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Mutually 3
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「ノイマンさん、さっき後ろに連れてた女の子…、誰です?」
喰いかかってくるサイの目線から気を抜いたら逃げてしまいそうになる。
「あれ…?サイは知らないのかい?彼女は、アークエンジェルクルーの、アリサ・バーデン二等兵だ。ミリアリアの後輩だそうでな。」
予想以上にナチュラルな演技が出来た、と我ながら得意げになったのも束の間。
「知らないんですよ。ミリィと一緒にいるようになったのは僕もキラもカレッ
Mutually 2
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「へぇぇ〜。じゃあ、大尉はもともと操舵士として配属されたわけじゃなかったんですか。」
「本当に、偶然。たまたま。」
初めは状況に飲まれて上手く会話が出来なかった2人だったが、ノイマンがアークエンジェルに乗るまでの長い昔話をしている間に次第に慣れ、椅子に腰かけたアリサと、ベッドに腰掛けたノイマン、互いに向かい合って話せるようになっていた。
「あの時上官命令で強く言われてなかったら絶対にあの
海の見える街 (14)【最終話】
目の前に座る上品な老人は、暖かい紅茶を飲みながらひたすらに自分が話し出すのを待っているようだった。
「あの…」
あなたの事を教えていただけますか、と老人はそれだけ言って口を閉じてしまった。
まるで面接のような空気感が居間に漂っている。
「名前は、漢字で色の白と書いて、しろ と言います。歳は今年二十一になります。」
それ以降、それに相槌を打つわけでもなく、老人はただ紅茶を啜っている。
海の見える街 (13)
翌日、土曜日の朝。
来島者を迎えに来た三人は、降りて来た人の【人数】に絶句した。
治の言った”もうワンアクション”は意外にも早くやって来た。
「あれ?二人来る予定だったの?」
「え?治、二人になったの?」
「…。」
治は返事もできなかった。船から降りて来た内の一人を、よく知っていたから。
「裕、悪い。お客さんを頼む。」
駆け出した治を一瞬ポカンと見つめたが、残された二人は瞬時に状況を理解した。
海の見える街 (11)
「ハルー!」
爽やかに吹く風の中を、茜さんが走っている。
見覚えのある浜辺、辺りに僕たち以外は居ない。
茜さんの屈託のないその笑顔に、僕はなぜか胸を痛めた。
こんなにも幸せそうに笑う茜さんに、僕は薄っすらと苛立ちを感じていることに気づく。
こちらに手を振り、近づいてくる彼女を力一杯突き飛ばすイメージを見る。
やりきれない感情を手に握る。
僕の傍に誰かが立っている感覚を覚えた。それが誰なのか、僕
海の見える街 (10)
「へぇ、手持ち花火とか懐かしいなぁ。」
受け取った荷物を運び潮風に戻ると、玄関口で友瀬さんが僕らの帰りを待っていた。
茜さんは嬉しそうに花火を抱えて車に乗っていたので、降りた途端にそれは友瀬さんの目に入った。
「今日が本土の花火大会だって、僕知らなかったんですよね。」
また、別の日にでも、と言いかけると
「今日は風も弱いし夜も天気がええ。明日からしばらく雨みたいやけん、今日やりましょうや。」
と、
海の見える街 (9)
僕が潮風にやって来て、二ヶ月ほど時が経過した。
僕は毎日、朝七時に体育館にやって来て、ヘンデルの調子の良い鍛冶屋を弾く。
まるで某有名アニメーション映画の主人公(トランペットを吹く少年)のように。
すると、眠気まなこを擦りなから茜さんが起きてくる。
五分近くある曲の間に杏香さんがやって来て、弾き終えた時には体育館の隅で聴いていることもあった。
この曲はメインのフレーズをアレンジを加えな