和泉眞弓

流浪のサイコロジスト。カクヨムで文章を書いています。https://kakuyomu.…

和泉眞弓

流浪のサイコロジスト。カクヨムで文章を書いています。https://kakuyomu.jp/users/izumimayumi

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  • 和泉眞弓の作品

  • 六枚道場感想005

  • 六枚道場感想004

  • 六枚道場感想003

    オンライン文芸サークル〈六枚道場〉に寄せられた作品への感想です。(第3回)

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『文体の舵をとれ』練習問題⑨ 問三:ほのめかし

この問題のどちらも、描写文が四〇〇〜一二〇〇文字が必要である。双方とも、声は潜入型作者か遠隔型作者のいずれかを用いること。視点人物はなし。 ①直接触れずに人物描写——ある人物の描写を、その人物がよく訪れたりしている場所の描写を用いて行うこと。(その人物はそのとき不在であること)  玄関先にはキャラクターのフィギュアが絶妙にかわいらしい間をおいて陳列されている。どれも主人公ではなく脇にいるような味のあるキャラクターばかりで、ひょっとすると主はその反応で客人の種類を選りわけて

    • 『文体の舵をとれ』練習問題⑨ 問一、問二

      問一:A&B この課題の目的は、物語を綴りながらふたりの登場人物を会話文だけで提示することだ。 一〜二ページ、会話文だけで執筆すること。 脚本のように執筆し、登場人物名としてAとBを用いること。ト書きは不要。登場人物を描写する地の文も要らない。AとBの発言以外は何もなし。その人物たちの素性や人となり、居場所、起きている出来事について読者のわかることは、その発言から得られるものだけだ。 A「母さんまたいなくなったのか」 B「きっとお隣よ。今頃、嫁がご飯食べさせてくれないーって

      • 『文体の舵をとれ』練習問題⑧ 声の切り替え 問一、問二

        問一:三人称限定視点を素早く切り替えること。六〇〇〜一二〇〇文字の短い語り。練習問題⑦で作った小品のひとつを用いてもよいし、同種の新しい情景を作り上げてもよい。同じ活動や出来事の関係者が数人必要。 複数のさまざまな視点人物(語り手含む)を用いて三人称限定で、進行中に切り替えながら物語を綴ること。 空白行の挿入、セクション開始時に括弧入りの名を付すことなど好きな手法を使って、切り替え時に目印をつけること。 (ミサ) 「夏なんて終わらない」ミサはこみあげるものを飲み下して言う。

        • 『文体の舵をとれ』練習問題⑦ 追加問題(おまけ)

          事件や事故の物語を2回語ってみること。一回目は遠隔型の作者か、取材・報道風の声。二回目は事件・事故の当事者の視点から。 小学生お手柄 さい銭泥棒の容疑者確保 住宅街の小さな神社でテレビカメラが男の姿を捉えた。住民からは最近になり神社近辺に不審な男がうろついている、さい銭が取られているようだ、との相談が警察に相次ぎ、警察は何度か境内のパトロールを行ったが、不審な男を捕らえることはできなかった。近くに防犯カメラを設置したところ、九日目に男が現れ、さい銭泥棒の現場こそ映っていなか

        『文体の舵をとれ』練習問題⑨ 問三:ほのめかし

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          『文体の舵をとれ』練習問題⑦ 視点(POV)問四(潜入型の作者)

          潜入型の作者のPOVを用いて、同じ物語か新しい物語を綴ること。 (同じ話で試みます)  夫は素封家であった。夫亡き後も美江は亡夫の習慣を守った。見えないものを軽んじない人だった。神祀りを欠かさず、風水に忠実にモノの配置や色を決めた。人に施すのが好きな人でもあった。貰ったものなどはただちに周りの人々に分け与え、まだ使えるものを決して捨てることはなかった。こういった日常の心がけが今の恵みをもたらしていると夫婦はかたく信じてきたし、美江ひとりになった今も続けている。数十年にわた

          『文体の舵をとれ』練習問題⑦ 視点(POV)問四(潜入型の作者)

          『文体の舵をとれ』練習問題⑦ 視点(POV) 問一、問二、問三

          〈複数の人物が何かをしている〉四〇〇〜七〇〇文字の短い語りになりそうな状況を思い描くこと。出来事は必ずしも大事でなくとも、何かしらが起こる必要がある。 今回のPOV用練習問題では、会話文をほとんど(あるいはまったく)使わないようにすること。 問一:ふたつの声 ①単独のPOVでその短い物語を語ること。視点人物は出来事の関係者の誰か。三人称限定視点を用いる。 ②別の関係者ひとりのPOVで、その物語を練り直すこと。用いるのは再び、三人称限定視点。 (視点:有希)  くまのオルゴ

          『文体の舵をとれ』練習問題⑦ 視点(POV) 問一、問二、問三

          『文体の舵を取れ』 練習問題⑥ 老女 一作品目、二作品目+任意の追加問題

          全体で一ページ(七〇〇字?)ほどの長さにすること。 一人の老女がせわしなく何かをしている——そのさなか、若い頃にあった出来事を思い出している。 ふたつの時間を超えて〈場面挿入〉すること。〈今〉は彼女のいるところ、〈かつて〉は彼女が若かったころに起こった何かの記憶。その語りは、〈 今〉と〈かつて〉のあいだを行ったり来たりすることになる。 この移動、つまり時間跳躍を少なくとも二回行うこと。 一作品目:一人称(わたし)か三人称(彼女)のどちらかを選ぶこと。時制——全体を過去時制か現

          『文体の舵を取れ』 練習問題⑥ 老女 一作品目、二作品目+任意の追加問題

          『文体の舵をとれ』練習問題⑤ 簡潔性

          一段落から一ページ(四〇〇〜七〇〇文字)で、形容詞も副詞も使わずに、何かを描写する語りの文章を書くこと。会話はなし。  1917年、ニュージャージー州。グレイスは、自分のように特殊技能も持たなければ体格だって優れていない、どこにでもいる十代女子が国のために働けることに誇りを感じていた。二人の兄は第一次世界大戦で徴兵され、国の役に立っていた。これは女子の手先の器用さこそが求められる仕事だという。軍用腕時計の文字盤を塗る仕事だった。給与も工場の仕事の3倍ある。その魅力は給与にと

          『文体の舵をとれ』練習問題⑤ 簡潔性

          『文体の舵をとれ』練習問題④ 重ねて重ねて重ねまくる 問2

          問2:構成上の反復 語りを短く(七〇〇〜二〇〇〇文字)執筆するが、そこではまず何か発言や行為があってから、そのあとそのエコーや繰り返しとして何らかの発言や行為を(概ね別の文脈なり別の人なり別の規模で)出すこと。  金網の穴をくぐると、大回りしなければ行けない丘の上の公園に最短距離でいけた。ぼくらだけでなく丘の上のマンション住民が坂の下のスーパーに直線距離で行ける抜け道であったし、そんなふうに塞がれて困る人が大勢いたし、実際その穴は長いこと塞がれなかった。ある日、転校してきた

          『文体の舵をとれ』練習問題④ 重ねて重ねて重ねまくる 問2

          『文体の舵をとれ』練習問題④ 重ねて重ねて重ねまくる 問1

          問1:語句の反復使用 一段落(三〇〇文字)の語りを執筆し、そのうちで名詞や動詞または形容詞を、少なくとも三回繰り返すこと。 金色の細い雲が痕をひく夕映えを追いかけて僕は君と走った。草の鞭を振りながら、棘を帯びて、その先の一番鋭敏なところでかろうじて僕と君は交信できた。衣擦れの音が少し大きいだけで僕らのあいだはこわれそうだった。破れるまえの予感に耐えきれず、僕は君を置いて走った。外のひどい喧騒が僕を刺した。殺されないように声を張り上げた。ものごとが二分法でわかりやすくなり、か

          『文体の舵をとれ』練習問題④ 重ねて重ねて重ねまくる 問1

          『文体の舵をとれ』練習問題③ 長短どちらも 問2 +追加問題 問2 +両問共通

          半〜一ページの語りを、七〇〇文字に達するまで一文で執筆すること。 「ねえあなた何の病気でここにきたの」湯船で挨拶のように交わされるこんな会話にもようやく慣れてきたころには、一枚だけ支給された温泉タオルは洗えど洗えど茶色く煮しまったような色がぬけず、心なしか皮膚も温泉の湯の土気色に染まってきた気がしてきて、ほんとうにここは健康に良いと名高い天然ラヂウム温泉で間違いないのかとそこはかとない不安が蠢き——そんな私の心を読むかのように、いつも会話のイニシアチブを取っている玉のように

          『文体の舵をとれ』練習問題③ 長短どちらも 問2 +追加問題 問2 +両問共通

          『文体の舵をとれ』練習問題③ 長短どちらも 問1 +追加問題問1 +両問共通

          一段落(二〇〇〜三〇〇文字)の語りを、十五字前後の文を並べて執筆すること。不完全な断片文(完全な文の代わりに、文の一部だけを用いたもの)は使用不可。各文には主語(主部)と述語(述部)が必須。[〜略〜日本語にそのままで当てはまるものではないため、〜略〜〈何〉について〈どう〉であるか、のように、主題を対象とする陳述・叙述が成立していればよいものとする]  明け方、静かに玄関ノブの音がした。夜が白み、星が消えていく時刻だ。布団から出ている鼻の先が冷たい。今日はなぜ眠れなかったのだ

          『文体の舵をとれ』練習問題③ 長短どちらも 問1 +追加問題問1 +両問共通

          『文体の舵をとれ』練習問題② ジョゼ・サラマーゴのつもりで

          一段落〜一ページ(三〇〇〜七〇〇文字)で、句読点のない語りを執筆すること(段落などほかの区切りも使用禁止)。 ただ立ち尽くす手をぶらさげてなすすべもなく手はつくしましたと白い人の言うその横であなたはいまにも起き出しそうにばら色の頬をしてねむるその下の胸がもういちど上下しないかといかほど目を凝らしてもちろとも動くこともなくなだらかに白い丘のうえ香を焚きしめ蝋燭は灯り茶碗に飯が盛られ箸が立つその下にあなたのからだはかりそめに隠され浄められてのち白装束をまとうそんなあなたが雄蕊を

          『文体の舵をとれ』練習問題② ジョゼ・サラマーゴのつもりで

          『文体の舵を取れ』練習問題①文はうきうきと 問2

          一段落くらいで、動きのある出来事をひとつ、もしくは強烈な感情(喜び・恐れ・悲しみなど)を抱いている人物をひとり描写してみよう。文章のリズムや流れで、自分が書いているもののリアリティを演出して体現させてみること。  やたらめったらはちゃめちゃにボタンを押し、どうか何処かにとまらないかと見えないものに強く祈る。匣は心なしか加速している。掌の汗がとまらない。スタタスタタと赤や緑の階が映っては消え、時折強い光を放つ階がよぎる。時をかけるこの匣がどこに降りるのかは知らされない。気が遠

          『文体の舵を取れ』練習問題①文はうきうきと 問2

          『文体の舵をとれ』練習問題①文はうきうきと 問1

          一段落〜一ページで、声に出して読むための語り(ナラティブ)の文を書いてみよう。その際、オノマトペ、頭韻、繰り返し表現、リズムの効果、造語や自作の名称、方言など、ひびきとして効果があるものは何でも好きに使っていい——ただし脚韻や韻律は使用不可。  見よ騒がしの森、電飾のひかるかげの青くちらばるその下に乳色の草いきれは満ち満ちて、おもいおもいにこころのままにあるものは地にすわりあるものは火を熾しあるものはおどりあるものは横たわりあるものはおもうものをおもいかえして涙する。はりつ

          『文体の舵をとれ』練習問題①文はうきうきと 問1

          朗読「水底の夢」

          自作小説の朗読です カクヨムで読めます https://kakuyomu.jp/works/1177354054935291178

          朗読「水底の夢」

          朗読「水底の夢」