見出し画像

生きづらい宇宙人*HSPショートストーリー

また上司にため息をつかれ、同僚である”友だち”の愚痴に付き合わされて、時間とお金をつかってしまった。

もう深夜1時。明日はまた満員電車に乗って、会社の人間たちの顔色を伺いながら仕事をしなくてはいけない。はあ〜と息が漏れる。これがため息だってわからないままの息。
僕はいつからこんな灰色の世界にいるんだろう。

僕には生みの親と育ての親がいる。
育ての親は、この地球上で僕を育ててくれた両親。
そして生みの親は、地球にはいない。別の星で暮らす”宇宙の人”だ。

”宇宙の人”だと思ってるけど、人かどうかもわからない。
小さい頃は夢の中か、ぼーっとしているときによく話をした。
生みの親はたくさん僕の話を聞いてくれた。
彼らはじっくり僕の話を聞いてよくこう言った。

「もっと聞かせて。こっちの世界は
食べる必要もない。
病気も死ぬこともない。
お金は好きなだけ生み出せるけど、お金がなくても欲しい物が生み出せる。
瞬間移動でどこにでも行けて
みんなで何かをしたいことがあれば、同じ思いの仲間が引き寄せられる。
そう、5次元な世界。

だからこそあなたの地球の体験が聞きたいの。
どんな感じ?どんな気もちだった?
もっと聞かせて。」

僕は両親が喜んでくれるから、たくさんの話をした。

ケーキを食べた時の甘くてやさしい、しあわせな気もち。
青空の下で真っ青な海を泳ぐ爽快なかんじ。
病気をした時のカラダの不快なかんじや、息が苦しくなること。
夏の早朝のしんとした空気と草の香り。
猫をなでるときのあたたかい感触と愛おしい気もち。
寒い日のあたたかな料理の匂いと安心するこころ。
どんなに楽しかった旅行でも、家に帰ることがうれしいこと。

”宇宙の人”である両親は、どんなことを話しても冒険しているようだとわくわくしている。僕もうれしくなっていろんなことを話しているうちに、どうやら感じる力が人より強くなってしまったらしい。

育ての親である地球の両親は、だんだん僕が話すことを不思議がるようになり、何かがおかしいと感じているようだった。

そのうち地球の両親は、他の子どもと僕を比べて心配するようになった。
普通に友だちを作って、普通に勉強して、普通の成績をとっておけば地球の親は喜ぶ。もっといい点をとれば、もっと喜んでくれることはわかっていたけれど、僕は普通がどうしていいのかが、わからなかった。

どうしてしあわせな気もちを表現したら、へんな目で見られるのだろう?
人と違うことはへんなこと?
”地球の人”たちの考えは、すぐに察知してしまうから、僕は先を見越して、人の顔色を見て行動するようになってしまった。
じぶんがやりたくないことを、断ったら空気が変わる。
空気が変わると、じぶんの息が苦しくなる。
そして頭が霧がかかったようにぼおっとしてしまう。

僕が「普通とはなんだ?」と考えるようになったころから”宇宙の人”である生みの両親と話す機会が減っていった。
話ができても、なぜか僕の中の僕の声が邪魔をして通信が途切れるのだ。
僕の中の僕は、よく言っていた。

「そんなことを話してなんになる?こっちは時間が限られているんだ。急ぐことも大事だろ。生きているうちにできることをたくさんしないと。」

この地球上で普通だと思われることに時間を優先しようとすると、宇宙との通信は途切れた。

僕はどんどん地球上の”生きづらい人”になっていった。

そんなとき、サカグチという人の本にあってしまった。
その本には我々のすべきことがすべて書いてあった。

われわれ躁鬱人は、人のことを考えるあまり、ぎこちなくも体を固定させ、移ろいやすいわれわれ最大の特徴を消そうと試み、まるで変装するようにしてこの社会で生きようとしてきました。もちろん、それは素晴らしいことです。(人に対する優しさが前面に出すぎた結果なのですから)。
しかし、本来のあなたのいいところは「素直」になってこそ、「素直」なままに行動してこそ、発揮されます。その「素直さ」をいかにして引き出していくか。コツは本当に簡単です。やりたくないことをせず、自分の心が赴くままに体をそのまま動かすということです。

『躁鬱大学』坂口恭平著  P243
お前のようなやつは死んだほうがマシだ、なんで人と同じようにできないんだ、こんな簡単なことができないようじゃ、どこでなにをやってもうまくいくはずはないから、人生詰んだ、もう諦めろ、死ね、と言ってしまっていると思いますが、まったく同じ言葉を僕も自分に言うので、まずそこを確認してくださいね。鬱になったら自己否定。それは自動的な反応なのです。風邪を引いたら熱が出る。あれと一緒です。

まず、鬱状態のとき、お腹が減っていることに人は気づけません。腹なんか減ってないんだよ、食べたくないんだよ、とおっしゃるのはよくわかりますが、長年の僕の研究の結果、死にたい人の全員が、食事を数時間とってないことが判明したんですね。騙されたと思って、まずは食べてみてください。

『躁鬱大学』坂口恭平著  P259

僕はまず食べた。
それから会社の自分の仕事を、きっちり片付けて辞めるという決心をした。

今まで、僕は宇宙に帰るときは、死ぬときだと思っていたし、地球になじむためには、宇宙を捨てなきゃいけないと思い込んでいた。

でもこの宇宙のしくみを書いた本は、どちらも両立できると僕に勇気をくれた。僕は僕でいればいいんだ。
だれでもない僕が、地球を生きづらく感じていただけだ。

だって宇宙との通信を邪魔していたのは僕自身だったから。

ある夜、宇宙に通信を試みた。
なつかしい声がする。

「ね、もっと聞かせて。
どんな感じ?どんな気もち?
聞かせてくれてありがとう。
もっと聞かせてね。」

素直にもっと感じて、話をしようと思う。
じぶんと、たぶん”宇宙の人”である神と。


------------募集してます♪------------

※参考文書



ひきこもりの創造へ役立てたいと思います。わたしもあなたの力になりたいです★