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角砂糖のような

角砂糖のような

 
 
 
 まるで、角砂糖のような恋だった。
 
 そう──角砂糖のような、という表現が相応しい、と思っている。
 思い浮かべるのは、甘さ、だからなのだろうか。
 
 そのまま含めば、ただ甘く、水に溶かしても、なお甘い。溶け込むその姿は、揺らめく陽炎のようでしかなくとも、確かに存在していることを何より舌で感じる。
 
 では、コーヒーなら?
 
 ほんの少しの姿さえ見えなくなる。けれど──。
 

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純粋過ぎる寂しさは、時とすると、側からはふと綺麗に見えたりするもので。

でも綺麗に見える寂しさは、ほとんどは醜い寂しさの、入り混じった怒りや憎しみを覆い隠すか取り除くかして、寂しさの部分だけ取り出して、まるで最初から純粋な寂しさだったかのように、作ってある。

どこにでもある。

同乗者

助手席には痩せこけた男

後部座席には髪の長い女と

蒼白い顔の子供

助手席の男が口を開いた

「いい車だな」

髪の長い女が相づちをうつ

「本当にいい車だねえ」

俺は謙遜して応える

「いや、それほどでも」

子供がはしゃいだ声で言う

「おじちゃん運転上手だね」

俺は黙って首をすくめた

「あそこの角で下ろしてもらおうか」

痩せた男の言葉に俺はふっと息をつく

そして静かに車を路肩に

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宇宙の果て

コールドスリープの最長設定は100年

私はこれを70回以上続けて

宇宙を旅した

宇宙船は私の開発した加速型エンジンを搭載

この船は停止させない限り

無限に加速を続けてゆく

速度は光の70兆倍以上

重力反発装置のおかげで

どんなものにも衝突することはない

だが新しい発見は何もなかった

私はコールドスリープ装置に入ることを止め

年老いて死ぬことを選択した

そして40年

安らか

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不老長寿の話。

 おお、おお。
 この地に人間がやって来たのは10年ぶりか。
 わかっている。
 君が何を求めて来たのか、私には分かっているぞ。
 何を隠そう私自身、それを求め10年前にこの地へ来たのだ。
 そして私はひとつの事実を授かった。
 いいや、勿体ぶらずに話そう。
 私は君にひとつの事実を伝えねばならぬ。

 君が追い求め続けたものは、ない。

 どこにも存在しない。

 ああ。
 そんなものは、ないん

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悲しみも何も、綴るだけの価値がお前の感情なんぞにあるものかよ、とバカにされそうな気がする。

 生きることを肯定している自分のことも、死にたくてたまらない自分のことも、結局は理解してくれるのは自分自身だけだから。

 ツイッターは自分に向けて発信している。

 自分に銃口突きつけて「さあお前は死ぬのか、死にたくないのか」ってやってる。

 「自分で引き金を引く勇気はない、むしろ俺死にたくない」とか思いつつ、心の何処かで「偶然で暴発してくれたらラッキーだな」とほんのり期待するくらいには、生き

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