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映画『POP!』を観た話。

映画を見る理由は実に様々だ。劇場で観た予告編が良かったから。好きな俳優さんが出演するから。チラシが素敵だったから。ストーリーが面白そうだったから。時間が空いていたからなんとなく。読者の方も、それぞれに理由があって映画館に足を運んでいるだろう。

かくいう私の場合、「自分の作品に足りないもの」を求めて見るようなことがある。自分が書いているものにこんな成分が足りない、こんな感情が足りない、というように、自分の作品を読み返して足りないなと思った部分を研究して補うために映画を観ている節がある。


映画『POP!』。
2021年12月17日より全国のミニシアター系で公開中の日本映画。

主人公は、17歳の少女・柏倉リン(演:小野莉奈)。彼女は、とある地方局のチャリティー番組「明日のアース」でオフィシャルサポーターを務めている。しかし、番組の現場では大人との疎外感を感じ、私生活では友達もおらず、とにかく孤独。しかも、真面目な性格だから周囲に同調したり空気を読むこともとことん苦手。そんなモヤモヤを日々蓄積させていくリンの前にある日、街を騒がせている「爆弾魔」が現れて・・・。


とにかく、この作品に出てくる大人たちがいちいち鼻につく。遊びと仕事の境界線があいまいすぎるスタイリスト、自分に割り振られたタスクのことしか考えないAD、マッチングアプリで出会いを求める実に変な挙動の男。ファーストインパクトで「うーわ、なんだこいつ鼻につくわー」と思うけど、冷静に考えてみりゃあ案外こんな人間どこにでも居そう。そんなギリギリのラインを攻めているキャラ設定が、実に巧妙なのだ。

未成年の目線で見れば、大人の世界は実にヘンテコリンなものである。周りの顔色をうかがって生きたり、。でも、実際にストーリーに仕立てるにはその違和感をどう表現するかというのが肝になってくる。この作品では、「真面目な女の子」と「社会に染まった大人」というコントラストを描くことによって、ヘンテコおとなワールドをシニカルに笑い飛ばしているのだ。

正直、話の展開と言い映像の雰囲気といい、シニカル過ぎて頭が付いていかなかった。だが、「自分に足りない要素」が詰まった作品なんだと思えば、付いていけないのも納得だった。このなんともいえない毒気というか、世の中を俯瞰で見て嫌なところを綺麗に切り取る力が、今の自分には足りないのかなー、と思った。


クスっと笑えて、頭から離れない。
この作品を一言で表すならこれがピッタリだろう。

ちなみに、予告編のサムネイルでも観られるが、リンの髪形もとてもヘンテコリンだ。こんもり盛られたピンクの髪。いわく、「ハートマーク」らしいのだが、果たしてあなたはこの作品を観終わった後にリンの頭を見て、ハートに見えるだろうか。それとも・・・?



おしまい。



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