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女性性と男性性の対話と統合

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女性性と男性性の対話と統合をお話にしたものです
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記事一覧

対になる男の子が対になる女の子に出会う話

対になる男の子が対になる女の子に出会う話

ずいぶん長く泉に浸かっていた気がします。勇気があって純粋な男の子は水底からゆっくりと浮上すると、そのまま水面にぷかぷか浮かびました。太陽がまぶしくて手を目元にかざします。

「きれいだなあ。僕はどれくらい空や太陽を眺めていなかったんだろう」

幼い頃から街のリーダーになることを期待され、リーダーになり、さまざまな問題を解決し、街おこしもしました。試練に挑んで剣を抜き、国のリーダーになったあとは解決

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森羅万象と話す女の子と災難が恩寵と気づいた男の子の話

森羅万象と話す女の子と災難が恩寵と気づいた男の子の話

○森羅万象と話す女の子の話

賢くて繊細でものをわかりすぎる女の子はそのまま寺院を出ました。あとのことは髪を一つにくくった寺院長がうまくおさめてくれるそうです。

「どこへ行こうかしら」

女の子は呟きました。いろんな人たちを観察しました。いろんな人生の苦しみと楽しみがあるのを知りました。土に水に火に風に生きるもののありようを体験しました。風が女の子に尋ねます。

「森はあなたをいつでも迎える準備

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暴徒を鳥となって空から眺める女の子の話

暴徒を鳥となって空から眺める女の子の話

○暴徒を鳥となって空から眺める女の子の話

午後の休憩のとき、賢くて繊細でものをわかりすぎる女の子は寺院の外で人々が怒鳴る声を聞きました。寺院の門の外へ顔を出すと、隊列を組んだ人たちが旗を振りかざしながら大通りを練り歩いていました。

女の子の後ろから髪を一つにくくったおじさんも大通りを眺めていました。

「国のやり方に抗議する奴らだねえ」

「何に抗議してるの?」

髪を一つにくくったおじさんは

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魔女として燃やし尽くされた女の子の話

魔女として燃やし尽くされた女の子の話

賢くて繊細でものをわかりすぎる女の子は市場から余り野菜を集めるのも慣れてきたところで厨房頭の太ったおばさんに言われました。

「市場係も慣れてきたようだし、かまど番をやってもらおうかね」

かまど番は朝早くかまどの火をおこし、夕方火を落とすのです。寺院に寝泊まりしている女の子がやるのは適任でした。

早朝の冷たい空気の中、寝床から抜け出して種火から火を移し、紙屑や小枝に移し、指くらいの木をくべ、火

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小魚になった女の子の話

小魚になった女の子の話

毎日大量の野菜を洗い、むいて、切り刻みます。賢くて繊細でものをわかりすぎる女の子は他の人より仕事が遅く怒鳴られてばかりです。朝一に積まれた野菜の山を見るとため息がでます。担当分だけでもやり遂げなければと必死で洗い、むいて、切り刻みます。女の子の手はぼろぼろになりました。その手を見て厨房頭である太ったおばさんが嘆きました。

「今時の若者は使えないねえ! あんた、そんなんじゃ手がしみて野菜もろくに洗

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地を這う虫になった女の子の話

地を這う虫になった女の子の話

賢くて繊細でものをわかりすぎる女の子はいつのまにか街外れまで歩いてきていました。黄金の穂が揺れる畑が広がっています。街の喧噪がかすかに聞こえてきます。騒音に聞こえていたこれらの音も先ほどの女の人のように心の重荷を抱えながら生きている人たちが生み出す音なのです。女の子は足下をじっと見つめます。

足下をうねりながらミミズが横切ろうとしていました。

「虫たちから見たら人間の営みはどんな風に見えるのか

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知らない女の人の中に入り込んだ女の子の話

知らない女の人の中に入り込んだ女の子の話

賢くて繊細でものをわかりすぎる女の子は森の外へ旅立ちました。

風は街へ向かう女の子に質問をします。「どうして街へいくんだね?」

「私がやったことがないことをやるため、私が感じたことがないものを感じるため、私が考えたことがないことを考えるため」

風はため息をつきました。

「あなたの幸運を祈ろう」

「ありがとう」

東の街へ着いた女の子は大通りをずんずん歩いていきます。普段過ごしている森とは

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呪われた男の子に理不尽な災難が降りかかる話

呪われた男の子に理不尽な災難が降りかかる話

勇気があって純粋な男の子はあともう少しで癒しの泉がある山の麓へ到着するところまで旅をしてきました。
いろんな人が旅を助けてくれました。

年若い女が船乗りの恋人の無事を祈ってロバに乗せてくれました。

年老いたロバは男の子の体重でよろめきました。

「僕を降ろしてください。ロバがつぶれてしまいます」

「大丈夫です。見かけよりもこの子は強いのです」

年若い女はよろめくロバから自分の荷物を下ろして

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癒しの泉を求める男の子の話

癒しの泉を求める男の子の話

勇気があって純粋な男の子は病を治すための旅を始めました。かつての颯爽とした様子は見る影もありません。身体中が出来物に覆われ、しゃがれ声で、足を引きずりながら歩きます。

東の果ての森の賢い人に会えないかと森の端の村で1ヶ月粘りましたが無駄でした。あの日会えたのは本当に奇跡だったのです。

男の子は旅費にするために、あの日、森の賢い人に貰った薬を村の人に売りました。森の賢い人の評判はすごいもので、薬

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知らないことを知るために旅立つ女の子の話

知らないことを知るために旅立つ女の子の話

賢くて繊細でものがわかりすぎる女の子はなんだか不機嫌です。湧水のそばに行って地球の記憶を眺めましたがいつものようにワクワクしません。

大地が女の子に「どうしたの?」と尋ねます。

「わからないけど腹が立つの。私ってそんなに森の賢い人にしか見えないの? 単なる親切な女の子に見えないの?」

大地は言います。「そんなに単なる女の子に見られたいの?」

「私をよく知るとみんな人間扱いしなくなる。でも出

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理不尽な災難に苦しめられる男の子の話

理不尽な災難に苦しめられる男の子の話

勇気があって純粋な男の子はあっけに取られ、それから慌てて立ち上がって女の子を追いかけました。ですが、森が女の子を隠したのかのように姿は見えません。女の子は走っていた訳でもないのに不思議なことです。

男の子は日が暮れるまで女の子を探しまわりました。うっそうとした森の中では月光も届かず足元もよく見えなくなったので男の子は肩を落として森を出ていきました。

森の入り口の村に着くと、男の子は途方に暮れま

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女の子が風の声を聞く話

女の子が風の声を聞く話

賢くて繊細でものがわかりすぎる女の子は風が囁くのに耳を傾けます。

『森の入り口へ行って。森の入り口へ!』

女の子の脳裏に南の森の入り口の風景が浮かびます。あそこの近くにはベリーの群生があって、今時分はちょうど実りのときです。
女の子のお腹が鳴りました。

「わかった。ベリーをたくさん摘んでジャムを作りたいと思っていた」

女の子は籠にキノコとナッツのサンドイッチと水をつめます。風がもう一度囁き

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対になる女の子を探す男の子の話

対になる女の子を探す男の子の話

勇気があって純粋な男の子は対になる女の子を探し始めました。でもいったい対になる女の子はどこにいるんでしょうか? 

物乞いから姿を変えた銀髪の賢者にもう一度会えば教えてもらえるかもしれない。そう思った男の子は道端の物乞いの顔をいちいち確かめます。

物乞いは埃まみれで膝に穴が空いたズボンを履いた男の子を、かつての国のリーダーだとは思わず、新入りの乞食がきたのだと思いました。

「おい、新入り。そん

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世界を救わない女の子の話と預言を信じた男の子の話

世界を救わない女の子の話と預言を信じた男の子の話

●世界を救わない女の子の話

成長した賢くて繊細でものがわかりすぎる女の子は最近では滅多に人に会うこともなくなりました。大抵の時間は洞窟の周りで過ごします。森の奥で草や果実やキノコを摘みます。大地に寝転がって星と話しあいます。湧水の見せる地球の記憶を覗きます。

風が囁くときだけ小屋に帰り、訪れる人にアドバイスや薬草を与えました。

やってくる人が言うには、今、世界は大変なことになっているそうです

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