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僕が大嫌いだった京都を、くるりはだいぶマシな思い出にしてくれた。

正直、私は京都が嫌いだ。

大学生になって関西に移り住んで以来
「慢性京都嫌い症候群」が進行している気がする。

神戸はすごくいい。神戸は好きすぎて何度遊びに行っても飽きない。海も山も綺麗。もはや住みたい。あと、奈良もいい。街並みに落ち着きがある。でも京都だけはどうしても、未だに苦手だ。というか、嫌いだ。そりゃ、寺社仏閣建築は素晴らしいし歩いてても楽しいし世界遺産の街だろうけど、僕にはどうしても乗り越えられないというか乗り越えたくもない思い出が京都にはあるのだ。


私は大学1年生から3年生まで、京都の某インカレ系サークルで活動していた時期がある。途中諸事情で中断していた頃があったのだが、毎週大阪の南の端から京都まで往復4時間かけて会議に参加したり活動をしていた。しかし、そのサークルが何ともいえず異質というか、正直私にとっては居るだけで精神を削る場所だった。

少なくとも参加し始めた当初は全くそんなことはなかった。むしろ、同じ目標に向けて頑張る仲間がいっぱいで、自分のことも認めてくれるいい人たちだったのでとても居心地がいいなあと思っていた。でも、だんだん先輩が卒業し自分たちの学年が中心になっていけばいくほど、サークル全体が一人のリーダーに頼るようになってきて、そのリーダーも仕事は出来るのだがノリが私と相反してしまうため、一緒に居るとかなり疲れてしまう人だった。

図らずも私とそのリーダーが割と中心になって回っていくサークルだったため、辞めるに辞められず、結局引退前の最後のイベントまでズルズル引きずってしまった。だいぶ濁して話をしたので要領を得ないところがあったかもしれないが、ご容赦いただきたい。ただ、サークルメンバーと行った飲み会の帰り、メンバーたちからわざとはぐれて一人歩いた四条烏丸の歩道の上で「自分はどうしたって手を伸ばしたって背伸びしたって、キラキラ系なパリピ大学生にはなれないんだ」と己の身の丈を悟ったことは、今でも強烈に覚えている。

だから、いまでも京都に来るとあの頃の辛い記憶とかしんどかった思い出がフラッシュバックしてきて息が詰まりそうになる。だから、サークルを辞めた後私はそこで知り合った人間とほぼすべて絶縁した。とにかくもうあの忌々しい記憶から遠ざかりたくてしょうがなかったのだ。その深層心理が動いたのか、自然と京都自体からも足が遠ざかっていた。


話は変わり、年明け2月。
大阪でくるりの結成25周年記念公演
「くるりの25回転」を鑑賞してきた。

会場に展示されたメインビジュアル

大学生になってから聴くようになったくるり。きっかけはよく覚えていなかったのだが、昔からくるりがCMソングを歌っているチオビタドリンクのCMシリーズが好きで、そのCM集をYouTubeで観たのが始まりだったと思う。コロナ禍の陰鬱な気持ちを優しく包み込むような音に、私も自然と惹かれていったのだろう。そしてようやく、彼らとの初めての対面をフェスティバルホールで果たすことができた。

セットリストはもう、言うことなし。くるりが京都から飛び出したり、戻ったり、メロディを奏で続けた25年の足跡が全て分かる曲目。初めてのくるりライブには最適すぎるほどの豪華な内容だった。くしくも、自分が足を運んだ初めてのライブも、Mr.Childrenの25周年記念ツアー「Thanksgiving25」だった。そこにも少し、不思議な縁を感じたりした。


苦しかった日々の全てから解放されて
まっさらになった自分に響く歌。

錆びた線路際 涙枯れた六地蔵
なんにもない広い野原
戻ることも 嘆くこともない

「虹」

自分のやりたいように飛び出していく
勇気を持て、と教わった曲。

俺は車にウーハーを(飛び出せハイウェイ)
つけて遠くフューチャー鳴らす(久しぶりだぜ)
何かでっかい事してやろう
きっとでっかい事してやろう

「ハイウェイ」

未だ見えぬ人生の行く末に
ぼんやりとした灯りをともしてくれた曲。

失ってしまったものは
いつの間にか地図になって
新しい場所へ誘っていく

「ジュビリー」

私が京都に行くたびにカラフルな耳栓をして鳴らしていた、あのくるりの音楽を初めてめいっぱい体に浴びてきた。こんなにも肌触りが良くて、優しくて、でも確かな情熱を感じる音を浴びたのは初めてだった。

終演後、四つ橋線に乗って帰りながらその日の公演を鑑みていた。ライブ好きな人間として、久しぶりにフェスティバルホールに来れたという喜びも大きかった。しかしそれ以上に、くるりの音が「自分はこの場所でどうすればいいんだろう」という迷いと葛藤を抱え続けてきた京都での日々をすべて肯定して思い出にしてくれた気がして、そのことに感謝したいという気持ちが私の心の中では一番大きかった。


私は、京都が嫌いだ。

でも、「くるりがいてくれる京都」

心の底から大好きだ。



おしまい。



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