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動画【パラドックス#28】功利主義のパラドックス!

古代ギリシャ時代から現在に至る多種多彩な「パラドックス」を解説する【パラドックス】シリーズを、YouTube チャンネル「高橋昌一郎」で開始した。お楽しみいただけたら幸い!

第28回「功利主義のパラドックス!」

近代の「快楽主義」すなわち「功利主義」の創始者として知られるのが、イギリスの哲学者ジェレミィ・ベンサムである。ベンサムは、社会全体の「幸福」を個人の「快楽」の総計だとみなした。そして、1人より2人、2人より3人と、より多くの個人が、より多くの快楽を得ることのできる社会を目指すべきであり、その「最大多数の最大幸福」こそが、宗教的権威に変わる新しい道徳だと考えたのである。

さて、心臓病で死にかかっているXと肝臓病で死にかかっているYがいるとする。2人の余命は残り数カ月だが、人生にやり残したことがあって、どんなことをしても生き延びたいと思っているとしよう。たとえば、あと数年だけ生きられたら、Xはガン治療法を発見できそうであり、Yは最高峰の芸術作品を完成できそうである。つまり、2人は人類に多大に貢献する可能性のある医学者と芸術家なのである。そこで2人は、第三者のホームレスを捕えて脳死状態にして、その心臓と肝臓を自分たちに移植するよう医師に要求した。

もし医師が手術を拒否したら、目の前の脳死者はそのまま亡くなり、2人の病人も助からない。つまり、3人が死亡することになる。一方、もし医師が手術すれば、1人が死んでも2人が生き延びることができるのだから、「最大多数の最大幸福」の原理にしたがえば、医師は手術を行うべきではないか、という論法が生じる。

医師は手術すべきだろうか、あるいは2人の要求を拒絶すべきだろうか?

高橋昌一郎(監修)『パラドックス大図鑑』ニュートンプレス、pp. 64-65.

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