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正常性バイアス

地震だ。

煙だ。

少し焦げ臭い。

どこかで火事になったのだろうか。

でもサイレンも聞こえないし、悲鳴も聞こえない。

こういう時は落ち着いて、口を布で覆うのだ。

これで大丈夫。

少し煙が濃くなって来た。

窓を開けて置こう。

これで暫く待てばきっと空気が




正常性バイアス
認知バイアスの一種で、社会心理学や災害心理学で度々登場する。
人は自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価してしまう。
特に事故や事件、自然災害などで自分に何らかの被害が予想される状況下でも、それを正常な日常生活の延長上の事だと考えてしまい、自身にとって都合の悪い情報を「前例がない」、「自分は大丈夫」、「今回は違う」、「まだ行ける」などと過小評価してしまう。
逃げ遅れて死ぬ人は大体これ。




はじめましての方ははじめまして。

お久しぶりですの方はお久しぶりです。

僕です。


バイアス」というのは日本語で「偏り(かたより)」。

認知バイアス」というのはつまり「偏見」だったり「先入観」的な事を言います。


今回取り上げる認知バイアスは「正常性バイアス」です。


夏が終わり、秋になり、もう冬の足音が聞こえます。

冬は自然災害や火災など、一年で最も災害が多い季節です。

そんな冬を先駆けて今回は皆さんに「正常性バイアス」を知って貰い、警鐘を鳴らしていったろうかなと思ってる次第です。

まあ、お茶でも飲みながら読んでって下さい。

どうぞよろしくお願いします。




人は「前例がない」とか「経験がない」ものに弱い生き物です。

特に災害に関して、見聞きする内容だけではその異常性と緊急性を感じ取り辛い生き物なのです。


それは「バカ」とは違うのです。


友達の家が火事になったとします。

それを聞いて貴方は「怪我人は?」、「全焼した?」、「これからどうするの?」色々と心配や疑問が湧くでしょう。

そこから「原因は?」、「その時どうしてた?」など、発端となる理由だったり、それに対する対応について聞くと思います。

そして賢い貴方はきっと、その火元の原因となった物を家から排除するか、これから注意して使用したりするでしょう。


これが限界なのです。

人から見聞きする情報で動ける範囲というのは、大体これが限界なのです。


貴方は友達の話だけで、家に何万円もする消火器を設置したり、何百万円するスプリンクラーを設置できますか?

きっと火事にあった友人はその後、家を選ぶ際には断熱や断冷なんかよりも耐熱性が高い家を選ぶでしょう。

そこに体験の差が出る訳です。







いやいや、おめえさんバカ言っちゃいけねえ、俺は違うぜ!




とは言え防災意識が高い人は確かに居て、どんな時でも冷静に判断し最善の行動ができるという人も居るでしょう。

2000年を超えてからも100名以上の人が亡くなる大きな災害が、日本や近隣の国で起こっている事もあり、我々の防災意識は徐々に高まってきていると言えます。

だから大丈夫!




ホントですか?




ちょっと怖い話をします。




2003年に韓国で起きた「大邱(デク)地下鉄放火事件」というのを皆さんは覚えていますでしょうか。

隣国の話ではありますが、国を跨いでしまっているのでもう忘れてしまっている方が多いと思います。


掻い摘んで話すと、自殺志願者が列車の中でガソリンを巻き自殺を図り、それによって火災が発生し死者192名、重軽傷者148名となった大事件です。

この後、韓国だけでなく日本でも消防法令が改正されたりと、我々の交通機関にも大きな影響を与えた事件となりました。


この事件は「正常性バイアス」を紹介するにあたり、触れずにはいられない大きな特徴があるんです。




それは

この事件の死者192名中、142名は

自殺志願者が放火した列車とは違う列車に乗っていた人たち

という所です。




ゾッとしませんか?

そして、ここまでの話で賢い方は何故そうなったのか何となく理解できるのではないでしょうか。




そうなんです。

死んだ人たちは「火を見ていない」人たちなんです。




この事件は列車運営側の大きな不手際(誘導不備や火災対応への意識の低さなど)が取り沙汰されていましたが、結局のところ「火を間近で見た人」たちは避難指示がなくても避難できているんです。

だって燃えてんだもん。

そこで。


火事があった第1079列車では死者6名、負傷者12名。

たまたま隣に停車してしまった第1080列車が死者142名。

残りの44名は駅に居合わせた方々などです。


当時パニックを避ける為に「その場に居た方が安全」という誤ったアナウンスがあった事も大きな要因ではありますが、同じ駅構内に居たにも関わらず列車によって死者数がこれだけ違うのを見て貰えると分かる通り、

言うてる場合か!

という意識の差がハッキリ結果に出ているのだと思います。







じゃあおめえさんは警報鳴る度に走って逃げだせっつうんかい!?

パニックになって慌てて怪我したらどうせえっちゅうんじゃ!?




うるさい、黙れ。

お前から〇ね。

お前だけ〇ね。


すみません、言い過ぎました。


僕が言いたいのは「急げ!」とか「怪我しても良いから走れ!」とかそういう事じゃないんです。

人は「前例がない」とか「経験がない」ものに弱い生き物である。

という事です。


貴方は逃げ伸びた100名になれますか?

という事です。




大邱(デク)地下鉄放火事件」で亡くなった多くの方々は座席で死んでいます。

窓を開けて煙を逃がし、やり過ごそうとした人たちです。

災害に関して、人は見聞きする内容だけではその異常性と緊急性を感じ取り辛い生き物なのです。




地震が起きた。

煙が上がった。




貴方を守れる人は、貴方しか居ません。

どうか正しい判断を。




こちらからは以上です。

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