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ドイツ詩を訳してみる

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2020年2月の記事一覧

アイヒェンドルフ「壊れた指輪」(ドイツ詩を訳してみる 30)

Joseph von Eichendorff(1788-1857), Das zerbrochene Ringlein (c.1810)

すずしい谷間で
水車がまわる、
水車小屋に住んでいた
愛しいひとはもういない。

一生の愛を誓って
ぼくに指輪をくれたのに、
愛の誓いは破られて
ぼくの指輪は裂けた。

ぼくは歌びとになって
広い世界を旅したい、
家から家へ巡って
ぼくの歌を歌いたい。

ぼく

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格を気にするひと(訳者あとがき2)

格を気にするひと(訳者あとがき2)

このところ翻訳する中で、格を気にさせすぎない日本語にする、ということを気にしていることがある。

学校で習う英文法では

〈主格〉  I  私が
〈所有格〉  my  私の
〈目的格〉  me  私を/私に

というのがある。ドイツ語やフランス語にもだいたい同じようなものがある。日本語文法では「ガ格」「ヲ格」「ニ格」などと呼ばれていて、これも似たようなものだ。

しかし、ぼくらは普段それほど格を意

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ハイネ「ぼくが涙をこぼすと…」(ドイツ詩を訳してみる 29)

Heinrich Heine (1797-1856), Aus meinen Thränen sprießen (1823)

ぼくが涙をこぼすと
花々が芽生えて咲き乱れる、
ぼくがため息をもらすと
サヨナキドリの合唱に変わる、

そして可愛いきみがぼくを愛するなら、
咲いた花を全部きみにあげよう、
そしてきみの部屋の窓辺で
サヨナキドリの歌声を響かせよう。

(喜多尾道冬、志田麓の訳を参考にした

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