(客:あらゆる美味しいものを味わってきたけど、一度でいいから青空を囓ってみたいなぁ……)
(店主:たまに空の機嫌がいい時、世界の欠片が降ってきますよ)
(客:どんな味がするんだろう)
(店主:ひとびとの悲しみや憎しみを消化して昇華した優しい味ですね)
(客:神様からのお釣りみたいだ)
(店主:正に珍味です)
(客:100gあたりおいくらですか？)
(店主:非売品ですよ。神のみぞ知る)
(客:どうすれば澄んだ欠片が降ってきますか？今日は娘の誕生日なんです)
(店主:常連客へのサービスでおすそ分けしているんですがねぇ……)
(客:お願いです。お金で買えないプレゼントで喜ばせたいんです)
(店主:今日は特別ですよ。帰宅してから、ずっと空を見つめて、家族全員でお祈りしてください)
(客:ありがとうございます！)
(店主:まだ降ってくるかどうかわかりませんよ。大切なものは降るべきときに、降るべきところに、降ってくるものなんです)
(客:求めるより与えよ、ですね！)
(店主:神のご加護があらんことを)
(同時に:アーメン！)

＊

(父:ただいま)
(娘:お帰りなさい)
(父:誕生日プレゼントがあるぞー！)
(母:わあ、楽しみね)
(娘:なあに～？)
(父:神様が微笑んで、晴天のディナーが降ってくるように、お祈りしよう)
(娘:ほんとうに降ってくるのかなぁ)
(母:信じる者は救われるのよ)
(娘:逆に信じ過ぎる者こそ救われぬ、じゃないかなあ)
(父:過ぎたるは及ばざるが如しか？)
(娘:サンタクロースだって、結局、パパだったしね)
(父:ゲホゲホッ)
(母:ママは今でもどこかにサンタさんや妖精がいると信じてるわ。だから今夜も、地球の果てまで届くようにお祈りしましょう)
(娘:ママって痛いねwwwww)
(父:パパはそんなママが好きだから、結婚したんだ)
(母:あら、ママも……)
(娘:はいはい、愛の欠片が降ってきましたよ)
(同時に:アーメン！)

photo:Unsplash
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