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荒む、荒むとき、荒めば


心がすさむことはありますか?


私はあります。
日々、家庭内のことで忙殺され仕事に地域の役割、
同居生活、ほうほうの体で肩で息をしながらふと周りを見ると、
私だけが追われている。
皆、何も生活ペースが変わっていない。

自治会長の仕事に食事の用意、
食材の買い出し、職場の人が足りない時はシャカリキに働かなければお店を回すこともできない。

だけど、
私以外の家族のペース変化なし…
これ、きますよ…マジできます。

マイペース雪路と次男坊のダブルタッグ受け身コンビネーションは華麗だし、自分が作っていったご飯が残っていない…という想像を大きく超えてくる事案もあったり日々の生活は波乱万丈である。
漆黒の目で空を見つめながらため息をつく事も日常茶飯事。

ああ、荒んだな……と思う時用に私にはいくつかの頓服薬を用意してある。

映像ではまずはコレ。

愛し君へ ディレクターズカット DVD-BOX 

とにかく、四季ちゃんこと菅野美穂の心がまっすぐで美しい。
いつも返事は「はい」真摯な態度で愛情深い。
何度も見て何度も号泣するデトックスDVDである。

「見た事ないよー」っていう人に見てほしい。
一番最初にリアルタイムでドラマでやってて見たのは最終回だけなのにゲロ吐くほど泣いた。
最終回1話しか見てないのにそんなに泣きますか?って自分でもびっくりしたけど、本当に泣いた。

あとは本なのだが、

茨木のり子詩集 (岩波文庫) 

*自分の感受性くらい
*倚りかからず
*一人は賑やか

どれも美しく品のある言葉で綴られているのに
凛としていて背筋がピンと伸びている。
心がすさむ時、この詩を読んで克己する。

同じく詩人で好きなのは吉野弘さんだ。

吉野弘詩集 (ハルキ文庫) 

*祝婚歌
*夕焼け

この二編は本当に好きな詩である。
祝婚歌は結婚して22年経っても「本当にそうだ」と思うし、はじめて祝婚歌に出逢ったのは自分の結婚式であった。

祝 婚 歌
二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい

*****

そして、22年経っても今読んでも胸が熱くなる。
自分で選んだ愛する人と暮らしたいと強く望んで結婚したのだ。
1年、1年と重なる事に言葉の意味が本当に理解できるようになってきたようにも思えるのだ。

*****

夕焼け 吉野弘

いつものことだが
電車は満員だった。
そして
いつものことだが
若者と娘が腰をおろし
としよりが立っていた。
うつむいていた娘が立って
としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが坐った。
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は坐った。
別のとしよりが娘の前に
横あいから押されてきた。
娘はうつむいた。
しかし
又立って
席を
そのとしよりにゆずった。
としよりは次の駅で礼を言って降りた。
娘は坐った。
二度あることは と言う通り
別のとしよりが娘の前に
押し出された。
可哀想に
娘はうつむいて
そして今度は席を立たなかった。
次の駅も
次の駅も
下唇をキュッと噛んで
身体をこわばらせて-----。
僕は電車を降りた。
固くなってうつむいて
娘はどこまで行ったろう。
やさしい心の持主は
いつでもどこでも
われにもあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで
つらい気持で
美しい夕焼けも見ないで。

*****
この詩をはじめて読んだ時、
涙が出た。
日々のことを難しい言葉を使わずに紡ぎ出す、
吉野弘さんの詩は固くなった心の芯の柔らかい場所にぷすりと刺さる。

この二編は読んで欲しかったので記載したが茨木のり子さんの詩も検索してみてほしい。

あともう1つはコレ。
吉本ばななさんの「デッドエンドの思い出」
この短編集の中の1つ「幽霊の家」というロールケーキ屋の岩倉くんの話が大好きだ。

デッドエンドの思い出 (文春文庫) 

これはもう、
岩倉くんがうちの息子に重なってしまう事も手伝って何度でも読める。
老夫婦がラジオ体操をする場面やいろんなエピソードにひとは死んでも死なないのではないか?…と思える話である。

*****

実は最近、自分は5人に1人と言われるHSPではないか?…と思うようになった。

人一倍、敏感で繊細な気質のことらしいが、
思い当たることがありすぎる。
長男も私の右手と左手を開いたかのように気質が似ているので、我々は若干のその傾向がある。

しかし、気づいてしまった人の寂しさに寄り添い、そして翻弄されながらも歳を重ね人生経験を重ねた時、私は繊細で良かったと感じるようになった。
繊細でなければ美しさを感じる心も半減するのだ。
損すれば徳あり。
人との関わりの中で得た宝は誰も盗むことのできない経験値として自分の中に貯まっている。

お兄、歳を重ねると今の辛さは強さに変わる。
それまで、たんと美しいものを見て、耽美し、心の杖になるものを大切にして、
さまざまな書籍を読んで生きぬけ!明るい明日が待っている。

それが繊細が故、さまざまな目にあいもがきながら私が身を削って48年かけて導き出した答えだよ。


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