御厨鉄

引退後のおじさん。

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マガジン

  • Vol. 2

    2024.4~

  • Vol.1

    2023ー2024年4月までの記事。

記事一覧

「天国は近づけり」卜部哲次郎

「虚無思想研究」の解説に、卜部(うらべ)哲次郎の反労働的な文があった。 「ニヒル」創刊号の巻頭に収載されていたようだ。 ※「遍身羅綺者、不是養蚕人」……11世紀…

御厨鉄
2週間前
9

幸福は不可能

資本主義社会は幸福によって駆動する。 第一に消費主義。 「消費することで幸福になれる」 第二にメリトクラシー。 「努力して成功すれば幸福になれる」 メリトクラシー…

200
御厨鉄
1か月前
21

30代無職、虚無

35歳、妻なし、子なし。 倹約すればひとり食っていくだけの金はある。 「食うに困った」 ことはないし、これからも 「食うに困らない」 だろう。 これは人間、というか…

200
御厨鉄
1か月前
27

自由と知性は人間を幸福にしない

自由 知性 これらがあるほど、幸福になれる―― と考えてきた。 が、そうではないのかもしれない。 自由は人間を幸福にしない ひとはだれでも自由を良いものと考える。…

200
御厨鉄
1か月前
25

人生は意味はない――それから?

「人生に意味はない」 という事実に、いまさらながらビックリしていた。 私はいま35歳なのだが、自分の前半生をふりかえると幻滅Disillusionedの連続だったと思う。 …

200
御厨鉄
1か月前
33

生きることへの懐疑

貧困と富裕 名誉と屈辱 自由と隷属 いずれも快苦とは無関係であるため、どちらでもいい。 と、キュレネ派のヘゲシアスは言ったとされる。 これはもっともかもしれない…

200
御厨鉄
2か月前
49

「過剰な知性」の副作用

知性が高いほど幸福なのか? そうでもないよ、というデータがある。 IQが高いと鬱病になりやすい「IQが高いと鬱病になりやすい」 みたいだ。 下のグラフで、Pure Bipola…

200
御厨鉄
2か月前
39

人生終わった

「I'm done with life」 という感じ。 35歳、独身無職。 もう十分に金はある。 生活に必要なものは揃っている。 家はある。 バイクはある。 電子レンジもパソコンもあ…

200
御厨鉄
2か月前
39

ショーペンハウアーと山上徹也

「意志と表象としての世界」 を読みおわった。 2ヶ月かかってしまった。 いま書き抜きをまとめている最中なのだが、「復讐」についておもしろい記述があったので紹介して…

100
御厨鉄
2か月前
24

「カンディード」に見るペシミズムの克服

いやいや、それ以上の不幸がバシバシ出てくるのがヴォルテールの「カンディード」という本である。 この本を読もうと思ったきっかけは、ペシミストの哲人・マルチンが登場…

200
御厨鉄
2か月前
18

「死んだほうがいい」の哲学――キュレネのヘゲシアス

快楽主義者からペシミズムに傾倒しているさいきん。 「似たような考えの人がいるんじゃないか?」 と調べてみると――。 世界は広い。 ドンピシャの思想家がいた。 「死…

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御厨鉄
2か月前
19

座禅を100日すると何が起きるのか

座禅を100日続けた。 何が起きたのか。 私の座禅スタイル寝る前に20分ほど座禅している。 どうしても足がしびれるのでこれくらいが限界になる。 座り方は結跏趺坐…

200
御厨鉄
2か月前
25

絶望の哲学

フィリップ・マインレンダーは34歳で首をくくった。 (自著「救済の哲学」を足場にした、と言われるが、これは脚色の可能性が高い) 彼の影響を受けた芥川龍之介は、35…

200
御厨鉄
2か月前
14

ショーペンハウアーの不幸論

「意志と表象としての世界」 を読んでいる。 4巻に入って、いよいよショーペンちゃん節が展開されている。 彼の苦痛に関する記述は 「そうそう、そうだよな」 と納得で…

200
御厨鉄
2か月前
15

苦しみを抱いて

治験に落ちてしまった。 肝臓のある数値が高かった、と言われた。 おそらく、数日前にした筋トレのせいだろう。 あてにしていた数十万円と快適な入院生活がパー。 まった…

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御厨鉄
2か月前
28

【和訳】Lowkey ft. Logic -Relative

この曲で表現されている視点は、直接にはLowkeyやLogicのものではない。 ただある人々が送っている生活に注目させるためのものだ。 [Lowkey:] 俺はバーモンドジーに生ま…

御厨鉄
3か月前
10
「天国は近づけり」卜部哲次郎

「天国は近づけり」卜部哲次郎

「虚無思想研究」の解説に、卜部(うらべ)哲次郎の反労働的な文があった。
「ニヒル」創刊号の巻頭に収載されていたようだ。

※「遍身羅綺者、不是養蚕人」……11世紀の隠者、張兪の言葉。きらびやかな衣服をまとう者は、蚕を養う貧民ではないこと。

伏せ字の部分は何が書かれていたかよくわからない。

卜部哲次郎の生涯については以下に詳しい。
乞食行脚をしたあと、住職になって死んだらしい。

幸福は不可能

幸福は不可能

資本主義社会は幸福によって駆動する。

第一に消費主義。
「消費することで幸福になれる」

第二にメリトクラシー。
「努力して成功すれば幸福になれる」

メリトクラシーによって不平等が合法化される。
「不幸な人間は(努力しなかったのだから)自己責任」
となる。

そうして
「幸福な人間はself-help(自助努力)によって成功したから幸福なのだ」
と導かれ、これは
「成功すれば幸福になれる」

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30代無職、虚無

30代無職、虚無

35歳、妻なし、子なし。
倹約すればひとり食っていくだけの金はある。

「食うに困った」
ことはないし、これからも
「食うに困らない」
だろう。

これは人間、というか生物の長い闘争の歴史を考えてみると、幸福なことと言わなければならない。

Careするものがない

それにしても思うのが
「Careすることがない」
ということだ。

気にかけること、めんどうを見ること、というものがない。

第一に

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自由と知性は人間を幸福にしない

自由と知性は人間を幸福にしない

自由

知性

これらがあるほど、幸福になれる――
と考えてきた。
が、そうではないのかもしれない。

自由は人間を幸福にしない

ひとはだれでも自由を良いものと考える。
隷属は悪いことである。

しかし、人間はどこまで自由になれるのか。

働いて金を稼がなければいけない

税金を払わなければいけない

法律を逸脱すれば警察に捕まる

世間体や常識に縛られる

これらから自由になることは、そう難し

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人生は意味はない――それから?

人生は意味はない――それから?

「人生に意味はない」

という事実に、いまさらながらビックリしていた。

私はいま35歳なのだが、自分の前半生をふりかえると幻滅Disillusionedの連続だったと思う。

学校に、労働に、家庭に

富に、所有に、名声に

社会に、宗教に、国家に、人類に

幻滅してきた。
さいきんでは知性や自由にも幻滅しつつある。

こうなると、追いかけるべき目標はなくなる。
夢はなく、希望もない。

ここま

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生きることへの懐疑

生きることへの懐疑

貧困と富裕

名誉と屈辱

自由と隷属

いずれも快苦とは無関係であるため、どちらでもいい。

と、キュレネ派のヘゲシアスは言ったとされる。

これはもっともかもしれない。

ヘゲシアス再考

まず、貧困と富裕。

私は仕事をやめてしばらく、たいへんな貧乏生活をしたことがある。
極端な月は1か月に使った金が2万円以下だった(持ち家だから可能なのである)。

貧乏を経験するとわかるのだが、貧しい方が

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「過剰な知性」の副作用

「過剰な知性」の副作用

知性が高いほど幸福なのか?

そうでもないよ、というデータがある。

IQが高いと鬱病になりやすい「IQが高いと鬱病になりやすい」
みたいだ。

下のグラフで、Pure Bipolar(他の疾患を併発していない純粋な双極性障害)の発症率は低IQで大きく、IQが高まるほど低下する。

しかし平均IQを越えて高くなると、再び増加の傾向を見せる。

IQが高いと酒・薬物に手を出しやすいまた、IQが高い人

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人生終わった

人生終わった

「I'm done with life」
という感じ。

35歳、独身無職。

もう十分に金はある。
生活に必要なものは揃っている。
家はある。
バイクはある。
電子レンジもパソコンもある。
新しくなにかを買う必要を感じない。

金が必要ないのだから、仕事はしていない。
社会が良いものという前提がないから、名誉や権力がほしいこともない。
結婚したい、子どもが欲しい、という考えもない。
友人はほんの

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ショーペンハウアーと山上徹也

ショーペンハウアーと山上徹也

「意志と表象としての世界」
を読みおわった。
2ヶ月かかってしまった。

いま書き抜きをまとめている最中なのだが、「復讐」についておもしろい記述があったので紹介しておく。

私たちが山上徹也に対して持つ少なからぬ「あの共感」。
それが説明されているように思う。

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「カンディード」に見るペシミズムの克服

「カンディード」に見るペシミズムの克服

いやいや、それ以上の不幸がバシバシ出てくるのがヴォルテールの「カンディード」という本である。

この本を読もうと思ったきっかけは、ペシミストの哲人・マルチンが登場すること。
また、有名なラストのセリフ「けれども、わたしたちの畑を耕さなければなりません」の意味を探るためだった。

ペシミスト、マルチン

「カンディード」の原題は『カンディード、あるいは楽天主義説』であるから、楽天主義(オプティミズム

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「死んだほうがいい」の哲学――キュレネのヘゲシアス

「死んだほうがいい」の哲学――キュレネのヘゲシアス

快楽主義者からペシミズムに傾倒しているさいきん。

「似たような考えの人がいるんじゃないか?」
と調べてみると――。

世界は広い。
ドンピシャの思想家がいた。

「死の説得者」ことキュレネのヘゲシアス。

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座禅を100日すると何が起きるのか

座禅を100日すると何が起きるのか

座禅を100日続けた。

何が起きたのか。

私の座禅スタイル寝る前に20分ほど座禅している。

どうしても足がしびれるのでこれくらいが限界になる。

座り方は結跏趺坐。
私は身体が固いので、はじめは足を組むだけでたいへんだった。

そこから10分座れるようになり、20分座れるようになった。

20分からイマイチ伸びない。
冬で厚着してるのが悪いのかもしれない。

精神よりも肉体と向き合う「座禅は

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絶望の哲学

絶望の哲学

フィリップ・マインレンダーは34歳で首をくくった。
(自著「救済の哲学」を足場にした、と言われるが、これは脚色の可能性が高い)
彼の影響を受けた芥川龍之介は、35歳で服毒自殺した。

35歳あたりの年齢には、なにかあるのかもしれない。

おそらく、私たちが
「生に向かって生きている」
と思っていたのに
「死に向かって生きている」
と気づくあの転落が、この頃の年齢にはある。

生きることは苦しみであ

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ショーペンハウアーの不幸論

ショーペンハウアーの不幸論

「意志と表象としての世界」
を読んでいる。

4巻に入って、いよいよショーペンちゃん節が展開されている。

彼の苦痛に関する記述は
「そうそう、そうだよな」
と納得できる部分が多い。

1.苦痛と退屈の均衡法則

(↑これは勝手に名付けている。以下も同じ)

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苦しみを抱いて

苦しみを抱いて

治験に落ちてしまった。

肝臓のある数値が高かった、と言われた。
おそらく、数日前にした筋トレのせいだろう。

あてにしていた数十万円と快適な入院生活がパー。
まったくやりきれない気持ちになった。

おまけに、世間では株高でワイワイしているが、私の資産はぜんぜん増えない。

数日ふて寝をして過ごした。



しかしまあ、人生とはこんなもんである。

「35歳独身男性は発狂する」
という説があるら

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【和訳】Lowkey ft. Logic -Relative

【和訳】Lowkey ft. Logic -Relative

この曲で表現されている視点は、直接にはLowkeyやLogicのものではない。
ただある人々が送っている生活に注目させるためのものだ。

[Lowkey:] 俺はバーモンドジーに生まれた。(ロンドンの)南部だ。
[Logic:] ぼくはバスラで生まれた。イラクの南部だ。

[Lowkey:] 公園でフットボールをしたもんだ。
[Logic:] 暗闇のなか銃弾を避けてきた。

[Lowkey:] 祈

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