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LOWさんの小説

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8月13日

8月13日

諦めよう

やめよう

手強い君に何度もそう思いました

合わないのかもしれないけれども

理由じゃなくて 自分自身が必要としていました

思うように事が進まず

のんびり見える君に

たまに焦りを感じたり

焦らせてはいけないと声が聞こえて

ジレンマがまた生まれ

私はまだ明るい未来を諦めたのではなく

ズルい自分が嫌になりました

約束を守り通していても

ズルいといつも思われ疑われ

当然

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ひでんのタレ

ひでんのタレ

作 LOW
イラスト wildmonkey

ぼくのうちは『とりや』という焼き鳥屋さんだ。

『とりや』には、おじいちゃんが作った

(ひでんのタレ)がある。

油でギトギトになった茶色のつぼに入ったそのタレは

すごい調味料だってママが言ってた。

焼き鳥はもちろん、野菜炒めだって

これひとつでおいしくなるんだ。

お客さんもみんな(ひでんのタレ)の大ファン。

ごはんにかけたいから沢山かけ

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poppin HA-RA-JU-KU

poppin HA-RA-JU-KU

こういうのには慣れている。
必ず私はその場から浮いてしまうから。
だから来たくなかったんだ。

呼び込みの声や誰かの話し声。
ジャンルが入り乱れたミュージックが
お店から流れてきてはまた流れていく。
私はここよ、と甲高い笑い声が
四方八方から飛び込んでくる。
そんなポップな視界が私を見下ろしていた。

「大丈夫だって。守野高だって。
かっこいいらしいよ。性格も良いってサチが
言ってたし。

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ある六月の物語⑤

ある六月の物語⑤

東京は嘘の様に晴天が続き

もう梅雨明け間近だと

今朝のテレビでも

トピックニュースに挙げられていた。

今日の予報は晴れ。

夕方から局所的に強い雨が降るかもしれないと

いつもの天気予報士が

重要だと言わんばかりに言っていた。

今日は6月最後の週の金曜日。

降りそうもない青空を見て

1度玄関を出たが、

あの天気予報士が正確だと

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ある六月の物語④

ある六月の物語④

金曜の夜、会社の同僚2人に誘われ

郁人は飲みに来ていた。

ここは新人の時から来ている

会社近くの居酒屋。

きっかけは忘れたが

似たようなメンバーと

似たようなメニューで幾度となく来ている。

定食屋の様なテーブルが

等間隔に並んでいて

店主の手書きのメニューが

敷き詰められている。

ここに来ると、誰しもがメニューに悩み

目が忙し

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ある六月の物語③

ある六月の物語③

「郁人、そろそろ起きたら?もう5時よ。」

ノックと共に、母親の控えめな声で

頭まで被った布団から、郁人は伸びをしながら

這い出す。

実家のある自治会のお囃子の稽古の時間は

月に2回あり、祭り前のこの時期の

土曜日の稽古は毎週になっていた。

郁人は、一応指導者として

この稽古に、毎週出席していた。

18時30分から稽古が始まる。

汗ばんだ体

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lovely days

lovely days

【短編小説】

「 あ~~腹減った。」

思わず声も出てしまう。

もうこんな時間かよ。と

先の(腹減った発言)よりは

少し小さな声で僕は呟いた。

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君がいい。

君がいい。

【恋愛短編小説】

「 かんぱーい 」

僕は今、いわゆる合コンに来ている。

正確に言うと来させられた。

いつも連んでいる同じ学部の友人に。

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言ってくれてありがとう。

言ってくれてありがとう。

【短編小説】

地元のラジオ局から流れる

カーペンターズに

オレンジ色に染まる午後のキッチン。

久しぶりにクッキーを焼いた。

私がクッキーを焼いた理由。

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マスクの下は。

マスクの下は。

【恋愛短編小説】


「 安心するから 」

「 その方が温かいから 」

と言って 君はマスクを取らない。

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秋桜を想う。

秋桜を想う。

【恋愛短編小説】

まだ残暑の厳しい9月の日。

シャツの一番上のボタンを外し

滲み出る首筋の汗を

ハンカチで拭きながら

僕は一本のあぜ道を歩いていた。

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愛しきBLOG WORLD②

愛しきBLOG WORLD②

【恋愛短編小説】 2部作②

「 はじめまして 」

からだった。

彼女のコメント欄から。

返事が来ないその間、何度も何度も

コメントを消去しようかと思った位に

僕は憂鬱で惨めだった。

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愛しきBLOG WORLD

愛しきBLOG WORLD

【恋愛短編小説】 2部作①

初めて彼女のブログを見たのは

いや、読んだのはいつだっただろうか。

何となく退屈で憂鬱だった6月の僕は

たまたま見かけたブログサイトに登録をした。

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彼女の記憶①

彼女の記憶①


【恋愛短編小説】3部作①

声と音が慌ただしい帰宅ラッシュから逃れ

駅から自転車で15分。

少し坂を登った、 閑静な場所にある

茶色の築10年のマンション。

その4階のエレベーターのすぐ右にある

402号室が2人の部屋だった。

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