 「ここにいる人達がわかりますか?」 父

          海の見える街 (5)

          海の見える街 (4)

          曽田さんは、友瀬さんに抱き上げられて帰ってきてから、その後三時間眠り続けた。 友瀬さんの話だと、昨夜ほとんど眠っていなかったらしい。 少し、過呼吸になって酸欠っぽくなっただけで、一度意識が戻ってから眠っているから放っておいても大丈夫。との事だったが、僕は自分の部屋から本を持ってきて、曽田さんの傍に座って曽田さんが目覚めるのを待っていた。 電話口で声を聞いた時に感じた通り、友瀬さんは赤い目をして帰ってきて、曽田さんを部屋に寝かせた後、少し自宅に帰ると言って行ってしまった。

          海の見える街 (4)