マガジンのカバー画像

ドイツ詩を訳してみる

41
運営しているクリエイター

#ドイツ文学

ひよこのるる訳詩目録

2018年11月以来発表してきたぼくの訳詩約70編の、作者別の目録です。もし気に入った作品を見つけたら、同じ作者や時代の他の作品も読んでみていただけたらとてもうれしいです。

 *

作曲家・ミュージシャン別の索引も用意しております。

 *

以下、作者の生年順に並べています。

Marcus Valerius Martialis/マルクス・ウァレリウス・マルティアリス(ローマ)
c.40-c.

もっとみる

アイヒェンドルフ「壊れた指輪」(ドイツ詩を訳してみる 30)

Joseph von Eichendorff(1788-1857), Das zerbrochene Ringlein (c.1810)

すずしい谷間で
水車がまわる、
水車小屋に住んでいた
愛しいひとはもういない。

一生の愛を誓って
ぼくに指輪をくれたのに、
愛の誓いは破られて
ぼくの指輪は裂けた。

ぼくは歌びとになって
広い世界を旅したい、
家から家へ巡って
ぼくの歌を歌いたい。

ぼく

もっとみる

ツェラン「死のフーガ」(ドイツ詩を訳してみる 27)

Paul Celan, Todesfuge (1944)

明け方の黒いミルク 僕らは夕方にそれを飲む
僕らは昼に朝にそれを飲む 僕らは夜にそれを飲む
僕らは飲みに飲む
僕らは空に墓を掘る そこなら狭くない
ひとりの男が家に住む 彼は蛇らと戯れる 彼は書く
彼は日が暮れるとドイツへ手紙を書く 君の金色の髪マルガレーテ
彼はそう書く そして家を出る 星が輝く 彼は彼の犬らを口笛で呼び寄せる
彼は彼の

もっとみる

リルケ「豹」(ドイツ詩を訳してみる 22)

Rainer Maria Rilke, Der Panther (1902)

『新詩集』(Neue Gedichte, 1907) 所収。「パリ植物園にて」という副題がついています。

その目は柵の行き来に倦み果て
もはや何物をも捉えない。
あたかも目の前に千の柵があり
千の柵の先に世界はないかのよう。

力強くもしなやかな足取りが
のっそりと小さな円を描く。
あたかも弱った大きな意志の周りを

もっとみる

ヘッベル「秋の絵」(ドイツ詩を訳してみる 20)

Christian Friedrich Hebbel, Herbstbild (1852)

見たこともないような秋の日だ。
息をひそめたような静けさのなか
ここかしこのあらゆる木から
美しい果実の落ちる音がする。

おお 自然の祝祭に手を出すな!
これは自然みずからによる収穫なのだ。
太陽の光のやさしさに耐えかねたものだけが
今日 木の枝を離れて落ちてくる。

Dies ist ein Herb

もっとみる

ゲオルゲ「高まりゆく年の中で、庭の香りは……」(ドイツ詩を訳してみる 19)

Stefan George, Es lacht in dem steigenden jahr dir (1895)

高まりゆく年の中で、庭の香りは
なおもほのかにあなたに笑いかけ、
風にたなびくあなたの髪に
木蔦と九蓋草を編み込む。

風にそよぐ種子は なおも黄金のようだ、
おそらく前ほど高く豊かではないけれど。
薔薇の花は なおも愛らしく挨拶してくれる、
その輝きもいくらか色あせてしまったけれ

もっとみる

ゲーテ「さすらい人の夜の歌」(ドイツ詩を訳してみる 14)

Johann Wolfgang von Goethe, Wandrers Nachtlied (1780)

ゲーテの代表作ともいわれる短い詩で、日本語訳も数え切れないほどあります。主なものはこちらで読むことができますが、比べてみると、みんな先輩の訳の強い影響下で訳したんだろうなというのがはっきりと感じられます。

ぼくも既訳の引力と格闘しながら(その跡はいつにない五音・七音の多さとして残っていま

もっとみる